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1年C組異世界冒険譚  作者: 神埼時雨(仮)
第1章 異世界
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1.異世界に転移させられました

 今日も憂鬱な一日が始まる……。

 重い頭を揺らしながら、俺は学校への道を進む。


 俺は神埼時雨(かんざきしぐれ)、とある県立高校の1年生。

 俺のスペックを一言で表せと言われたら、「平凡」と迷わずに答えるだろう。

 中学時代から、テストの順位では平均ちょい上くらいを貫いてきた。

 友人が多いかと言えばそうでもなく、かといって無視され気味の陰キャかと言われれば、それも違う。

 文化祭や体育祭といったイベントでは、端の方でちょろっと登場するのみ。

 まあ、それが幸せというものなのかもしれない。


「よっ、しーちゃん! 元気?」

 突然、底抜けに明るい声と共に、体に衝撃が走る。

 誰かに背中を叩かれたのだ。

「いてっ!? ……だからそれ止めろって、昨日言ったばかりだろ?」

「あっ」

 後ろを振り返り、俺の平穏を乱した人物を睨みつける。


 三城茉里(みしろまり)。

 俺と同じクラスの同級生にして、向かいの家の幼馴染。

 なぜか毎日こうして俺の背中に攻撃を加える、よく分からないヤツ。

「かんざきしぐれ」の「し」を切り取り、俺をしーちゃんと呼ぶ。

 なぜかは知らんが、幼稚園の頃からそうだったから仕方ない。


「……で、何の用だ? 今日こそ何かあるんだろうな」

「え? えーと……」

「……ないのか」

「うん」

 本当になんなんだこいつは!?


 ……こいつの行動に意味を求めても仕方がない。

 諦めて歩き出すと、三城もついてきた。


「暑いねぇ〜」

「そうだな……。頭がおかしくなりそうだ」

 季節は真夏。

 カンカン照りの夏空から、強烈な日差しが降り注ぐ。


 夏。

 学校が始まり、新たな仲間と出会ってから3ヶ月が経った。

 旧来の友人とは変わらぬ付き合いが続き、新たな友人も少々できる。

 クラスには、仲良しグループがちらほらとでき始める。

 俺も例外ではなく、数人とのグループに入ることになんとか成功した。


「よう神埼。……って、本当にお前はいつも三城と一緒にいるよな」

 清水昭人(しみずあきひと)。

 俺の同中にして、気の置けない友人。

 性格もよく、成績も俺より数位くらい上だ。

 どうしてクラスのまとめ役になれないのか、陽キャになれていないのか不明だ。


「昭人と神埼じゃん。お前ら、今日の宿題終わったか?」

「なに自分は終わったみたいな言い方してんだよ、お前も終わってないくせに」

 おや、正真正銘の陽キャ達が来たようだ。


 井川翔(いがわしょう)。

 クラスのまとめ役その1。

 ありがたいことに、俺たちのような影の人間にも気さくに話しかけてくる。

 まあ、それがこのクラス全体の空気感でもある。

 いじめや喧嘩は、今のところ起こっていない。


 その後ろで井川にツッコミを入れる、笹川圭介(ささがわけいすけ)。

 特に言うことはない、これまた陽キャである。



 5人で雑談を交わしながら、俺たちの教室に入る。

 そこには、いつも通りの日常が広がっていた。


「おい野口、今日も変な本読んでんのか? お前も変態だな!」

「あ、か、返せよ!」

「ちょっと泊くん、その本返してあげて!」

 眼鏡の男子の手から本を奪い振り回す不良風の男子と、それを見咎め果敢にも注意する女子。


 泊宗吾(とまりそうご)、入学早々に生活指導を食らった問題児。

 未だ暴力行為やいじめに及んだことはないが、気の弱い生徒には恐れられている。


 それを注意するは、学級委員長日比野美月(ひびのみつき)。

 細かなことまで気を配る優しさと、弱者を守ろうとする正義感を持つ。

 泊すら日比野の指示は渋々聞くのだから、まあ、嫌っている人はいないだろう。

 というか、何人かの男子は日比野に好意を寄せているとか。



 教室には、既に全員が登校していた。

 その人数、総勢28名。

 まあ、ここで全員を紹介することは叶わないだろう。

 とにかく、有象無象のことなど霞むほどの、大事件が起こったのだから──


「ん? 何か明るくねえか? ……って何だこれ!?」

「おい、誰だよこんなイタズラ仕掛けた奴は?」

 教室の中央にいた男子たちが騒ぎ始める。


「うるさいわよ。どうせ光の反射か何か……いや、違う!」

「早く、みんな教室から逃げよう……開かない!?」

 その言葉に、慌てて振り返る。

 さっき俺たちが開け、そのままのはずのドアは、いつの間にか固く閉ざされていた。


 教室の中央の光は、今や教室を隅々まで覆い尽くすほどの大きさになっていた。

 そして、その形状をはっきりと見ることができた。

 魔法陣。

 そしてそれは、目の眩むほど強く光り輝き──



「……皆さん、突然呼び出してしまい、申し訳ございません」

 思わず目を瞑って数秒後、耳慣れぬ声に目を開ける。

 ……ベタだ。とてもベタだ。

「私は神、と言っても信じてもらえるかは分かりませんが……」

 壁の見えぬ広い空間。

 俺たちの目の前に佇む、白髪の老人。

 どうやら俺たちは、神のお眼鏡に適ってしまったようだ。


「おいてめえ、神だか何だか知らねえけどよ、ふざけたこと言ってんじゃねえよ!」

 泊が、果敢にも神に掴み掛かる。

「ちょっと、やめ……!?」

 それを止めようとした日比野が目を見張り、動きを止める。

 俺たちも、目の前の光景に言葉を失った。


 神の胸ぐらに手を伸ばしかけた泊が、吹き飛ばされたのだ。

 神の指一本動かぬ間に。


 神も不本意だったのか、少し申し訳なさそうな表情をした。

「……これで、本当だと理解していただけたと思います。

 ところで皆さん、異世界に興味はありませんか?」

 神はいきなり表情を緩めると、明るい声でそう尋ねる。


「い、異世界……? それって、剣とか魔法とか……」

 先ほど泊に絡まれていた男子、野口啓二(のぐちけいじ)は、おずおずと聞き返した。

「ええ、その通りです。剣と魔法、モンスター、魔王……」

 話が通じたことに嬉しくなったのか、神も機嫌をよくした。


 要約すると、神は魔族に滅ぼさせられつつある世界を守ってほしいのだそうだ。

 当然、生身の俺たちじゃただの餌なので、色々と手助けしてくれるようで。

 言語理解を始めとして、各人に1つずつ、固有の能力を与えてくれるらしい。


「なんか面白そうじゃね? 行こうぜ」

 井川の意見に、男子数名が同調した。

「え〜、嫌よ。何か怖いし、日本の方が安全だしさ」

 玖珠田美琴(くすだみこと)が先鋒となり、慎重派の生徒は否定的な意見を示す。

「あれれ、ビビってんのか?」

「何? こっちから見れば、あんたたちが命知らずのバカに見えるけど」

 一触即発!


「ちょっとみんな、神様をあんまり困らせないの。すみません、こんな人たちで……あっ!」

 日比野が短い叫び声を漏らす。

 見ると……。

「あっおい、まだ決めてねえんだからちょっと待っ──」

 神は、呪文を唱え終えた!

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