秋葉原最終処分場、普通の一日 ~第二話:エレナの料理~
ある晩、エレナが「今日は私が夕食を作ります」と言い出した。
リョウが一瞬手を止めた。
「エレナが?」
「問題がありますか」
「……いや、ない。ただ意外だったので」
「エルフだって料理もします」
エレナは静かに言った。
「ただし、エルフの料理は少し人間とは違います」
「どう違う?」
「食べてみてください」
一時間後。
食卓に、見慣れない料理が並んだ。
色は緑と白が中心。香りは森の中の空気に似ている。食材は主に薬草系のものだ。
「これは……」
カケルが慎重に一口食べた。
不思議な味がした。
苦くもなく甘くもなく、あえて言えば「静かな味」がした。食べているというより、体に何かが染み込んでいく感覚がある。
「おいしい……?」
ミーナが首を傾けた。
「おいしくないわけではないが……なんというか」
カケルは言葉を探した。
「お腹が満足するというより、体が整う感じがする」
「その通りです」
エレナは静かに言った。
「エルフの料理は、味より効能を重視します。今日のものは疲労回復と魔力補充を意識して作りました。最近みなさんが働き詰めだったので」
「気遣いがあったのか」
「ありました」
「ありがとう、エレナ」
しばらく全員が食べた。
ミーナが「なんか体がほかほかする!!」と言い、リョウが「確かに、疲れが少し楽になった気がする」と言い、カケルが「これは定期的に食べたい」と言った。
「作り方を教えてもらえるか?」
カケルがエレナに聞いた。
「作り方自体は難しくありません。ただ、食材を揃えるのが難しい。薬草のほとんどはエルフの森の固有種です」
「エルフの森に行けば手に入る?」
「そうですね」
「次に行くときに仕入れてこれるかな?」
「大丈夫でしょう。了解しました」
「ミーナ、体にいいもの食べたい?」
「食べたい!!体にいいのに美味しいのが好き!!」
「エルフ料理は美味しいか?」
「おいしい!!ちょっと不思議な味だけど!!」
「不思議な味、というのは」
エレナが少し首を傾けた。
「詳しく教えてください。改善点があれば直します」
「えっと……味がちょっと「静か」すぎるかも! 猫族はもう少し香りが強い方が好き! 魚の香りとか!」
「魚の香りですか」
「猫族だから!!」
「……次は少し試してみます」
「やった!!」
リョウが「エレナが猫族の口に合わせる料理を開発する日が来るとは」と呟いた。
「エルフは適応します」
エレナは静かに言った。
「それが強いんだな」
カケルが言った。
「経験から来る柔軟性です」
夕食の後片付けを四人でやりながら、カケルはエレナに小声で言った。
「本当においしかった。ありがとう」
「……作った甲斐がありました」
エレナはわずかに顔を赤くした。
「エレナが照れた」
「照れていません」
「照れてる」
「照れていませんっ」
「わかっよ。ごめん」
カケルは笑った。
「でも、また作ってくれると嬉しい」
「……考えます」
エレナは言った。
「おそらく、また作ります」
「期待してる」
そして体調が良くなった気がした。そんな1日が終わる。
了




