3.コラボ遊園地
コラボ遊園地当日は、よく晴れた青空が広がっていた。
「晴れてよかったね」
「はい!」
チケットを買って中に入る。特典のグッズもちゃんと貰えた。嬉しい。
「どれから乗る?」
「えっと、あれ乗りましょう! 観覧車!」
普通、観覧車と言えば最後のイメージがあるんだろうが、今回は別だ。ゴンドラにメンバーが描かれていて、中では彼らの曲が流れている。今回のコラボ遊園地のメインアトラクション。
ゴンドラに乗ると俺の好きな曲が流れていた。テンションが上がる。
「理人君はどの曲が1番好き?」
「1番⋯、難しいこと聞きますね」
「あはは。そうだね」
好きな曲が多すぎて、どれが1番かと言われると迷うけれど。
「アニメの1話の曲とかめっちゃ好きです」
「あ〜、俺も好き。あれが1話で流れてなかったら今ここにいないかも」
「わかります」
アニメはとりあえず1話だけ見てみて、続きを見続けるかどうか決めたりしてたから、俺も曲に惹かれて続きも見ようと思ったのは確かだ。
観覧車の後は別のアトラクションに乗ったり、イントロクイズに挑戦したり、コラボカフェに行ったりと楽しい時間を過ごした。
ライブと違って、1人で来ている人はほとんどいないみたいだ。ライビュの後、二条さんに声をかけてもらえて本当に良かった。
「次はあれ乗ろうか」
「はい」
水の上をゴンドラで進むアトラクションだ。ちょっと濡れるみたいだけど、降りてくる人の様子を見る限りだと、すぐに乾く程度だろう。
ゆっくり進んでいくゴンドラに、景色を楽しみながら揺られていたんだけど⋯
「理人君! 危ない!」
「え? わっ⋯!?」
突然横からすごい勢いで水をかけられた。アトラクションの人形が持っていた水鉄砲の水が当たったのだ。なんで!? 他の人こんなに濡れてなくない?
「うぅ、びしょびしょ」
「すみません! 大丈夫ですか!?」
降りる時にスタッフさんがタオルを持って走ってきた。大丈夫じゃないです⋯。
話を聞くと、本来はセンサーでゴンドラが近付いてきたら人形の向きが変わるようになっていたらしいのだが、何らかのトラブルで向きが変わらず、水鉄砲をもろに向けられてしまったらしい。
スタッフさんが貸してくれたタオルで拭いたものの、服がすぐに乾くわけもなく。
「理人君、これ着て」
二条さんが着ていた上着を肩にかけてくれようとする。
「えっ、いいです。濡れちゃいますよ」
「いいから。そのままだと風邪ひいちゃうよ」
「すみません」
夕方になって気温が下がってきたのか、かけられた上着から伝わる熱にほっと息をついた。
「そのまま電車は乗りづらいでしょ。車で来てるから送るよ」
「いや、そこまでしてもらうわけには」
「遠慮しないで。どうせ方向一緒だし、大して変わらないから」
背中を押され、あれよあれよと言う間に車に乗せられる。
「寒くない? コンビニであったかい飲み物でも買ってこようか?」
「大丈夫ですよ」
車の中は暖房を効かせてくれて暖かかった。そして、
「俺、この曲も好きです」
当然のごとく推しの曲が流れていた。
✦✦✦
二条さんは、俺の住んでるアパートの前まで送ってくれた。
「ありがとうございました」
「どういたしまして。風邪ひかないように、あったかくしてね」
「はい」
本来の予定なら、夕食まで一緒に食べる予定だった。けど、今日はもうこれで解散?
「⋯あの、もし良かったら、上がっていきませんか?」
「え?」
「コーヒーくらいしか出せないですけど、良かったら」
「いいの?」
車を来客用の駐車場に停めてもらい、部屋へ案内する。1人暮らしだから簡素なアパートだけど。
「お邪魔します。わ、すごいね!」
棚や机にところ狭しと並べられたグッズに、二条さんは目を輝かせていた。
俺はとりあえず服を着替える。借りた上着はどうしよう。これ普通に洗濯して大丈夫なのかな。
「理人君、着替えた? 上着は持って帰るから」
「洗って返します。クリーニングとか」
「そんなのいいよ。ただの水だし。いつも家で洗濯してるから」
あっさり取り上げられてしまった。いいのかな。いくら歳上とはいえ、俺甘えすぎじゃないだろうか。
とはいえ、本人がいいと言ってるので強くは言えず。この後使う予定があるのかもしれないし。
コーヒーを飲みながら、さっそくショップで購入した戦利品を開封することになった。
「あ、これ被った。理人君あげる」
「じゃあこれと交換しましょう。二条さんの推し」
「いいの? ありがとう。こういうのって何で欲しいのだけ来ないんだろうね」
「確率同じはずなのにおかしいですよね。絶対物欲フィルター働いてます」
熱量が低いライブに限って良い席が取れたりする。うーん、なんでだ。
「俺、選ぶ時は心を無にして選んでるつもりなんだけどな」
「そんなことしてるんですか?」
結局、開封の儀で盛り上がってしまい、途中コンビニに夕飯を買いに行って続きをしたりして、すっかり遅くなってしまった。
「すみません、遅くなっちゃって」
「全然。元々これくらいの予定だったしね」
「二条さんの家はここから近いんですか?」
「うん。今度うちにも遊びに来て」
車だと10分くらいの距離らしい。
途中トラブルもあったけど、なんだかんだ凄く楽しかったなと、駐車場から出て行く車を見送りながら、ふと笑みが溢れた。




