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彼と甘い感じ 3

拍手、未公開分。途中まで書いて放置してたのが出てきたので…ここまでくると、もうお前ら早く付き合っちゃえよ!とか思う。

 目に映る遥か彼方まで花畑といった、相も変わらずメルヘンチックの夢の真っ只中。


「もういいか?」

「まだーっ!」


 遠くから聞こえる姿無き相手の声に、私もまた声をあげて答える。


 そう、私は今透明人間さんとかくれんぼ中だったりする。

 花冠作り、神殿散策の次は、透明人間を相手にしたかくれんぼ。

 我ながら、難易度の高い遊びを思いついたものだ。


 以前見た不思議系な夢には、アンデッドに追われる中、友達とマシンガンを乱射するものがあったり、行った事のない水が豊富の都市で水上バイクを乗りこなすものとかあったりしたのを思い出すと、この夢は本当平和でまさしくメルヘンそのものな夢だなと思ったりする。

 

 ただ、やけに長いんだよね。

 夢の中でこれは夢だってわかるという事が初めてなわけだから、感覚もちょっと違うのかも。


 ちなみに、最初は透明人間さんが隠れ、私が鬼だったんだけど、彼は私が思っていた以上に自分が見えないという事を活かしてきたため、散々探しまくった私がキレたのだ。

 やってる事は確かに子供の遊びだ。子供の遊びなんだけれど・・・

 必死に探す私の後を実は着いて来ていたとか、そうかと思って、今度は花を持たせてみれば、神殿中に花を撒き散らし、自分は花畑の中で寝転んでいたとか・・・あの野郎っ!


 って、また思い出して怒ってる場合じゃなかった。

 私は身を隠すのに丁度いい死角を見つけると、そこから空中に浮く花の首飾りを確認する。

 それは透明人間さんが立っているという事を示している。


「もういいよーっ」


 声を上げて、身を低くしながら、花の首飾りが動き出すのを目の端で捉えながら、息を殺す。

 かくれんぼというよりも、缶けりのように、鬼の動向を気にしながら、自分も隠れる場所を変えていく戦法だ。

 探しても探しても見つからないという怒りを思い知るがいい!わははーっ!




 そうして、彼が私を見つけるために動くのを、私もまた彼の動向を気にしながら、隠れ続ける。




 どれくらい時間がたっただろう。



 ここでは、自分の意識はしっかりしていても、時間の感覚がいまいちわからないから、長い時間たったような気もするし、それ程たったわけじゃないかもしれない。

 でもたぶん、私が鬼として探していてキレただけの時間は過ぎたような気がする。


 彼はその間ずっと私を探し続けている。


 柱という柱の影から、石造りの階段を上ると階下を見下ろせる手すりと城壁の隙間、姿を隠れさせられるような全ての場所を何度も何度も確認して、花の首飾りは途中何度か途方にくれたように動きが止まったりしながら、また最初から探し始める。

 私は最初、それをざまあという気持ちで見つめていたのだけれど、なんだか段々申し訳ない気持ちになってきてしまった。

 相手が透明人間さんなだけに、彼の表情が見えないため、彼がどんな顔をして私を探しているのか見えないから、何ともいえないんだけど、最初は彼の動きにあわせてゆっくりと動いていた花の首飾りなんだけど、今は彼が動き続けているせいもあって、花びらがかなり落ちていた。


 でも、今更自分から姿を見せるのも、あれだよね・・・


 透明人間さんがまた神殿の中に入っていくのを横目で確認しながら、私は神殿の外壁にもたれかかった。

 私だったらとっくに諦めてるだろうに、彼はまだ私を探し続けている。

 そこでふと思ってしまった。


 ここで私が目覚めたら、どうなるんだろう?

 彼はずっと私を探し続けるんだろうか。

 いない私をずっと……


 それは途方も無い孤独のようで……、私は慌てて首を振った。


 いやいや、これは夢なんだから!

 私が目覚めると同時に、彼の存在もなくなるってば!


