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自称転生ヒロイン(←いろいろやらかして、ざまあされ済み)を母に持つ少年の、その後について

『混沌の間』に住まう子供について

作者: 葉室 笑

『転生したら母親がビッチなヒロインで、すでに「ざまあ」されてしまっているが、それはさておき』

『チョロい男に需要はあるのかという問題について』

『買わない宝くじは当たらない件』

の、別視点の話です。

前作を読まないと、このお話だけだと、意味不明だと思います。


一応、主人公の少年を訪ねてくる姫様の侍女視点なのですが。

この侍女が思った以上に何も知らないと言いますか。あまり実がないお話になってしまい、申し訳ないです。


実がないなりに、後の話に全く無関係でもないので投稿します。


私がお仕えする姫様はこの国で、いえ、この世界で最もお美しい方です。姫様のお世話をさせていただけることは、私共にとって生き甲斐であり、誇りです。


朝の支度のために、姫様の御髪おぐしに触れながら、私はいつも、感嘆の溜息をつきそうになります。

梳けずる程に艶を増す細い髪のお美しさは、喩えようもありません。


「もういいわ」との姫様のお言葉に、私は名残惜しく、その場を離れます。私に任せられたのは、髪を解かすまでで、結う役目までは任せていただけません。


姫様が身支度を整えられ、朝食に出られますと、私共はそれぞれの仕事にかかります。

このところ、姫様のお誕生日に向けて、献上品が次々と運び込まれ、その検分や仕分け、目録作りに追われてはいますが、心は晴れがましく、充実しております。


思えば二年前まで。王宮にあの毒婦が巣くっていた時期は、最悪でした。

王太子妃を名乗っていたあの女の目を引かないよう、本来なら七歳のお誕生の日の行うはずの、王族としての御披露目も一年延期することになりました。

全ては、姫様をお守りするため。


あの忌ま忌ましい女が、自分より格上の、遥かに麗しい令嬢方を、卑劣な罠に嵌めて追い払ったことは、あの女に毒された殿方以外には、つとに知られておりました。


あの女が、姫様の美貌を目にしたら、妬心にかられて、何を仕掛けてくるか、わからない。私共は、姫様を極力表に出さないよう、常に身構えておりました。


あのおぞましい女が排除され、姫様が尊き御身として当然の讚美を受けておられる今、私共は皆、胸の晴れる思いでおります。こうして献上される品の数も、あの頃とは比べようもありません。



献上品の整理が一段落しました頃に、姫様が朝食よりお戻りになり、付き従っていた侍女から、予定の変更が伝えられました。

姫様の叔父君が、外遊からお戻りになり、急遽歓迎の席が設けられるというのです。


こうなると、準備のために諸々の予定が組み換えられる事となります。勉学の時間などはずらされ、優先度の低い予定は、順延または中止されます。


おそらく、あの子供に会いに行くなどという些末な、予定ともいえない予定は、少なくとも今日は無くなることでしょう。

些細な事ですが、喜ばしい気分です。


『混沌の間』の子供。あの毒婦が残していった、身分卑しい子供です。


本来ならば、この王宮にいる資格など無いものを。あの厚かましい女があちこちでが恨みを買いすぎていたばかりに、仮にも一度は王族として扱われていた者が害されぬようにと、お情けでここに保護されているのです。


姫様が尊いおみ足を運んでお会いになるような、そんな光栄に浴すべき身では、無いのです。


それなのに、何故。何がきっかけだったのか、同僚達に聞いてもはっきりしません。

もしかしたら、私共が耳にすることも許されない、王族や高位の貴族、あるいは姫様の教育係の方々とのお話の中で、何か好奇心を刺激するようなお話があったのかもしれません。


あの子供のいる部屋は、『混沌の間』と呼ばれております。

昔から、そういう呼び名だったと聞いておりますが、入って見たところ、とてもではありませんが、わざわざ名前が付けられるような部屋ではありません。

あれが三人部屋であれば、下働きの部屋と大差無いのですが、一人部屋になっているところが、よくわかりません。区画も、本来使用人部屋がありところとは、異なっておりますし。何と申しますかーー違和感といいますか。ともかく、姫様がお入りになるのにふさわしい場所とは思えません。


姫様が、初めてあの部屋を訪問されて、あの薄汚い女の子供が座る椅子に腰かけて、あの子供に笑いかけられた時。私は、胃の腑が焼ける思いでした。


ーー姫様。まさか、その子供の名をお尋ねになるおつもりでは?


姫様に、名を問うていただける栄誉は、誰でもにもたらされるものでは、ないのです。姫様と社交の席でご一緒できる高位の貴族の方々か、でなければ、何らかの、姫様のお目に止まる働きができたものにのみ、与えられるべきなのです。


幸い、私が心配していたような事態にはならず。戻った後で同僚に、取り越し苦労だと笑われました。

『あの子供に、名乗る名など、ないでしょうに』と。


言われてみれば、そうでした。あの子供に、名前など無かったのでした


生まれた時に王族だったために、過去の偉大な王の名が付けられ。平民となった時に、『王の名を名乗るなど、不敬である』として取り上げられたのでした 。

身のほど知らずな母親を持ったばかりに、憐れなものよと、皆で笑いあったことを、忘れていました。

王と言っても、幼い頃に、しなくてもいい苦労をされた御方だったことから、普通であれば付けられることのないはずの王の名です。


その後、子供の印象についても聞かれましたが。まあーーどういうこともない顔、としか言いいようがありません。整っている、とは言えるのでしょうが。

誰に似ているのかとも聞かれましたが。あの、愚昧な女の周りに侍っていた殿方など、特に注視していませんでしたし。まあ、どうでもよいことです。


ともあれ。あの、災厄の固まりのような思い上がった女の子供が、姫様に思い上がった真似をしないよう、あの日以来、私共は常に警戒しております。姫様が混沌の間に立ち寄るのが不定期なため、付き添う侍女や護衛が一定でなく。同僚の間で情報を共有しあっています。


ああいう、下賎で狡猾なもの達は、やんごとなき方々に取り入るためには、どんな手段を取ってくるか分かりません。


まだまだ幼くていらっしゃる姫様をお守りすることは、私たちに課せられた、尊いお役目なのですから。





かつて危惧されていた、幼いながら美貌の姫様が、逆ハーヒロインに害されるのでは、という可能性は、実はほぼありませんでした。


乙女ゲーム脳の自称ヒロインは、ゲーム内のライバル令嬢を蹴落とすことには熱心でしたが。いったん攻略済みの相手を誰かに(特に、ゲームに名前も出ていない相手に)奪われるという発想がありませんでした。

ですから、絶世の美女に育つであろう姫様を見ても、脅威に感じるはずもなかったのです。

姫様の周りの人々は、警戒のし損でした。



姫様に仕えている方々は、侍女であれ、護衛騎士であれ、前王太子妃やその子供に関しては、ほとんどの人が同じような考え方です。そういう見方になるよう、誘導している人がいるのか、元々の悪評のせいかは分かりません。


この話の語り手など、中位貴族の中でも若干身分が下かな? という感じなので、逆ハーヒロインのせいで、王宮が混乱している時じゃないと、姫様付きになれたか微妙なのですが。そういうことは、あまり考えていません。


侍女や護衛仲間で情報共有って、誰かその情報を吸い上げている人がいそうな感じもしますが、どうなのでしょうか。

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― 新着の感想 ―
[一言] うん?王族の血を確実に継いでいる主人公さんを身分卑しいって、それ口に出して言ってみろよ。使用人(*´∀`*)
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