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レヴェリア、龍の舞う島々 ー無限の空をめぐる戦い。夢の国を造る少女と、それを支える男の物語ー  作者: 藤村 樹
第1部 鉄と炎の機械城

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第29話 激突

 レゼルは闘技場の出口に向かっていく騎士団員たちの姿を見送ったのち、オスヴァルトのほうへ向き直った。


「……ほんとうによかったのですか?

 彼らを行かせてしまって」

「構いませぬ。

 それより、ゲラルド殿をあまり甘く見ぬほうがよろしい。

 腐っても帝国皇帝に認められし男。

 早く私を倒して追わなければ、彼らも返り討ちにあってしまうかもしまいませぬぞ?」

「言われずとも……!

 私はあなたを、この場で倒します!」


 レゼルはエウロと共鳴すると、自身の周囲をとり巻くように風を発生させた。

 そして、まさしく一陣の風となってオスヴァルトとの距離を詰め、斬りかかっていく!


 オスヴァルトのほうも炎龍と共鳴して炎を発生させると、空中へと飛びあがり、レゼルを迎えうった。


 レゼルとエウロはオスヴァルトの周囲を旋回するように飛びまわりながら、次々と双剣で斬撃を撃ちこんでいった。

 対して、オスヴァルトは前回の戦いのときのように最低限の動きで的確にレゼルの斬撃を(さば)いていく。

 炎龍もその巨大な体躯(たいく)に似合わず、うまくからだを(ひね)らせてエウロの速度に遅れることなく対応している。


 レゼルは剣撃に織りまぜて風の刃でも攻撃を加えているが、風の発生と同時にオスヴァルトが炎の渦を発生させて、かき消してしまう。

 彼女の攻撃が読まれているため、常に先手を打たれているのだ。


 オスヴァルトは時折ちから任せにレゼルの剣を打ちはらっては、彼女に生じた隙を狙って鋭い一撃を放ってくる。

 ここまでも、前回の戦いと同様だった。


 ――だが、オスヴァルトはすぐに彼女の変化に気がつく。


「……!」


 レゼルはオスヴァルトからの反撃に対応できるようになっていた!

 彼女は双剣でオスヴァルトの攻撃を受け、紙一重で剣先の軌道を()らしている。


 もちろん、剣士としての実力の差は明白で、レゼルには(いく)ばくの余裕もない。

 だが、彼女の反応は前回よりも確実に速くなっていた。


 その反応速度の差は、(まばた)きにも満たないほどの差であっただろう。

 しかしそのわずかな差が、達人同士の戦いでは決定的な違いを生みだしていた。


 オスヴァルトはレゼルと剣を交えながら分析する。


 ――この動きは、彼との戦いの想定(シミュレーション)を徹底的に繰りかえし、準備してきた者の動きだ。


 レゼルには幼少期に父・レティアスとともに剣の指導を行っている。

 オスヴァルトの剣術の理論や太刀筋は潜在的に身に付いているのだろう。


 だが、先日一戦を交えただけで過去の心象(イメージ)とのずれを修正し、状況ごとの対応策をひとつひとつ丁寧に構築してきた――。


「じつに面白い。

 さすがはレティアス様の娘と言ったところですな」


 そう言うと、オスヴァルトは大剣を薙ぎはらってレゼルをエウロごと吹きとばし、新たな龍の御技を放った。


(フオ・)(シュライゲル)』!!


 オスヴァルトが大剣を振るうと巨大な炎の蛇が放たれ、レゼルを喰らおうと襲いかかってきた!

 レゼルもエウロとの共鳴を深め、龍の御技で対抗する。


旋風(トゥルビネ)』!!

 

 レゼルは自分の周囲をとり巻く旋風をぶつけて、かろうじて炎の蛇をうち消した。

 彼女の風は炎の蛇に飲みこまれそうになるも、なんとか打ちはらったのだ。

 熱い火の()が風に乗り、渦を巻いて舞いあがっていく。


 ……だが、高い威力を誇るオスヴァルトの攻撃を相殺(そうさい)するのに、かなりの量の自然素を消費している。

 一撃払いのけただけで、彼女のからだには重い負担がずしりとのしかかっていた。


「く……!」


 レゼルは息があがりはじめ、どんどん体力の限界が迫ってくるのを感じていた。


 いっぽう、オスヴァルトはますます気勢があがり、闘いを楽しんでいるかのように吠えた。


「さぁ、レゼル様!

 あなたはやっと私と戦う舞台にあがれたばかり。

 真の果たし合いはこれからですぞ!!」


 オスヴァルトをとり巻いている紅蓮(ぐれん)の炎が、よりいっそう激しく燃えさかった。



 俺たちは闘技場をでたあと、階段を登り、闘技場よりも上の階へと進んでいた。


 今はレゼルに代わってブラウジが指揮を()っている。

 上層階の構造はとくに複雑で分かれ道が多かったが、ここまでの道のりと同様に分岐があるごとに少しずつ騎士団員たちを分散させて進んでいく。


 進んでいくうちにホールにでたが、ここにきて大人数の機龍兵と歩兵の一群と遭遇(そうぐう)してしまった!


 上層階の警備を担っている主要な部隊なのだろう。

 機龍や歩兵が身につけている装備はより重厚で高い性能をもっているようであり、無機質な光沢を放っていた。


「重装龍兵五人衆よ!

 ここは頼んだゾ!!」

「ハイホー!!」


 ブラウジの指示で、重装龍兵五人衆と、二十人あまりの騎士団員がここでの戦闘にあたる。

 一般龍兵のなかでもとくに戦闘力が高い五人衆に任せておけば、ここは大丈夫だろう。


 ……だが、いよいよゲラルド捜索に残された団員の数が少なくなってきてしまった。

 残った団員は俺とブラウジを含めても十人ほどしかいない。



 戦いの隙間をくぐり抜けて、俺たちはホールの先へと進む。

 ホールの先の通路を走っていると、向かって左手の分かれ道のほうから音が聞こえてきた。

 なにか大きな物体を運搬(うんぱん)しているかのような、重たく響く音だ。


「ブラウジ、こっちだ!」


 俺がブラウジを促すと、皆で分かれ道のほうへと進んでいく。

 奥までたどり着くと自動の扉がひらき、部屋のなかから冷たい風が吹いてくるのを感じた。


 この部屋もかなり広く、床には絨毯(じゅうたん)が敷かれているかのように幾何学的な模様が描かれている。


 部屋の入り口と反対側のほうでは、壁が機械のちからで大きく開けはなたれている途中だった。

 壁のひらいた隙間からは、すっかり暗くなった夜の空が顔を覗かせている。


 そして、その手前にあるのが飛空船。


 飛空船はひらく壁のほうに向かって、車輪付きの台に載せられて運搬されているところだった。

 部屋の天井に屋根がこすりそうになるほどの大型の船だ。


 飛空船のデッキに数人のアイゼンマキナ軍の兵士が立っている。


 そして、それらの兵士に付き従われるようにして飛空船の内部に乗りこもうとしている男がいた。

 その男は翼竜騎士団の到着に気づき、こちらを振りむく。


 ゲラルドはめったに人前にでることはないが、鉄炎国家の宰相(さいしょう)としてその人相書きは公表されている。


 痩せこけた頬。

 顔に深く刻まれたしわ。

 そして、他人は誰も信じないと言いたげな冷酷な眼。


 ――間違いない、奴こそが俺たちの標的。

 ゲラルドだ。




 次回投稿は2022/4/25の19時以降にアップの予定です。何とぞよろしくお願いいたします。

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