第15話
黒の要塞の崩れた玉座の間で、アリスは荒い息を吐きながら大剣を地面に突き立てた。
全身が熱を持ち、8大精霊の力がまだ体の中で激しく渦巻いている。膝が震え、視界が少しぼやけていた。
アリス:「はあ……はあ……逃げられた……でも、確実に……手応えはあった……」
ディネが肩の上で、珍しく心配そうな顔でアリスを見下ろした。
ディネ:「アリス、無理しすぎよ。8大精霊の力を同時に制御したんだから、体が悲鳴を上げてるわ。座りなさい」
サラ:「でもすげえぞ! 魔王を後退させたんだぜ!」
シルフ:「アリスちゃん、かっこよかったよー! 風みたいに速かった!」
ウィプス:「みんな無事でよかったね!」
セレネ:「……油断しないで。あの者はまだ本気じゃなかったわ」
ノーム:「……ふん。よく耐えたな」
ジェイド:「……怪我はないか?」
エント:「アリスちゃん、まずは回復ですわ。無理は禁物よ」
アリスはゆっくりとその場に腰を下ろし、苦笑いを浮かべた。
アリス:「みんな……ありがとう。本当に、みんながいなかったら今頃……」
ディネ:「当然でしょ。私たちがいるんだから。……ったく、世話の焼ける契約者ね」
その言葉に、8大精霊全員が小さく笑った。
ミクリが駆け寄り、アリスの肩を支えた。
ミクリ:「アリス、大丈夫か? 顔色が悪いぞ」
アリス:「うん……ちょっと疲れただけ。ミクリも無事でよかった」
一行は要塞の外へと脱出することにした。崩壊しつつある要塞に長居するのは危険すぎた。
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黒の要塞から数キロ離れた森の奥、安全な場所で野営を張った。
焚き火の周りに座り、アリスは温かいスープを飲みながら、8大精霊たちと話をしていた。
アリス:「ヴェルグの言ってたこと……少し、考えちゃうよ。
世界が『安定』しすぎたせいで生まれた存在だって……」
ディネ:「馬鹿なこと考えないの。あの男はただ、世界を自分の理想に塗り替えたがってるだけよ。破壊を美化してるの」
セレネ:「……同意ね。秩序を否定するなら、混沌の果てに何を残すというの?」
サラ:「とにかく、次はぶっ飛ばす! 俺の炎で丸焼きだ!」
シルフ:「風で要塞ごと飛ばしちゃおうよ!」
ウィプス:「みんなで力を合わせれば、絶対勝てるよ!」
ノーム:「……焦るな。まずは体を休めろ」
ジェイド:「……アリスが倒れたら意味がない」
エント:「そうですわ。アリスちゃんの笑顔が一番大事ですのよ」
アリスは焚き火の炎を見つめながら、ふっと笑った。
アリス:「みんな、ほんとにうるさい……でも、すごく心強いよ。
前世の私だったら、絶対にここまで来れなかった」
ディネが優しい声で言った。
ディネ:「あなたはもう、前世の弱い自分じゃないわ。今は私たちの契約者。世界最強クラスの剣士よ」
アリス:「……うん。そうだね」
そこへミクリが薪を追加しながら話に加わった。
ミクリ:「アリス、王女としての責任と、冒険者としての自由……両方背負ってるんだな。大変だ」
アリス:「まあね。でも、みんながいるから頑張れるよ」
突然、ディネがいつもの毒舌モードに戻った。
ディネ:「ところでアリス、戦闘中に汗だくで髪がぐちゃぐちゃよ。明日はちゃんと手入れしなさい。美少女の自覚が足りないんだから」
アリス:「今そんな話!? さっきまで感動してたのに!」
サラ:「ははっ! ディネ姉さん相変わらず!」
シルフ:「アリスちゃんの寝顔も可愛いのにー」
アリス:「ちょっと! 寝顔見るなよ!」
野営地はいつもの大騒動に戻った。
アリスは頭を抱えながらも、心の底から笑っていた。
アリス:「……この面倒くささが、私の力なんだよね」
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翌朝。
アリスたちは王都へ向かう準備をしていた。
しかし、伝令の鳩が一本、急いで飛んできた。
伝令の内容は衝撃的だった。
「黒の要塞の残存勢力が再編成を開始。四将が生き残り、魔王ヴェルグが『第二段階』の準備に入った模様。王都にも影の工作が……」
アリスは手紙を握りしめ、表情を引き締めた。
アリス:「まだ……終わってないんだね」
ディネ:「当然よ。あの程度で終わる相手じゃないわ」
サラ:「よし、次はもっと派手にいくぜ!」
セレネ:「……覚悟を決めなさい」
アリスは8大精霊とミクリを見回し、明るく力強く宣言した。
アリス:「みんな、一緒に戦おう。
私は王女としても、冒険者としても……この世界を守る!」
8大精霊が一斉に答えた。
「当然でしょ!」「いくぜ!」「飛ぼうよ!」「照らすよ!」「守る」「我慢しろ」「……共に」「……いいでしょう」
アリスは笑った。
毒舌と世話焼きと大騒動に満ちた、最高の仲間たちと共に。
元王女アリスと8大精霊の物語は、まだまだ続いていく——。




