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【勘違いコメディ】そのワン公、魔力ゼロにつき。  作者: 小春日和
第2章 ワン公、魔法を知る

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ホウキ向かう先にて

職員室。


今日も穏やかな時が流れていた。


学生のいない職員室。


そこには。


威厳など存在しなかった。


リゼリア教授も不在。


職員室にはグレイガルド学長とボイド先生。


そして数名の教師達だけ。


学長は椅子に深く腰掛けながら頬杖をついていた。


「つまらんのぉ……」


ため息。


「ツッコミ役がおらんと張り合いがない」


「のぉ?」


ボイド先生へ同意を求める。


ボイド先生は採点中だった。


「……え?」


顔を上げる。


「私もボケ側なんですか?」


目を丸くする。


心外だった。


「そもそも私、いつでも真面目なんですが」


学長。


聞いていない。


完全に聞いていない。


視線は別の場所へ向いていた。


リゼリア教授の机。


綺麗だった。


整理整頓。


埃ひとつない。


学長はまじまじと見つめる。


「ほぉ……?」


何かを見つけた。


机の上。


銀縁眼鏡。


「リゼリアくんの眼鏡じゃな」


ニヤリ。


嫌な顔だった。


完全に悪ガキ。


ボイド先生。


「変なこと企んでないで書類見てくださいよ……」


「ボーイード先生〜♡」


背後。


ぶりっ子口調。


嫌な予感。


振り向く。


「もーなんですかー……」


そこには。


リゼリア教授の眼鏡をかけたグレイガルド学長。


サイズが合わない。


眼鏡が小さい。


全然似合わない。


沈黙。


「ちょっと……」


「セクハラで訴えられますよ」


呆れ顔。


「ちょっとだけじゃよぉ〜」


ふぉっふぉっふぉ。


学長は楽しそうだった。


だが。


次の瞬間。


「……ん?」


目を細める。


「妙じゃな」


眼鏡を触る。


「この眼鏡……」

「伊達眼鏡じゃな、度が入っておらん」


ボイド先生。

「なんだって!?」


学長から受け取る。


装着。


「あっ」


「ほんとだ」


度が入っていない。


ただの伊達眼鏡だった。


「リゼリア先生も伊達眼鏡するんですねぇ」


不思議そうに呟く。


「知的に見せるためとか……?」


顎に手を当て考える。


学長。


「もしかして外したら目が3になるんかの」


ニヤニヤ。


「そういやボイド先生は全く似合わんのぉ」


「なんか傷つく」


即答だった。


その時。


二人の背後に影が落ちる。


「おい」


冷たい声。


びくぅっ!!!


声に出して驚く二人。


振り向く。


そして。


固まった。


「んえぇぇぇぇぇぇぇ!?」


そこに立っていたのは。


まるで精巧な陶器人形のような女性だった。


透き通るような白い肌。


長い睫毛。


宝石のような瞳。


整いすぎた顔立ち。


柔らかな銀髪が光を受けて煌めいている。


そこにいるだけで視線を奪う。


圧倒的な美。


職員室全体が静まり返る。


誰も目を離せない。


教師達も。


ボイド先生も。


学長までも。


ぽかんとしていた。


リゼリア教授は周囲を見回し。


「あぁ……」


納得した。


ボイド先生から眼鏡を取り上げる。


シュパッ。


そして装着。


一瞬だった。


いつものリゼリア教授に戻る。


全員。


混乱。


「……え?」


さっきの魅力どこいった。


いや。


今も十分綺麗だ。


だが何か違う。


リゼリア教授はため息をついた。


「私、サキュバスの血筋なので」


さらっと言う。


全員。


「「「は?」」」


「この眼鏡で魅力を抑えているんです」


眼鏡の位置を整える。


ボイド先生。

「押さえてこれなんですか!?」

「押さえ切れてないですよ!?」


リゼリア教授。

「そうですか」


学長。

「あー」

「ボイド君も、魅力低下のせいで掛けた時に妙な感じがしたのかのぉ」


納得。


ボイド先生。

「でも学長がかけた時なんともなかったですよ?」


沈黙。


リゼリア教授。


「魅力を最小限まで抑える眼鏡なので」


一呼吸。


「おいぼれ学長には…そもそも抑える魅力が…」


「これ以上は言いませんが」


メガネで遊ばれた腹いせだろうか。


いつもに増して辛辣なリゼリア教授だ。


グサッッッ!!!


HPが一瞬で削がれた学長、地面に崩れ落ちる。


「おい……ぼれ……」


職員室。


今日も平和だった。



その時。


窓の外。


何かが見えた。


小さい。


黒い点。


どんどん大きくなる。


ボイド先生。

「……?」


リゼリア教授。

「ん?」


教師達も気付く。


そして。


声が聞こえた。


「止まらねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」


全員。

「……」


レンだった。


ホウキ。


全力。


一直線。


職員室へ。


窓まで残り数秒。


ボイド先生。

「レン君!?」


学長。

「ほぉ」


崩れ落ちていたはずの学長が立ち上がる。


その瞬間。


空気が変わった。


ふざけた雰囲気が消える。


背筋が伸びる。


瞳が鋭くなる。


威厳。


圧倒的な威圧感。


月詠魔法大学学長。


グレイガルド。


「下がれ」


低い声。


全員が反射的に従う。


杖を振る。


黄金の魔法陣。


職員室全体を覆うほど巨大。


縮地(しゅくち)


静かな詠唱。


瞬間。


レンの身体が黄金の光に包まれる。


「え?」


レンが目を丸くする。


次の瞬間。


シュンッ。


ホウキと共に校庭へ強制転移。


窓まであと1メートルだった。


危機一髪。


職員室に静寂が戻る。


ボイド先生。

「……」


教師達。

「……」


リゼリア教授。

「……」


全員。


感心していた。


切り替え早すぎる。


学長は満足そうに頷く。


そして。


リゼリア教授を見る。


「ほれ」


「わし男前じゃろ?」


ドヤ顔。


さっきまで威厳の塊だった人物とは思えない。


リゼリア教授。


「あーはいはい」


即答。


学長。


「扱いが雑じゃのぉ!?」


職員室に笑い声が響くのであった。

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