387.召喚勇者キヨシ登場 side祐樹&朱里
「はっ!?」
祐樹は目を覚ました。
「なんだ、ここはどこだ?」
窓一つない薄暗い密室に、ロウソクによる間接照明。
だが部屋の間取りはかなり広い。
そして上に昇る階段と大きなテーブル、そして女性らしき脚が見える。
「地下室か?」
祐樹は状況が飲み込めず、起き上がろうとした。
が――
「なんだ?体の自由が……縛られているのか!?それに額に張り付けられた札はなんだ!?」
祐樹の身体は、手足を縛られ床に転がされていた。
上体を起こし、周りを改めて見渡すと、
「くっ、朱里は?朱里はどこだ………あっ!」
朱里は大きなテーブルの上で寝かされていた。
しかもエスカ・ビスタが朱里の服を脱がし掛けている!
「て、てめえ!朱里に何しやがる!」
「あら、もう目覚めましたの?それじゃそこで朱里さんが奴隷堕ち……いえ、今回は魅了堕ちする様でも見ていて下さいな」
「な、なんだと!?」
朱里を堕とさせると聞いて祐樹は壁伝いに立ち上がり、ロープを力ずくでブチ斬ろうとした!
「むぐぐぐうっぐぐぐぐ!!!」
しかしロープはビクともしない。
「ほほほ、無駄ですよ。それは勇者をも拘束するヒモト製のサナダロープです。あなた如き劣等人種のヒモト人にどうにかなるような代物ではありませんよ」
「ならこれはどうだ!ライディーン!」
― シーン……
「な、なぜだ!なぜ何も出ない!?」
「ほほほ、額の札は能力を吸収し封じる為の超高額な呪符ですよ。まあヒモト人には必要なさそうですが念のためです。それにしても魔法も使えないヒモト人がライディーンって……祐樹さんは勇者に憧れているのですね」
エスカはケラケラと笑った。
「ち、ちくしょう!朱里、目を覚ませ!朱里ぃ!!!!!!」
― ぴくっ
逆転の光明が一筋!
祐樹の声が届いたのか朱里は微かに反応を見せた!
「朱里!いいぞ、早く起きろ!」
しかしその光明はすぐ失望に変わる。
「えへへ、もう食べられないよぅ……ふにゅう……」
ヨダレまで垂らして実に幸せそうな朱里。
普段ならホッコリしそうな寝顔だが、今そんな寝顔を晒されたら、殺意が沸いてしまう!
「あのバカ、こんな時に呑気にメシ食っている夢なんて見やがって!朱里!!!!」
「うるさいですね、少し静かになさい! スレーブリィウイック!」
―― ビュン!ビシッ!バシッ!
「ぐあっ!」
エスカはスレーブリィウイックを具現化し、容赦なく祐樹に打ち付ける!
「ふん、打たれた者を簡易隷属させる鞭です。さあこれで大人しく……」
「いててて……朱里、目を覚ませ!」
「ええ?」
エスカは祐樹が隷属されなかった事に驚いた。
このスレーブリィウイックは、よほどの胆力が無い限り簡単に人を隷属化させてしまう代物なのだ。
「スレーブリィウイックで奴隷堕ちしないなんて……おまえ、いったい何者なの?」
「そんなことはどうでもいい!テメェさっさと朱里を解放しろ!でないと思いっきり後悔させてやるぜ!」
「生意気な……さて後悔するのはどちらかしらね。それ、サウザンドウイック!」
「うぉっ!?」
― ビシビシビシビシ!ベッチーン!!!!!
無数にも見える枝分かれした鞭撃が、抵抗できない祐樹に対して無慈悲に打ち付ける!
「ぐがあああああああああああ!!!!!!!!」
全身を〈なます切り〉ならぬ〈なます打ち〉される祐樹!
「ふふふ、これで大人しくなったでしょう。さあ女の服を脱がし……」
「朱里――――――!!!!」
「はぁ!?」
mたしてもエスカは仰天した。
サウザンドウイックをモロにくらって隷属しない者など、そんなの女神の使徒くらいなものだ。
「もしかしてただ者ではない?」
エスカは改めて祐樹を訝しげな目で見た。
一方、祐樹は大したダメージは無さそうだ。
「おまえ何ともないの!?」
「なんともない訳ないだろ!スゲー痛かったぞ!テメェ後で絶対に泣かしてやるからな!デコピン百撃してやる!」
ちなみに祐樹の負ったダメージは、全身を輪ゴムでバッチンされたくらい痛かったらしい。流石の祐樹も痛みで目に涙が浮かんでいる。
「こ、こいつ!」
全く屈服しない祐樹に対し、エスカはスレイブマスターとしてのプライドを傷つけられたようだ。
さっきまで浮かべていた糸を引くようなやらしい笑みが無くなり、今では怒りの表情に変わっている。
「おいおい、一体なにを騒いでいるんだ?」
上から声がして、コツコツと誰かが階段を降りて来た。
祐樹とエスカは同時に階段を見向くと、そこには店の従業員と共に東洋顔の男が一人。
「エスカ様、召喚勇者の久保清様をお連れしました」
「まぁ、キヨシ様、わざわざおいで頂きありがとうございます!」
「しょ、召喚勇者だと!?」
祐樹の表情が一瞬で強張った。
「おう、ヒモト人の女が入荷したらしいな。早速見せて……そいつは何だ?」
召喚勇者キヨシは縛られている祐樹と目が合った。
「この女の連合いなんですけどね、どうにも頑丈なヤツで手を焼いているんですよ」
「ふーん?おいおまえ、名はなんという?」
「祐樹だ……あぐっ!」
キヨシは祐樹の顎を掴みマジマジと観察した。
「ふん、見覚えは無いな。やはり召喚者ではないらしい」
「ふふふ、こんな貧相な井出達の召喚者様なんているはずがないですよ」
「ちげえねぇ、おらっ!」
― ドガッ! ダンッ!
キヨシの強烈の蹴りが鳩尾に突き刺さり、祐樹は壁に背中から叩きつけられた!
「ぐばぁ!ぐぅぅ……」
流石の祐樹も、無抵抗状態からの召喚勇者の蹴りは堪えたらしい。少し苦しそうだ。
「さてそれじゃ改めて女の方を……はうっ!?」
― ダクンッ!
どす黒い欲望が沸き、キヨシの心臓が歪な鼓動を打つ!
「な、この女……!?」
「どうかされましたか?」
「わからねぇ……この女を見ると同時に胸が高鳴りやがった。こいつが欲しくて溜まらねぇ!」
朱里の姿を見て、キヨシの召喚勇者の本能が、どうしようもなくムクムクと頭を擡げ上げた!