 そうだ、そうに違いないと頷いて、目の前に咲く花を一輪手に取った。

 この花の香りも、指に触れる感触もとてもリアルだけれど、こんな世界は現実にはありえない。

 これは夢でしかないのだ。

 指先で花をくるくる回して、どこか寂しさに似た気持ちを胸の奥に覚えた時だった。


「……そこにいたのか」


 頭上から聞こえた声に咄嗟に顔を向けると、神殿の二階部分にあたるような位置の石造りの窓枠から、花の首飾りが空に浮いてるのが見えた。やばい、見つかった。

 反射的に、立ち上がると私は駆け出していた。


 いやほら、鬼に見つかると逃げるっていう条件反射?


「なっ!?」


 私のまさかの行動に、透明人間さんの焦ったような声が聞こえたけれど、走り出した足は止まらず花畑を突っ切る。

 そんな私の背後で、どさっと何かが落ちるような音がしたので振り返ると、宙に浮いた花の首飾りが猛然とこちらに向かってきているのが視界に映った。。

 透明人間さんとは、何度も遊んで慣れたはずだったのに、猛スピードで宙に浮く花の首飾りが迫ってくるというのは……


 やっぱ、怖いよっ!


 前に向き直り、自分も本気モードで走る。走る。走るっ!


 想像するにたぶん、逃げた私を追って、透明人間さんが二階から飛び降りて、私を追ってきているんだろう。

 相手が透明人間なのは、十二分にわかっていたはずなのに、視覚のもたらす効果とは自分が思っている以上に強いらしい。


「何故、逃げる」

「だって、追いかけてくるから」

「お前が逃げるからだろう」

「それもそうなんだけど、なっ何か声が怒ってる気がするんだけど?」

「……お前が逃げるからだろう」


 二度も言われましたよ。

 二度目は先程よりも、ずっと低音で怒りを隠す気がさらさら無い声音で。

 ああもう、本当にホラーだ。


 いや、確かにかくれんぼは見つかった時点でアウトなんだけど。

 それを逃げて、かくれんぼから強制鬼ごっこににした私が悪いんだけど。

 何ていうか、相手にとって申し訳ないことを考えてる時に現れるものだから、つい後ろめたさが先立ったというか……


 ああああっどうしようっ!

 後ろから迫ってくる無言の迫力が、超怖いっ!


 そう思った次の瞬間、ぐいっと肩にかかる強い力。

 前に進もうとする私の体よりもずっと強い力で、腕ならまだしも、肩を引っ張られた私は勢いよく後ろを振り向く羽目になってしまった。

 これが普通だったら、引っ張った相手の顔がドアップで見えるところなんだけど、目に映るのは広がる景色ばかりで……


 大きく目を見開く私の掴まれた方とは逆の肩口に、温かな空気の層がそっと触れた。

 それが何なのか、見えない私は手なのかなと荒い息を整えながら、考えるしかない。


「……何故、逃げた」

「え? いや~その、な、なんとなく?」


 流石に、今こんなにもリアルに感じる透明人間さんの存在を、全否定してた時に見つかったから気まずくて咄嗟に逃げたなんて真実を告げる勇気は無い。


「……なんとなく?」


 うわあ、何か更に声に怒りを感じます。


「だっだって、ほら、さっきはそっちが私の事からかって遊んだわけだし。自業自得というやつだよ」


 自分が悪いのに、相手に責任転嫁するなんて我ながらずるいやり方だ。

 いつの間に落としたのか花の首飾りをしていないため、彼がどのような姿勢でいるのかもわからない私は、視線を泳がせてそっぽを向いた。

 とたんに触れる空気の層。

 顔を向けた方向は、透明人間さんの手? が乗っている方だった。


 って、顔向けただけで、顔に空気の層がぶつかるくらい彼の手、巨大だったっけ?


 あれ? と疑問符を浮かべながら、その温かな空気の層に顔を押し付けた。

 手で散々触って気持ちいいそれは、顔で触れても何ていうの。

 柔らかくて温かくてこう、うっとりしちゃうような肌触りみたいな……


 目を閉じて感触を堪能してしまっている私の耳に、


「お前、それはずるいだろう……」


 そう聞こえたと思ったら、空気の層が今度は自分から私の顔に覆いかぶさるように触れた。


 あ、これ、透明人間さんの顔だったんだと気付いた時には、全身彼の温もりに包まれた後だった。






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