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レヴェリア、龍の舞う島々 ー無限の空をめぐる戦い。夢の国を造る少女と、それを支える男の物語ー  作者: 藤村 樹
第1部 鉄と炎の機械城

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第28話 宿命の戦い


◇グレイスの視点です

◆神の視点です


 まだ火の粉が舞う上空を見あげると、爆発の連鎖から逃れた機龍兵たちが上空を旋回していた。


 だが、何が原因で爆発が起こったのかわからないため、うかつに降りてくることができないようだ。

 空はすでに陽が暮れはじめ、夕焼け空になってきている。



 と、上空の様子をうかがっているうちにレゼルとシュフェルがいったん自陣に戻ってきた。


 作戦の成功を喜んでいる場合ではない。

 すぐに陣形を整えなおし、城内に突入しなければならない。


 俺はシュフェルに替わりの長剣を手渡しながら、再度作戦の確認を行った。


「シュフェル。

 お前が城内で敵を爆破すると味方まで巻きこまれちまう。

 それに、シュフェルがひとり城の入り口を守ってくれているだけで、外に残っている連中は誰も手出しできなくなる。

 殿(しんがり)を任せたぞ」

「わかってるわよ。(えら)そうに指図すんな」


 シュフェルは城外に残ることになって不満そうだが、素直に指示は聞いてくれそうだ。

 事前にレゼルのほうから、よく言い聞かせてもらっておいた甲斐があった。


 俺とシュフェルが話しているあいだにも、幹部衆が中心になって隊の陣形を手早く整えた。


「さぁ、皆さん!

 敵が混乱しているうちに、城内に突入しましょう!」


 レゼルが号令をかけ、翼竜騎士団は城の基部にひらいた大穴から、内部へと突入した。



 翼竜騎士団が突撃を開始したのを、オスヴァルトは物見窓から見て確認した。


「城内に侵入しましたな。

 いずれここに到達するのも時間の問題でしょう」


 ゲラルドがいきりたち、オスヴァルトに噛みつく。


「オスヴァルトォ!

 キサマが給油庫でヤツらをきっちり始末しないからこうなるんだろうがァ!

 どう責任をとるつもりだ!」

「少しお黙りなさい」


 オスヴァルトがにらみを利かせると、ゲラルドは「ヒェッ」と情けない声をだして怖気(おじけ)づいた。

 普段は冷静沈着なオスヴァルトから、尋常ならざるほどの敵意が剥きだしになっていたからだった。


「ご安心ください。

 あの龍騎士の(レゼル)は絶対に通しませぬ。

 ゲラルド殿は身を隠していてくだされ」


 ゲラルドは何も言いかえすことができずに、またひざまずいてしまった。

 オスヴァルトが発する圧倒的強者の気配に、周囲にいたゲラルドの部下たちも皆、震えあがってしまっていた。


 オスヴァルトは身を(ひるがえ)すと、振りむきざまにゲラルドを見おろした。


「翼竜騎士団は今日、私が潰す」



 城の内部の通路は機龍兵が行き来できるように、かなり広い造りになっていた。

 城の内壁ではさまざまな機械がおのおの自律的に(うごめ)いており、見ているだけで気分が悪くなる。


 事前に予測していたとおり、城の正面が堅固に守られていた分、城内の警備は手薄だった。

 敵側も、まさかあの大軍勢が突破されるとは夢にも思っていなかったことがうかがえる。


 ぱらぱらと機龍兵が襲いかかってくるが、レゼルの体力を少しでも温存するため、一般龍兵たちが迎えうつ。

 龍兵たちはいつものとおり三人ひと組の連携で、手際よく敵兵を撃破していく。


 しばらく通路を進むと、城の中心を貫く大きな吹き抜けにでた。


 騎士団は吹き抜けのなかに入ると、龍の翼を羽ばたかせ、上の階に向けて飛行していく。

 上から降るように襲いかかってくる機龍兵たちも、重装龍兵五人衆をはじめとした一般龍兵たちが迎撃(げいげき)した。


 レゼルが次々と指示をだし、およそひとつの階につき、三人ひと組を三組ずつ探索に向かわせる。

 そうしてどんどん上の階へと向けて進んでいき、天井のある階にたどり着くころには騎士団の人数は半数ほどになっていた。

 外から見た城の高さを考えると、まだ城のなかほどであるように思われた。


 吹き抜けの一番上の階は四方に入り口があるが、小さな三つの入り口には龍兵たちをひと組ずつ向かわせ、レゼルたち本隊は一番大きな入り口へと向かった。

 ここでも指揮をしていたのはレゼルだが、彼女の判断に迷いは見られない。


 移動を続けながら、俺は彼女に問いかけた。


「レゼル!

