初日 自分だけ豚顔になった①
夢について、
まずは自分だけが豚顔になる状況のシーンで試してみる。
どうせ夢だから、他の人で試してもいいんだけど、
まずは自分が豚顔になったストーリーを体感してみたかった。
眠る前に、神様に質問する。
シンジ「ちなみに、俺が豚顔になったとして家族や知人の認識はどうなるんですか?」
神様「どうせ夢なのに、そこを心配するのか。
うんとね、家族や知人などとりあえず他者の認識や記憶は、
豚顔になった人が、最初から豚顔だったという認識になるよ。
今回でいえば、君が豚顔になるわけだけど、
君が最初から豚顔だったという設定になるわけ。」
シンジ「ちなみに、うちの両親って、そんなに豚に似てないんですけど、
それは大丈夫ですか?」
神様「おいおい、夢のことなのにそこまで心配してるのかよ。
一応、豚顔になる人の家族などを同様に豚顔に変えるっていう、
ストーリー設定もできるけど、
ますは自分だけでいいと思う。
両親は普通の顔だけど、隔世遺伝とかその他もろもろで、
豚顔の息子が産まれましたっていうのも、現実でありえなくはないだろうし。
そこは別にいいと思う。」
シンジ「そうですね、ありがとうございます。
では寝ます。」
起きると、といっても夢の中で起きたわけだが、
俺はベッドの上にいた。
そしてストーリー通り、
洗面所で顔を洗っている時に、
顔に変化を感じ、
鏡を見ながら、
俺の顔が豚の顔になっていくのを確認した。
豚の顔とはいえ、
あくまで豚顔の人間として通用するレベルの顔である。
とはいえ鏡にうつった俺の顔は、
鼻が上向いて鼻の穴が丸見えになっているし、
目もいきなり細くなっているし、
顔の肉付きもそれなりにあって、
見るからに豚顔だった。
養豚場にいる豚と遜色ないレベル、
人間じゃなくて、いっそのこと豚で産まれてきてたら幸せだったんじゃないかと、
自分でも思ってしまうほどの豚顔の大学生になっていた。
シンジ「自分で望んだこととはいえ・・・・醜い(^-^;
人生ずっとこの顔だったら、キツイだろうなぁ。
でも今は夢の中だし、気楽に行こう。」
そんなこんなで長い間、洗面所にこもっていると、
レイカ「おい、遅いぞ、この豚兄貴。」
と妹のレイカの声が聞こえる。
あれ? 俺の妹は、俺に、
豚なんて言わないはずだったけどな。
レイカ「もう遅いんだから!!
豚なんだから、いくら髪を整えたって無駄でしょ。
あぁ、もう時間ないんだから、早く、そこ、どいて。」
と、俺は追い出される。
どういうことなんだろう?
昨日まであんなに優しかった妹が?と疑問に思い始めていたら、
神様の声が聞こえてくる。
神様「君が詳細なストーリー設定をしてなかったから、
君が豚顔の時の家族の反応とかは、
こちらで勝手にストーリー化してるよ。
それこそ、通常世界で起こりそうな反応を想定してね。
悪いが1回の夢のストーリー設定はリセットできないから、
次からはそういう風なところまでストーリー設定してておいてくれ。」
なるほど、そうなんですかと頷き、
僕は朝食の時間を待つ。
妹からあんな事言われるのはショックだけど、
あくまで一晩の夢の中で完結する話だから、気にせず行こう。
そして、朝食時、また俺は、ショックを受ける。
俺は元々、それなりの顔だった。
もちろん両親も妹も。
そんな状況から、
一人だけ醜い豚顔になっていると、
何か辛くて辛くてね。
神様は隔世遺伝とか、突然変異で産まれた豚顔ってことなら、
そうおかしくもないだろと言っていた気がするが、
さすがにこの状況は耐えられない・・・・。
母「どうしたのシンジ。箸がすすんでないわよ。」
レイカ「いつもは豚みたいにブヒブヒ食べるのに、何してんのよ。」
母「こら、レイカ、そんな事言うのやめなさい。」
レイカ「だって本当じゃない。兄貴のブサイクさは異常だよ。
お父さんとお母さんの子供には思えないもん。
こんなブサイクな兄貴がいるなんて、
友達に紹介できないわ。」
母「何てこと言うのよ、レイカ!!!!」
俺はいたたまれなくなり、その場から逃走して、
今では最寄り駅に向かっている。
ヤバイ、夢だって分かってるけど、
この状況はキツイ。
うん、自分の好きな豚顔になれたわけだけど、全く嬉しくない状況になっている。
通行人の笑顔、特に女子高生の笑顔とか見てると、
「あは、凄いブサイクがいるよ。見てみて。
凄いブサイク。まじ、豚じゃん。キモ~イ。」って笑われているような気がしていた。
豚顔になって、まだ1時間しか経っていないというのに、
これは、精神的に、かなりクル。
当然、電車では、座席を確保したら、
大学の最寄り駅まで誰とも目を合わせないように、顔をバッグにつけていた。
そんな時に神様の声が聞こえてくる。
神様「つらいなら、今日の夢はここで終わりにする?」
俺は、終わりにしたい気分だったが、
しかし、こんな体験なかなかできるもんでもないし、
終わりにするのは、ためらった。
そんな俺の心を見透かしている神様は、こう言った。
神様「セーブする?」
シンジ「え? セーブ?」
神様「一度リセットすると同じストーリーの夢は体感できないけど、
セーブすれば、また後日同じストーリーの続きからできるよ。」
俺はその言葉に従い、セーブすることとした。
気づくと、ベッドの上で目が覚め、
すぐさま俺は鏡で自分の顔を確認する。
シンジ「よしよし、当たり前だけど、元の俺の顔だ。
良かったー。」
あれはあれで面白いストーリーだけど、
すぐプレイする気にはならないわ。
そしていつものように、大学へ行く準備をして、
妹と楽しい朝の会話をしながら、
俺は大学へ向かった。
このように、いろいろなストーリーを続けさせていく予定。