↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レヴェリア、龍の舞う島々 ー無限の空をめぐる戦い。夢の国を造る少女と、それを支える男の物語ー  作者: 藤村 樹
第2部 氷銀の狐

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

56/330

第55話 連携 対 連携


◇グレイスの視点です

◆神の視点です


◇

 双子が放った数多(あまた)の氷棘(つらら)が空を切り、レゼルとシュフェルたちへと襲いかかる!


「シュフェル、いったん別れましょう!」

「おっけー、姉サマ!」


 レゼルとシュフェルはとっさの判断で別々の方向に回避した。

 標的がふたつに別れれば、敵も的(まと)を絞れなくなるはずだ。


「ふた手に別れれば逃げられると思ったの?」

「!」


 双子たちは練りあげた冷気から氷棘を二方向に分けて同時に射出しはじめた。

 しかもそれでいて、攻撃の連射速度はまったく落ちる気配がない。


 レゼルとシュフェルは敵を攪乱(かくらん)しようとそれぞれ動いているが、攻撃を振りきることができない。


 ……それにしても、すさまじい手数(てかず)の多さだ。

 先ほどから氷棘は猛烈な勢いで絶え間なく撃ちだされつづけている。


 レゼルとシュフェルの龍の御技(みわざ)も規模や破壊力では同等以上だが、身体にかかる負担が大きく、発動可能な回数に限度がある。

 レゼルたちが使いどころを見極めて技を使用しているのに対し、双子のほうは残りの弾数(たまかず)など気にせず撃ちまくっているように見える。


 また、連携の仕方がこのふた組はまったく異なっている。

 レゼルとシュフェルは扱う自然素の性質は違えど、互いの違いを活かすように息のあった連携を見せる。


 対して、双子たちは同じ水氷(すいひょう)の自然素を扱いながら、片方が完全にちからの錬成(れんせい)に徹している。

 その結果として、ひとりのちからではとうてい実現しえないほどの連射速度を実現してみせていた。


 連綿(れんめん)と撃ちだされるつづける氷棘に、レゼルとシュフェルも少しずつ身を削られていく。

 防御にも応用が効くレゼルは危険が迫ると風のちからで氷棘の軌道を逸らして身を守っている。

 いっぽう、攻撃特化型のシュフェルとクラムはすべての攻撃をかわしきれず、からだのあちこちに小さな傷を負いはじめていた。


「……んのやろォ!」


 いっこうに勢いが落ちる気配のない敵の攻撃に痺(しび)れをきらし、シュフェルは身に帯びる電気を強め、髪を逆立てた。


 得意の一撃必殺技、『雷剣(エクレスペル)』で強襲(きょうしゅう)をはかるつもりだ。

 彼女の『雷剣』は、その気になれば迫りくる氷棘をすべて撃ちくだきながら敵に到達するほどの突破力を備えている。


「……危ない、姉上!」


 しかし、シュフェルとクラムが『雷剣』を発動しようと地に着陸した瞬間。

 危険を察知したネイジュが錬成した冷気の塊を霧(きり)のようにして半分撃ちだし、シュフェルたちとのあいだに極低温(きょくていおん)の冷気を放った!


 触れるだけでからだが凍りついてしまうほどの冷気が、シュフェルの前方で広範囲に広がる。

 氷棘と違い、叩きわって進めるような代物ではない。


 無闇に突っこめば、自身が受ける代償は大きい。

 シュフェルはとっさの判断で『雷剣』の発動を見送った。


「……ちっ!」


 眼前に広がる冷気のあいだを縫(ぬ)って再び氷棘が飛んできたので、シュフェルは回避せざるを得ない。


 また氷棘に追いかけられながら、シュフェルとクラムは低空での飛行を始めた。

 彼女たちの逃避行(とうひこう)は結局、振りだしに戻ったかたちだ。


 ……だがそこで、距離を置いた場所から敵の行動型(パターン)を観察していたレゼルが、シュフェルに呼びかけた。


「シュフェル!」

「!」


 シュフェルはレゼルに呼ばれて振りむき、互いに目を見合わせた。


 レゼルは視線だけで合図を送り、自分の後方に顎をクイッと振る。

 それだけでシュフェルには伝わったようで、彼女は確信の表情でうなずいてみせた。


 レゼルはシュフェルに意図が伝わったことを確認すると、双子の前に躍(おど)りでた。


「次は、私の番です!」


 レゼルは自分の周囲に激しく風を巻きおこすと、双子へと向かって突進した!


 双子は氷棘の撃ちだす速度をさらにあげ、先ほどのように極低温の冷気を自分たちとレゼルとのあいだに展開した。


 しかし、レゼルは風を巧みに操作して、氷棘はわずかに軌道を逸らしてかわし、冷気を風で拡散させながら突進しつづけた。

 そして、あとエウロの翼もうひとはばたきで双子に到達するというところで、彼女たちは上方へ急浮上した。


 双子たちの視線が、レゼルを追いかけて上を向く。


 ――だが、レゼルが突進してきた方向の先には、帯電を完了したシュフェルが剣を構えていた。


「これで終わりだ」


『雷剣(エクレスペル)』!!


 レゼルが作った風の通り道を抜け、ひと筋の雷と化したシュフェルとクラムが強襲する。

 シュフェルたちが通った軌跡上の雪が、えぐられるようにして舞いあがっていく!


「姉上!」

「おのれ人間どもめっ……!」


『雷剣』が発動される瞬間、双子の姉はとっさに練りあげた自然素の塊から氷の柱を発生させて、互いに乗っていた氷狐(ひょうこ)を突きとばしていた。

 自然素の塊は双子のあいだにあったので、彼女たちはそれぞれ反対方向へと突きとばされる!


 双子はかろうじて『雷剣』をかわしたが、練りあげていた水氷の自然素の塊はすべてシュフェルに撃ちくだかれ、乗っていた氷狐(ひょうこ)たちの足も数本持っていかれていた。


『雷剣』を発動して双子のあいだを駆けぬけたシュフェルは、肩ごしに後方を顧(かえり)みた。


「かわされたっ……!」

「ええ、ですが……!」


 ――レゼルたちの勝ちだ。

 双子の連携は崩れ、氷狐の機動力も損なっている。


 レゼルは双子の姉のほうへ、シュフェルはネイジュのほうへとそれぞれ飛んでいき、とどめを刺しに向かった。



◆

 レゼルたちの戦いを上空から見おろしている者がいた。

 上空――正確には凍てついた王城の頂点にあたる、尖塔(せんとう)から見おろしていたのだ。


 その者こそ、『氷華(ひょうか)』ミネスポネ。


 彼女は、双子とレゼルたちの戦いの行く末を遠くから見守っていたのだ。


 だが、戦いはレゼルたちの勝利で締(し)めくくられようとしていた。

 クラハとネイジュだけではレゼルたちを倒すのが難しいのだということを、彼女は理解した。


 ――そしてついに、彼女は動きだす。


 このファルウル、壁に囲まれし氷銀の世界を統(す)べる者が今、戦場に降りたとうとしていた。




 次回、いよいよミネスポネが騎士団の前に姿を現します。


 次回投稿は2022/7/24の19時以降にアップロード予定です。何とぞよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。