 こちらの方向に人数を集中させているが、ほんとうに間違いないのか?

 敵が上層階にいるとは限らないぞ」


 しかし、やはりレゼルの答えに迷いはない。


「いいえ、間違いありません!

 龍の鼓動ではありませんが……。

 上の階から、私たちに明確に向けられた闘志を感じます。

 強き者だけが発する、突き刺さるような闘志が!」


 レゼルは一定の距離の範囲内で発せられる龍の鼓動は感知できるらしいのだが、それは決して索敵(さくてき)向きの能力ではないという。

 おそらく、強き者同士だけが感じとれる、第六感のようなものがあるのだろう。


 俺たちは大きな入り口に入ると、そこはすぐ折りかえしの階段になっていて、ちょうど吹き抜けの天井のほうに戻ってくるような構造になっている。


 階段を登りきって真っすぐに進むと、今までとは雰囲気の異なる扉が現れた。

 これまでに見かけた扉は自動でひらく機械の扉であったが、目の前にあるのは古代の神殿(しんでん)のように(おごそ)かな装飾がほどこされた、両開きの扉だ。


 扉の前にまできて、やっとこの俺にも『突き刺さるような闘志』というものが感じとれたような気がした。

 扉の向こう側からとてつもない威圧感が放たれている。


 ――いる、この扉の奥に。

 まぎれもなく『強き者』が……!


