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八拾肆話 鎧門

 桜も盟約も、俺の考えていた策も散った。

 残っているのは葉桜、絶望、練り直しだ。

 今は各地の軍を動かし、全力で止めてはいるが、何時かは数の暴力で叩き潰されるだろう。

 侵攻が始まって一月が経った今でも、その状況に変わりはない。

 連日入る敗戦の報告、討ち死にの報告にはもう、心が動かない。

 俺が出陣しようにも、各地が満遍なく攻撃され、何所を止めるべきか分からないのが現状だ。

「北部に敵の増援二十万が到着! 東都王の姿があると!」

 東都王。

 因縁の相手で、俺の前に立ちはだかる最大の障壁。

 いつも、俺を返り討ちにし、前回はあと一歩まで追い詰めたが、副官の利き腕を使い、その場を離れた。

 生にしがみつき、殺そうとするたびに、のらりくらりとかわす男。

 その男との、戦いを制するのが、俺の責務だ。


「出陣する! 王都軍を率い、目指すは、東都王の頸! ただ一つ!」

 王都の城壁上で叫び、軍に活を入れた。

 歓声を上げ、続々と北部に向けて出陣していく勇者たちに続いた。

「久々の合戦だ。気を抜くなよ」

「分かっている」

「承知しております」

 今回の軍容は王都軍十万と、バルバトス軍と葬獄、獄龍を含めた七万の合計十七万。

 マルムを副将として連れて来たんだ。

 負ける訳にはいかない。

 いや、今回、東都王の頸を取らない訳にはいかない。

 決戦の地は南都陥落が陥落したため、毎度の崩魂平原となる。

 これまで散った人々の魂は崩れ、俺自身の心も崩れかけた崩魂平原も、その汚名を返上させて見せる。

「東都王の称号も、この戦いにて消し去る」

「その代わりにリシュアンが『東都王殺し』の異名を得るとでも?」

「その通りだ」

 ついでに、『東都王に負けた男』という不名誉な称号も返上させていただく。

「セリウスから三万を合流させる手筈、整いました」

「分かった。鎧門方面から山脈を越える。山脈北から、その方向に動かせ」

 セリウス軍を率いるのは、セリウス城主代行のファナス・マーリン。

 俺の配下の軍務担当に当たる人物で、葬獄に置き換えるなら、ガルドと同等の地位に当たる。

「ファナス様に軍を率いさせるなど……無茶では?」

「いや、奴には俺の軍略を度々叩き込んでいる。実戦経験は無く、これが初陣と言えど、十分に戦える。考えれば、マルムの初陣の時も三万の将だったな。だが、俺から直接何度も軍略を学んでいる奴の方が好条件と言えよう。だから安心しろ。ジャンヌ」

 宥め、俺は山脈手前の鎧門へ向かう道へ入った。


「西部戦線より報告! 葉桜軍、越境! ガゼフ将軍が迎撃に!」

「十万の葉桜軍が後方より北上! 我々の後方に!」

 なるほどな。

 しっかりと連携が取れている。

 鎧門を北から包囲する氷晶軍、南から攻撃を仕掛ける葉桜軍、東の山脈、西の丘陵地帯と三国国境。

 これに東西南北全てを挟まれては、俺達に逃げ場はない。

 だが、鎧門へ通づる霊峰道を既に半分も来ており、今更引き返すことにしても、いずれは葉桜軍と相まみえる形となるだろう。

 それに、鎧門を失えば北への抑えが崩れ、山脈も手薄な光龍本土側からの攻撃により、失地することにつながる。

「鎧門で氷晶・葉桜の両軍を抑え、撤退に持ち込む。数日から十日前後、俺の指揮が各地に届かない可能性もある。各方面の将は各部指令の指示で動く様に通達を」


「門長、増援十七万を連れて来ました」

「おお、それつぁ心(づえ)ぇ」

「話したい事は幾つか在りますが、今はまず、北から迫る三十万をどう対処するかに注目するべきです」

「分かってらぁ。今、ここにゃ、三万ちょいの軍がおりやんせ」

「そうか。丁度ダブルスコアという所か……。十分、賭けとしては成立する数だ」

 門長、ポルタ・カピトール。

 俺が任命した鎧門の門長。

 守備の達人で、守城戦、守門戦では無類の強さを発揮する。

 俺の比ではないほどの守備の達人でありながら、その才能は対数年ほど前、王都に埋もれており、俺が無理矢理掘り出そうとした時にどれだけ苦労したことか……。

 癖が強い部分はあるが、その才能はマルムに匹敵するほどだ。

 鎧門は高さ六十メートルの巨大な壁に二十メートルほどの望楼をつけ足した物。

 横幅は二十キロに及び、壁の分厚さは十メートルにもなる。

 そのため、大陸で屈指の防御力を誇る門としてその名を轟かせている。

 他に有名な門は葉桜の都に通じる羅生門、翆玲の水城門である翆緑門、炎獄の王都圏に鍵をする玉帝門、炎獄の対翆玲の要としてある赤石門などが挙げられる。

 それらの強固かつ、有名な門に肩を並べる鎧門を甘く見られては困るぞ。

 連合……いや、合従軍よ。

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