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言霊競技  作者: みやび
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第1話

この作品に興味を持っていただき、ありがとうございます。初めての投稿となりますので至らぬところが多いと思いますが、楽しんでいただけたら幸いです。



俺は荒木紡あらき つむぐ。花園高校の一年生だ。

昨日は入学式があり、先輩たちによる部活の紹介があった。

野球部や吹奏楽部といったメジャーな部活が並ぶ中、とある部活が目に留まった。

言霊競技部ことだまきょうぎぶ……?」

言霊……?どんな競技なんだろう。体験入部だけでも行ってみるか。


放課後、俺は言霊競技部の部室へと向かった。

コンコンコン。

「失礼します」

恐る恐るドアを開けると、部屋の奥にたった一人、本を読んでいる男子生徒がいた。

俺に気づくと、彼は本にしおりを挟み、こちらへ歩いてきた。

「こんにちは!君は体験入部かな?」

「はい…」

「こんなすぐに体験入部が来てくれるなんて嬉しいよ。さ、座って座って」

俺は促されるまま、部室へ入り、用意してくれた椅子に座った。辺りを見渡すと、部屋に置かれたほとんどの物が薄く埃を被っている。

「まずは自己紹介からだね。俺は佐々木大悟ささき だいご。言霊競技部の部長だよ。まぁ、部長って言っても部員は俺だけなんだけどね……」

彼の笑顔には体験入部が来た喜びと、隠しきれない寂しさが混ざっているように見える。

「そうだ、君の名前は?」

「荒木紡です…」

「紡君!これからよろしくね!……ってまだ入部は決まってないんだったか。」

彼は軽く笑う。

「そもそも、言霊がどんなのかは知ってる?」

「名前くらいなら……」

「じゃあ、ほとんどわからないってことか。なら説明するよりも、見たほうが早いね」

そう言うと彼は立ち上がり、窓辺から植木鉢を持ってきた。

「じゃあ、この植木鉢を見ててね」

「……栄枯盛衰」

彼がそう唱えた直後、たくましい新芽が土を破り、すくすくと伸びる。あっという間につぼみができ、きれいな花が咲く。しかし、栄えたものはいつか衰える。花はしおれ、種を落として枯れた。

「どうかな。これで伝わればいいんだけど……」

俺は言葉が出なかった。十秒ほどで花が命を繋いだ……

「……驚いてるってことは伝わったんだね?」

「今のが言霊ですか…?」

「そう!栄枯盛衰って言葉は、栄えることと衰えること、その移り変わりを意味してるんだ。だからこの花は枯れて終わりじゃなく、次の世代に種を残していったんだ」

続けて彼は言う。

「言霊には言葉の持つ意味や情景を現実に呼び起こす力がある。だから、言葉が表すことを理解し、思いを込めて唱えることが大切なんだ」

「語彙力と想像力が必要そうですね……」

「難しそうに聞こえるけど、まずは簡単なものからでいいんだよ。試しにやってみよっか!」

「いいんですか?」

「いいよいいよ。俺だって誰かが言霊を唱えてるの見たいし」

「……落雷!」

……しかし、あたりを見渡しても何も起こらなかった。

「おっと。説明を忘れてた。落雷や吹雪みたいな現象の名前を口にするだけじゃ、言霊の力は現れにくいんだよ」

「そうなんですね……」

「一応そういった雷とか氷みたいな属性を扱える人もいるんだけどね。その人たちは自身にある属性の力を使ってるんだ」

「属性は個人の力を使って、言霊は言葉に宿る力を借りる感じですか?」

「そうそう!呑み込みが早いね。ちなみに、言霊はことわざや四字熟語みたいな意味や情景のある言葉のほうが大きい力を引き出しやすいんだ」

「そんな特性があるんですね…」

「不思議だよね。初心者なら、まずはことわざや四字熟語を使うことから始めてみたらどうかな?」

間を置いて、彼は羨ましそうに言う。

「本当に上手な人は俳句や短歌なんかを駆使するんだけどね……」

「言霊の世界って奥が深そうですね……」

「そうなんだよ。少しは興味持ってくれたかな?」

たった一つの言葉が大きな力を秘めている──。

俺は確かに、言霊競技に惹かれ始めていた。

「そろそろ体験入部の生徒は帰る時間だね」

彼はそう言って時計を見る。その表情はどこか寂しげだ。

「今日は来てくれてありがとう。興味持ってくれたら、いつでも入部待ってるよ」

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