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エピローグ 幸せな日々

ニールとセリスの未来の話になります。

これは作者の思い描く幸せの形であり人によっては違う未来を思い描いていた方もいらっしゃるでしょうし、蛇足の可能性もあります。


それでもよろしい方のみお進みください。


7月18日誤字修正







 

「おとうさーん、アリス姉さんがいじめるー」


 俺が執務室で仕事をしていると息子のトールが入ってきた。


「トール、お父さんは今仕事中だからな。部屋にはいるときにはノックをしなさい」


「はい。ごめんなさい…」


 公私の区別はつけなければいけないからな。とりあえずトールを注意した後、何があったのかを聞いてみる。


「うん、それでどうしたんだい?」


「アリス姉さんが僕をいじめるんです」


 アリスがトールを?姉弟仲は悪くなかったはずだが…トールに詳しく話を聞こうと思ったところで扉がノックされた。


「どうぞ」


「失礼します。こちらにトールが来てはいません…あぁ!トール、お父様は仕事中なのですから、不必要に来てはいけませんといつも言っているでしょう?」


 入ってきたのは今話題になっていたトールの姉、アリスだった。


「おぉアリスか、私からも注意はしたからあまり言わないでやってくれ」


「わかりましたわ。ほらトール、行きますよ」


 トールは俺の後ろに隠れて動く様子がないし、アリスはトールに部屋から出るように促している。


「トールがアリスにいじめられると言っているんだが本当かい?」


 こういうときはしっかり当事者に話を聞いておかないとな。俺がアリスにそういうとアリスは溜息をついた後、状況を話し始めた。


「いじめるだなんて・・・トールもそろそろ社交界デビューですのに、全く覚えようとしないと先生から聞きましたから注意してるだけです」


 姉のアリスが15歳、弟のトールが13歳でアリスはもう婚約者も居るしデビュタントも済ませている。逆にトールは領地経営に関しては積極的に取り組んでいるが、社交界にはあまり興味が無い様で、婚約の話も何度か上がってはいるが、当人の反応の薄さから決まっていない。とはいえ俺もセリスのことを諦めきれずに婚約していなかったからあまりトールに強く言うこともできないのだが。

 ちなみにセリスの件があったので、二人は貴族学院には通わせていない。一部他の貴族から反発もあったが無理やり黙らせた。


「そういうことか・・・トール、アリスの言っている事に間違いはないか?」


「・・・はい」


「お前のためを思って言ってくれているのだからこれはいじめではないよ。少し言い方に気をつけなさい」


「アリス姉さん、ごめんなさい」


「私は気にしていないから大丈夫よ」


 二人を仲直りさせてから退出を促すと、アリスがハッと思い出したように俺にセリスからの用件を告げてきた。


「そういえばお母様が街の視察に行きませんかと言っていましたよ」


「そうか・・・もう少しで書類も片付け終わるからそうしたら皆で行こうか」


 セリスの言う街の視察とは大体出かけませんか?という誘いだ。俺が放っておくとずっと屋敷の中に閉じこもってしまうから、視察という名目で連れ出すようになったのだ。


 実際何がしか問題があれば連絡が来るのだから、視察なんてしなくても問題はないのだ。しかし大事なセリスからのお誘いだ。準備の時間もあるし早めに切り上げないとな。






「あ!領主様!ご視察ですか!」


「いつも仲のよろしいことで」


 街中の視察は住民達に声を掛けられながら滞りなく進んでいく。アリスやトールがたまに商品に興味を示すのをセリスと二人見守りながら歩いていく。町までは馬車で来ているが街中は基本的に歩きだ。馬車の中では人々の様子も見れないし、触れ合うことでわかることだってある。ただ危険がないわけではないから護衛だってきちんと付いてはきているけどな。ただ街の視察は、普段書類仕事で篭っている俺にはいい気分転換になるからなるべく目に付かないようにとは伝えてある。


「父さん!これこないだ話してた遊び道具!」


 トールがはしゃぎながら持ってきたのはオセロだ。生活に余裕のない層でも遊べるように、なおかつ作りも遊び方も簡単なものだから流通させるのは難しくなかった。ウチの紋章を盤の角に付けさせていて偽者の区別がつくようにもしてある。

 そのオセロが売られているのを見てトールは嬉しくなったらしい。俺からすれば前世の記憶から持ってきただけなのだがトールから見れば俺が考えてそれが認められていると感じられるらしい。アリスもトールほどはしゃいでいるわけではないがいつもよりも楽しそうにしている。


 俺が前世の知識を生かせたものなんてこういう簡単な遊び道具と、後は衛生面の整備くらいだろうか。糞便の処理場を決めたことで病気の頻度が減ったと感謝されたことがある。


「ニールの考えることや、することはいつも私の想像の上を行くわね・・・」


 今まで微笑みながらも喋ることのなかったセリスが俺に話しかけてきた。


「俺はそのときそのときのできることをしてるだけだよ」


「あのままフレアス様に付いて行っていたら、ここの領民のこんな楽しそうな顔を見ることもできなかったのでしょう・・・そう最近はよく思います」


 最近は話題に上がることもなかったフレアス。その名前を出されて俺はすこし不安になった。


「俺はセリスのことを幸せに出来ているかな?」


 俺がそういうとセリスは俺の頬をつねって言った。


「幸せですよ・・・最近は子供達のほうが構ってもらっているようで少し嫉妬してしまっていますけど」


 自分の子供に嫉妬して・・・母親失格ですね・・・そう俯くセリスの顔を無理やり上げさせて口付けをする。


 俺の突然のキスに目を瞬かせるセリス。


「セリスしか見ないって言ったのにな・・・さびしがらせるような事はしないさ」


「ニール・・・」


 セリスと見つめあっていると・・・


「相変わらず領主様ご夫婦はお熱いですね・・・」


「ねぇトール、次私達に弟か妹が出来るならどっちがいいかしら?」


「俺は妹だな。姉さんとは違って兄にも優しい子にに育ってもらい・・・姉さん!痛い!やめて!」


 子供達や周囲の人の声で我にかえった。街中でやることじゃなかった・・・!セリスも顔が赤くなっている。



 俺の人生は好きな人と両思いになり、子供達にも恵まれ、領民達にも慕われている。俺はこの幸せな日々をこれからも守っていこう・・・そう思った。




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