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俺の言葉で、時折お前が切ない表情をすることに、気付かずにいられるはずがなかった。
気付いているに決まっているから、気付かないふりをすることが必要なのだろうと思わされる。
お前の知っている、本物の俺ならどのような言葉を選んだのだろう。どのような行動を取ったのだろう。
自分のことであったものが、自分でないというのは思ったよりも苦しいことで、過ごすうちに苦しくなって来る。
献身的で優しく甘やかしてくれることが、苦しみを自分への憎さへと変える。
何もわからなくなっても、好きだって言えるくらい好きな人なんだ。
男であるとわかっている上であるのに、好きだと言えるくらい、好きだと叫びたくなるくらい好きな人なんだ。
今の俺も以前の俺も、これだけは共通事項だと思う。
それだけ好きな人なのだから、切ない表情なんて見たいはずがない。
お前の悩みの種が俺なのだと思うと、死にたくなるほど嫌だった。
「このままだと狂ってしまう」
逃げ出してしまうのが、お互いのためだとも思うのに、俺は欲深いものだ。
一緒にいたいって欲望に、一緒にいてくれる優しさに、甘えてしまっているのだ……。
当たり前のものを失うことの辛さを、何よりも大切なものが遠ざかってしまうことの辛さを、表現できる言葉なんてあるだろうか。
私の悲しみは、だれにもわかってもらえない。
わかってもらいたいとか、慰めてもらいたいとか、そういうわけではないはずなのに、耐えられないくらい胸が痛くなるの。
君は間違えなく私のところに帰って来てくれた。
それなら、それでいいじゃないか。満足だ。これ以上、何があるというのだろう。
怪我一つない君の無事な姿に安心して、喜んだ気持ちは嘘ではないはずだ。
そう、それこそが私の気持ちなのだ。
他に私の心はない。
ただ、君の無事を願い、君の幸せを願う。
君が私を愛してくれるかなんて、そんなことは二の次だ。
それだけ好きな人なのだから、純粋にそう思えるはずだろう。
私のために君が頭を悩ませていると思うと、死にたくなるくらい嫌だった。
「このままだと狂ってしまう」
逃げ出してしまうのも、また一つの選択肢だと思うのに、私は欲深いものだね。
一緒にいたいって欲望に、一緒にいてくれる優しさに、甘えてしまっているのだ……。
片想いなのは、過去も現在も未来も、いつだって変わらないことだ。
あなたの視界の片隅にすら、僕が映っていないことくらいはずっとわかっていたことなのだ。
けれど今回のことは、それにしたってひどい。
へたれの僕が、臆病者の僕が、勇気を出して愛を伝えたのだ。
結局、何も伝わりはしなかった愛を、言葉にして伝えたのだ。
それなのにやはりあなたは僕を見てなどくれなかった。
あなたからの一途な愛を受けられるあいつは、羨ましくて仕方がない。
どのような不幸を抱えていたとしても、隣にあなたがいてくれるのなら、あなたの愛がこちらを向いてくれるというのなら、僕はいくらだって耐えられるだろう。
もしもあなたの支えがあったなら、なんだってできるだろう。
どれだけ傷付けられたとしても、その先にあなたの励ましがあるとしたら、何も苦しくはない。
それを否定することにより、当のあなたによって僕の傷は抉られたものだから、よりえげつなく思えただけのことだ。
あなたが好きだ。あなたのことを愛してる。
ストレートな言葉で伝わらないのなら、どう伝えたら届くというのだろう。
好きなのに、こんなに好きなのに!
今ならばあいつよりも僕の方があなたのことを愛している。絶対にそうだ。
荒ぶる気持ちを抑え込んで、僕はあなたが幸せになる道をサポートする。
あなたが望む道は僕が避けたい道だけれど、僕よりもあなたを優先しなければならないし、そうあるべきだと思うから僕はあなたのために捧ぐ。
いくら辛くたって、身を削って笑い掛けた。
それだけ好きな人なのだから、愛し合いたい気持ちだって隠しきれるはずがないだろう。
僕のためにあなたが少しでも悩んでくれたなら、この僕の悶々とする想いを汲んでくれたなら、僕のこういう自分勝手なところが、死にたくなるほどに嫌だった。
「このままだと狂ってしまう」
逃げ出してしまえば、楽になれるとわかっているのに、僕は欲深いものだ。
一緒にいたいって欲望に、一緒にいられる喜びに、甘えてしまっているのだ……。
遠い。あまりに遠い愛を、知っているはずであるというのに。
遠い。今更になって気が付くというのか。
それぞれの愛は、こうも遠くへと消えてしまっている。




