プロローグ はじまりの魔女
世界は滅びに瀕していた。
奇跡の力を持つ女がいた。
女は、世界を滅びから救うため、その身を世界に捧げた。
女は奇跡の力を用い、自らを世界と同化させた。
世界と一つになることで、より大きな奇跡の力が行使できるはずだった。
人々は世界となった女を救済の女神と崇め称えた。
しかし、救済は思うように進まなかった。
――――遅すぎたのだ。
人々は、滅びゆく定めを受け入れることが出来なかった。
人々は、すべての咎を女に擦り付けた。
あの女は、女神ではなく、本当は魔女だったのだと貶めた。
そもそもの原因は魔女にあり、すべては魔女の策略だったのだと決めつけた。
救済の女神を騙る、滅びを呼ぶ魔女に騙されたのだと信じた。
称賛の声は罵倒にすり替わった。
滅びへの恐怖と魔女への怨嗟が世界に渦巻いた。
世界と一つになっても、女には、まだ人としての心が残っていた。
世界と一つになったからこそ、渦巻く怨嗟が常につぶさに聞こえてきた。
閉ざすことのできない声と想いに女は傷つき苦しめられた。
辛うじて世界を支えていた奇跡の力は、急速に失われていった。
人々は愚かにも、滅びを恐れるあまり、自ら滅びを加速させたのだ。
生き物はすべて死に絶えた。
最後に、女だけが残った。
世界と同化した女の意識だけが、辛うじて残された。
それも、もうじき終わる運命だった。
――――世界と共に。
女は最後に夢を見た。
泡沫の夢は、夢幻の世界を生み出した。
刹那にして、永遠の無限を思わせる世界を――――。
数多に――――。




