391.ユーシス、フェレングへ
「ふふふ、聖女朱里か。かならず見つけ出して俺の特別にしてやる!」
召喚勇者久保清が、【打倒祐樹!略奪朱里!】に向けて復讐の黒き炎を滾らせていた頃、祐樹と朱里は真夜中のマハパワーの都を逃げ回っていた。
「あ、あいつら分で約束を反故にしやがって!」
「もう!全部祐樹のせいだよ!召喚者であることを認めたりするから!レクチャーで正体を明かさないようきつく言われていたのに!」
「す、すまん。でも同じ同郷人、話せば分かり合えると思ったんだよー……」
「あんなアホじゃ話し合いなんて無理だよ!それに鎧フェチのヘソフェチな変態なんて、絶対に無理だから!」
二人は渋々マハパワーの都を脱出した。
「あーあ、祐樹のせいでまた野宿。久々にフカフカの暖かいベッドで寝られると思ったのに」
「そんなに言うなよ……」
祐樹と朱里は、適当な場所で野宿したのち、翌朝早々にジェットハングライダーでマハパワーの山脈へ向かった。
― ヒュゴオオオオオオオオオ……
「ダメだ、やはり吹雪いているみたいだぞ」
「これ以上接近するのは危険だね……」
二人はジェットハングライダーを転進。
そして当分の間、自分達が野宿できるような場所を上空から探すことにした。
すると何やらストーンサークル(巨石による円形人工物)が見えて来た。
そしてその中央には、なんとユーシスの姿が!?
「朱里、あそこを見ろ!ユーシスがいる!」
祐樹は指差したまま朱里の方を向いた!
「え、どこどこ?わからないよ」
「あそこだよ!ほら、あのストーンサークルみたいな場所の中心……あ、あれ?いなくなってる?」
祐樹が再びストーンサークルを見た時には、ユーシスの姿はどこにも無かった。
「ユーシスは一人でいたの?」
「いや女と一緒だったような」
「アリサ?」
「違う、もっと若そうな感じの青髪の子だった……と思う」
「あの病的に一途なユーシスが、アリサ以外の女の子と一緒にいるとは思えないけどなぁ?」
「いや、俺も思わないけど……でもいたような気がしたんだ」
「祐樹、あなた疲れているのよ」
「…………」
二人はストーンサークルの周りを三周してから通過し、再びベース基地となる野営場所を探し始めた。
なお天候が回復し、祐樹と朱里がマハパワー山脈にあるラミアの祠を捜索したのは、今から一週間後の事であった。
*
◆マハパワーの都 祐樹と朱里が罠に嵌められたホテルの客室。
Sideユーシス
「なんだか夕べは騒がしかったな。泥棒でも出たのか?」
「なんでも雷が落ちて建物が半壊したようですよ。それで火事場泥棒でも出たんじゃないですかね。今も警官と自警団がウロウロしています」
「ふーん、物騒な都だな」
俺とミヤビは、ルームサービスで朝食を済ましてすぐホテルを出た。
そしてマハパワーの【ラミアの祠】にまで転移するためのポイントに向かった。
「ユーシスさん、あれです。あのストーンサークルが転移装置ですよ!」
「おおう、なんか凄い巨石建造物だな。てっきりリットールの時みたいにダンジョンだと思っていたよ」
俺とミヤビはストーンサークル内部に侵入。ミヤビが中央にある石のテーブルに手を触れると、テーブルは操作コンソールへと変わった。
「大丈夫、問題なさそうです。それじゃフェレングに行きますよ!」
― キュイイイイイイイイイイン……
俺達の周りに立体魔法陣が形成され転移シークエンスが始まった。
しかし同時に――
― (ゴゴゴゴゴオオオオオオオオ)
どこか遠くで轟音のようなものが鳴っていることに気が付いた。
「まてミヤビ、何か聴き覚えのある音がするぞ?」
音が気になり、俺は魔法陣の外に出て確認しようとしたのだが、ミヤビが慌てて止める。
「ああ、ダメですユーシスさん!今、魔法陣の外に出ようとしたら、また人体切断ですよ!」
「うぉっと、そうだった!」
慌てて出かけていた半身を引っ込めた。
― シュウウウウウウウン……
視界が揺らぎ、俺とミヤビはマハパワー山脈のラミアの祠に転移。そこからさらにフェレングのラミアの祠へと転移したのだった。
その数秒後、祐樹と朱里のジェットハングライダーがストーンサークルの周りをグルグルと旋回した。
この事実を俺が知るのは、もう少し後に二人と合流してからだった。
*
◆フェレングのラミアの祠
― キュルルルルルルルゥ……
「はい、無事にフェレングのラミアの祠に到着しました!」
「ありがとう!ミヤビにはいくら感謝してもしきれないよ!種以外なら何でもお礼するから遠慮なく言ってくれな!」
「……まあ、いいでしょう。それに間もなくお願い事をすることになりますし」
「お願い事?いいとも、何でも言ってくれ!」
「ま、それはおいおい……それよりユーシスさん、今はアリサさんの痕跡を探さないと」
「そうだな!アリサの痕跡を探さないと……むぉ!?」
「どうかされました?」
「あったぞ、アリサの痕跡が!」
地面に付けられた一人分の足跡がそこに!
「この靴型は確かにアリサのものだ!しかもまだ新しい!おそらく昨日今日くらいに付けられたもの!?」
「ユーシスさん、フェレングの都に行ってみましょう!まだアリサさんがいるかも!」
「おお!待っていろアリサ!いますぐ会いにいくからな!」
「よかったですね、きっともうすぐ会えますよ!」
ユーシスはミヤビに案内されて、大喜びでフェレングの都へ向かった。
しかし残念なことに、アリサはつい先日リットールに向かって旅立っていたのであった。
次回よりアリサ回が続きます。




