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13-共犯者

13- 共犯者


「まっず・・・。」


「あ、やっぱり?」


 来て早々、カレーの一言で席にドッカと座った総一郎に吉野 茉莉は嫌な顔一つせず、緩む顔を本人曰く、抑えて異世界産カレーを出してきた。


 茉莉は総一郎にとっては単なる同郷の、腕のいい好人物というだけだが、


 茉莉にとって総一郎は上客である。


 こっちでは高級料理と化した和食を、城下に放された勇者たちは時折しか食べに来られない。


 それに伴って、茉莉も結構な切り詰め生活を強いられていたが、総一郎はどこから持ってくるのか、金を持っているらしく、糸目をつけずに思う存分に食べてくれる。


 しかも本人も気付いていないが、傍から見ると嬉しそうに旨そうに食べ、ちゃんと旨かったと感謝の言葉もくれる。料理人冥利に尽きるのだ。


 そんな総一郎のリクエストだから、カレーという和食だか洋食だか判らないものを渋々ながらも受け、連日市場で各種スパイスを買い込み、スパイスの調合にここ数日を費やしてきた。


 そんな汗と努力の結晶のカレーは、スキル適用外だったので洋食と判断された。


 まぁ、予想通りではある。


「やっぱり、て…。今夜はカレーと決めていた俺の胃袋、どうしてくれるんだよ?」


「ごめんねー、カレーってメーカーのカレールーでしか作った事なかったし、私のスキル適用外だからちょっと誤魔化せなかったの。」


 そう言って両手を合わせて謝る茉莉の姿は、総一郎の怒気を霧散させる威力を持ち、総一郎はやり場のない怒りを溜息で全て出すしかなかった。


「はぁ…、しょうがないな。んじゃ、おでんくれ。今日はそれで我慢してやる。」


「はいはーい、おでんフルコース大根抜き一丁!」


「盛り過ぎだろ!」


 総一郎がこんなに気安く会話できるのも、茉莉が『和食』という、糧にする価値すら見いだせないスキルしか持っていないからでもある。


「あ、言い忘れてたが俺の事、他のクラスメイトに話したか?」


 そう気安い口調で話し掛けるが、しっかりと片手は腰のナイフに手を掛ける。


 もしも話していたら、どこの誰に話したかを聞いてから消さなければならない。


「いーえ!逃げ出した人の居場所を吹聴するほど、無神経じゃありません!」


「安心したよ。脅さなくて済んだ。」


 冗談ではない科白を冗談めかして言う総一郎に、茉莉はニンマリと笑うと


「ささ、食いねぇ食いねぇ!」


 と胸中はいざ知らず、おでんを勝手に器へ盛っていくのだった。


「あ、お代はいただくよ?」


「勝手に盛ってからいうなよ!」




「で、本題に入るが、『テイム』に属するスキルを持ったクラスメイトはいたか?」


「『テイム』かぁ、似たようなスキル持ったのならいたなぁ。なんでそんな事聞くの?」


「欲しい動物がいるんだよ。テイマーじゃ荷が重そうなのが。」


「んじゃ、頼んでおくよ。向こうも暇じゃないだろうし。」


「いや、直接頼みたいんだ。できれば今後一緒に組みたいとも思っているし。」


「へぇ!トイレから逃げた藤堂君がパーティーを!」


「…それは言うなよ。」


 やはり逃げ道の選択を間違ったか。今後クラスメイトと面を合わせる度に心の内で、(トイレから逃げた)藤堂 総一郎と呼ばれるのか。


「んー、そいつ王城にいるよ。そいつのスキルは『血の支配』ってスキルで、血を飲ませた相手を自分の眷属にして命令できる。ってスキルだったかな。しかも人にも有効!」


「確かにそれは、野に放つには危険すぎるスキルだな。」


「うん、そいつ関野っていうんだけど、本人は良い奴なんだけどね。王様やその周りのおっさんたちが怖がっちゃってさ。ほぼ監禁状態なんだよね。」


「ほぉ、城のどのあたりに監禁されている?」


 今までの雑談混じりの質問から一歩踏み込む。


「突っ込んできたねー。忍び込むつもりかな?その場合、私も共犯になるのかなー?」


 吉野の口調は相変わらず、砕けた親しみの有るものだが、目はすでに笑っていない。総一郎も勇者とはいえ一度逃げ出した身、忍び込んで、しかも監禁状態にある他の勇者と接触し、先ほどの口ぶりだと逃がすつもりらしい。


 そのための情報を漏らしたのが自分だと、すでに役立たずとして城下に放逐された身の上の勇者だ。容赦なく極刑が下ってもおかしくない。


「なるかもなー。」


 そんな吉野の考えは総一郎にはお見通しである。


 総一郎は吉野を自陣に組み込むつもりでいる。


 こんな糧にもならない捨てられた勇者だが、スキルに裏打ちされた料理の腕はこの世界に打ち棄てるには勿体ないものがある。


 また本人の人柄も良い。


 逃げ出した総一郎を責めもせず、怪しみもせず、客でいる限り根掘り葉掘り聞きもしない。


 メガネで眉を整えもせず、長い黒髪を無造作に後ろで束ねただけという、少々根暗に見える外見に違い、そのカラッとした性格に総一郎は好感を抱いていた。


 そのために、まずは王城への不法侵入及び関野の殺害への共犯に堕とす。


 その後もドンドン共犯へ仕立て上げ、俺から逃げられなくしてやろう。


 そんな邪な思考を持つ総一郎の適当な返答に、


「いいね、乗らせてもらうよ。その話。」


 吉野は意外にも快諾するのであった。


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