第122話 デブリーフィング
「貴様らは、」コックピットから吐き出されるや否や、アーサーとジッツォの二人は並ばされた。「基本操作と攻撃操作はできると言ったな。アレは嘘だったのか」
「嘘ではありません!」それに、アーサーは答えた。「ですが、このような状況での訓練は、想定していません」
「そうです、デブリが多くて、戦いどころじゃあありませんでしたよ」
「戦場でもそう言うつもりか貴様らは。あのぐらいのデブリ地帯は、戦場になることがある! それを目の前にして自分は戦えませんなどと言えるのか?」
ジッツォがムッとした様子で答えた。
「ですが、これは演習です。訓練です」
「そうだその通りだ。だから実戦に即してやった。何か問題があるのか?」
「これでは、何も学べないでしょう」
「いいや、学ぶべきことは沢山ある。貴様らは我々が上手だから負けたと思っているが、実際には貴様らが下手だから負けたのだ。この違いが分かるか」
「分かりません」
「下手なパイロットほどミスをして、敵のミスを見逃す、ということだ。例えばデブリ同士の衝突に巻き込まれたことだ。ドワイト少尉は逃れることができたが、ペストーレ少尉は退避が遅れたな? その結果、通信で位置を露呈し、直後のミサイル攻撃で分散せざるを得なくなり、お互いの位置を見失った。またカウンターメジャーも使っていなかった。そのせいで優勢な敵と一対一に誘い込まれた――敵もまた分散していたというのに、それにつけ込むことができなかった。違うか?」
「…………」
「…………」
「僕が貴様らの立場なら、間違いなくカウンターメジャーを使っていたし、デブリの多い地形ならそもそもデブリを使って回避するという手もある。その上で回避後は速やかに合流し、挟撃しようと展開してきた敵を各個撃破に持ち込んでいる」
「そんなこと、できるんですか」
「できるかどうかじゃあない。やるんだ。やらねば今回のようにそっちが各個撃破され、撃墜されることになる。兎に角分断されるな。反対に分断しろ。今回学ぶべき事柄はそれだ」
「ですが、大尉殿」アーサーが割り込んだ。「この形式の訓練だけでは、自分たちは何もできませんよ。仰るように自分たちが足りていないことは分かりますが……」
「だから、その形式の訓練もやる。それとは別に、戦闘訓練もやる、というのが、僕の導き出した結論だ」
「じ、」ジッツォが言った。「自由時間は……」
「あると思うか?」
「…………」
「ただでさえ時間が足らないのだ。このぐらいの無理は道理を引っ込めてでもやる必要があると思うが」
「それは、」ジッツォは何かを付け加えようとしたようだったが、結局何も言えずじまいになった。「仰る通りでしょうが……」
「ならば、機体に戻れ――今日は後二戦はするつもりだ。安心しろ、お望みの通り次はもっとやりやすい内容にしてやる」
エーリッヒはそのときニヤリと笑ったかもしれない。それを見て、ブリットを含む三人は震えあがった。
高評価、レビュー、お待ちしております。