 一般龍兵の龍が重たい両開きの扉を押しひらくと、扉の向こう側は真っ暗闇だった。

 まだ目が慣れなくて内部がよく見えないが、空気の感じや音の反響から、大きな空間が広がっていることを察した。


 だが、翼竜騎士団が内部に侵入すると、急に空間が明るく、暑くなった。

 空間の内部に数多く配置されていた火台の炎が、一斉に激しく燃えあがったからだ。


「これは……!」


 俺たちは感嘆の声をあげた。


 そこは古代の闘技場を模したドームになっていた。

 鋼鉄の機械の城のなかとは思えぬ、まったく異質な空間。

 ご丁寧に、床には土まで敷かれている。


 そして、この荘厳(そうごん)な闘技場の中央で、オスヴァルトは炎龍にまたがったまま瞑想(めいそう)していた。


「オスヴァルト……!」


 レゼルが名を呼ぶと、オスヴァルトはうっすらと目をひらく。

 だが、その視線はレゼルではなく、俺を捉えているように感じられた。


「……なるほど、そなたが『異分子』か」


 今までの翼竜騎士団とは異なる手口に、異変を感じとっていたのだろう。

 彼は帝国風の衣服を着ている俺を見て、察したようだった。


 オスヴァルトは仰々(ぎょうぎょう)しく、俺たちを歓迎するかのように両腕を広げた。


「龍神教の信徒たちよ、よくぞここまでたどり着きましたな。

 そのお手並みや見事」


 彼は見えすいた賛辞の言葉を述べている。

 すかさず、ブラウジが問いかけた。


「オスヴァルトよ、この場所はいったいなんなんじゃ?」

「ここはゲラルド殿が造らせた闘技場です。

 自らが開発した新型の機龍が完成すると、ここで兵士を殺させて仕上がりを確認するのです。

 吐き気を(もよお)すほどの悪趣味だが、戦いの舞台にはちょうどいい……!」


 翼竜騎士団の面々が武器を構え、臨戦態勢に入る。

 だが、オスヴァルトは一向に構う様子もなく、俺たちから向かって左側のほうを指ししめした。


「ゲラルド殿はあちらの出口の先におります。お好きなように探しなさい。

 ……ただし、レゼル様。

 あなただけは通しませぬ」

「!?」

「レゼル様。

 ここから先に進みたいのであれば、私を倒してから行きなされ。

 そして、ここで私をとめられなければ、私はお仲間を殺しに行きますぞ……!」


 そう言って、オスヴァルトは背中に抱えていたブレンガルドをにぎり、構えた。


 彼が手に取ったのと同時にブレンガルドの刀身が赤く輝き、炎をまとう。

 闘技場のなかの温度がさらにあがり、オスヴァルトの周囲でゆらゆらと光の屈折(くっせつ)が起こっている。


「貴様、何をふざけたことを言っているんだ!」

「レゼル様、奴の口車(くちぐるま)に乗る必要などありませぬ。

 全員で叩きましょう!」


 一般龍兵たちがいきりたつなか、ひとり冷静なレゼルが首を横に振った。


「いいえ、オスヴァルトの提案に乗りましょう。

 ここは私に任せて、皆さんはゲラルドを探しに行ってください」

「しかし……!」


 たしかに、レゼル以外の騎士団員たちがゲラルドの捜索に専念できるというのは願ってもない話であった。


 こうしているあいだにも、ゲラルドは逃走や迎撃の準備を整えているかもしれないからだ。

 そして何より、龍騎士同士の戦いに俺たちが付け入る隙などわずかたりとも存在しないだろう。


「大丈夫。私を信じて」


 みんなにそう言って、レゼルは前にでた。


「いいでしょう、オスヴァルト。

 龍神の御名(みな)のもとに、私はあなたの申し出を受け入れます!」

「そう来なくては……!」


 レゼルが決闘を受けたのを見て、オスヴァルトは笑った。



 ――やはり、オスヴァルトとの対決は避けられなかった。

 機龍兵の大量爆破の巻きぞえを食らって少しでも手傷(てきず)を負うことを願っていたが、残念ながらそこまで思いどおりには行かなかった。


 正直に言えば、俺の作戦は完全なる愚策(ぐさく)だった。


 機龍兵を壊滅状態に追いこむことはできたとしても、どうしてもレゼルとオスヴァルトが一騎打ちになる状況は避けられないからだ。

 シュフェル単騎で城外に残った敵からの挟撃(きょうげき)を防げる戦略的価値は計り知れないが、それでも、彼女をレゼルに付いていかせたかったのが本音だ。


 彼女たちが一騎打ちで勝てない騎士が敵側にいるというのは、大きな誤算だった。

 それも、ふたりが束になっても手も足もでないほどの龍騎士がいるとは。


 オスヴァルトは鉄炎国家が危機的な状況におちいらない限り前線にはでてこないため、世界には情報が出回っていなかったのだ。


 今回の電撃戦を幹部衆に提案こそしてみたものの、俺は反対されれば素直に引きさがるつもりだった。


 レゼルはエルマさんと並ぶ翼竜騎士団の生命線だ。

 彼女をみすみず死地に(おもむ)かせるわけにはいかない。


 たとえ今回の作戦が駄目になってしまっても、また一から新しい作戦を考えなおそうと、そう思っていた。


 ――ところが、そうはならなかった。


 幹部衆との会議のなかで、今回の作戦に反対する者は誰もいなかった。

 作戦に消極的だったのは俺だけで、いつも冷静な判断を(くだ)すホセでさえ、反対する素振りすら見せなかった。


 翼竜騎士団の誰もが、レゼルを信じていたのだ。

 次にオスヴァルトと相見(あいまみ)えたとき、必ずや彼女が勝利をつかみ取るのだということを。



 レゼルが双剣を(さや)からひき抜くのと同時に、闘技場のなかの空気が揺らめいた。

 エメラルドの光を放つ刀身が、風でそよいだ(あか)りを映して輝く。


 翼竜騎士団の……いや、龍御加護の民の希望を背負って。

 今、レゼルが宿命の敵に立ちむかう。




 初めてブックマーク登録&ご評価をいただけました。

 ありがとうございます、とてもうれしいです。創作の励みになります。

 ひとりでも楽しんでくださる方がいれば、最後までがんばれます……!


 次回は2022/4/23の19時以降アップの予定です。何とぞよろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] あぁ……やっぱりレゼルさんとオスヴァルトの対決は避けて通れない……(;´・ω・) レゼルさん、どうかご無事で……。
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