合同訓練への招待状
スクランブル騒ぎの翌日。
今日のセイラの訓練は午前中のみで終了。
午後は休みなので、シンノスケとセイラは息抜きに基地のカフェテラスに行くことにしたのだが、偶然にも看護兵のレナが当直勤務明けということで、セイラに誘われて3人での午後の一時となった。
「はぁ~、やっぱりダメダメです。今日も全く歯が立たちませんでした・・・」
午前中の訓練の結果を思い返し、自己嫌悪に陥るセイラ。
今日の訓練はシンノスケを相手にした空対空訓練。
例によってシンノスケは旧型機の上に使用武装は機銃のみというハンデ戦だったが、その結果は5戦してセイラの5敗、挙げ句に1度もシンノスケの背後を取ることができなかった。
「そうは言っても、現実的には上達しているし、悲観するものでもないぞ」
「そうですか?ここまでコテンパンにやられると上達が実感できないんですけど・・・」
シンノスケとセイラの会話を楽しそうに見守っているレナ。
空中戦のことはまるで分からないので2人の会話に混ざることはできないが、聞いているだけでも面白い。
「特に4回目の想定だが、正直、少しだけ梃子摺ったよ」
「・・・そうですか?でも、開始2分45秒で撃墜されましたけど・・・」
「あれは俺が大人気なくちょっと本気になってしまったからな」
「そうなんですか?・・・私的には3回目の方が手応えがあったんですけど。時間も3分52秒も保ちましたし」
「ああ、あれも悪くなかったけどな」
実際のところはセイラに自信を持たせるためにかなり手を抜いていたのだが、その事実は伏せておく。
「クスクス・・・。セラ、他の3回はどうだったの?」
レナの疑問にセイラは渋い表情を浮かべる。
「他の3回は・・・1分も保ちませんでした。特に最後の5回目は・・・28秒で撃墜判定です」
恨めしげにシンノスケを見上げるセイラと、どこ吹く風のシンノスケ。
そんな2人のやり取りをレナはニコニコと見ている。
話題は訓練のことばかりだが、3人共にそれなりに会話を楽しんでいた。
「おっ、こんな所にいたのか。探したぜ」
そんなシンノスケ達に声を掛けてきたのはダグ・ブルーム大尉だ。
背後にいるアニスはともかく、ダグを見たシンノスケの目が三角になる。
「何か用か?」
「セイラ伍長やレナ軍曹はともかく、用がなければお前になんか声を掛けるかよ、シンノスケ」
相変わらず飄々とした態度のダグだが、シンノスケもこれ以上噛み付いても仕方ないと判断したのか、無駄に食ってかかることはしない。
「・・・・なら、さっさと用件を言えよ」
「ああ、前に話しただろう?例の合同訓練のことだけどな、スタア伍長の同行も認められたぞ」
突然自分の名が挙がってセイラは首を傾げてシンノスケを見る。
「中尉、合同訓練って何ですか?」
「ああ、毎年の恒例行事なんだけどな、アザリア空軍との合同訓練があるんだ。毎年持ち回りでそれぞれの空軍基地で行われていて、今年はアザリア空軍のヘリオット基地で行われる。昨今の周辺地域の緊張の影響で訓練の規模は縮小されるが、この基地からはヤン大尉の中隊と、強行偵察小隊、輸送中隊の一部が参加する予定だ」
「あっ、その訓練、隊員さんの健康管理のために私も派遣されるんですよ」
シンノスケの説明にレナが手を挙げ、ダグが頷く。
「まあ、その訓練なんだが、今回は初めて我々外人部隊も参加することになったんだ。シンノスケのZF-A1のメーカーの許諾が得られたんで、俺の機とシンノスケの機が仮想敵機役で参加することになった。その訓練に伍長も同行できないかとシンノスケに頼まれてな、司令部の承諾と、輸送機の席を確保できたから、それを伝えに来たんだよ」
それを聞いたセイラの表情がパッと明るくなる。
「えっ?私も連れて行ってくれるんですか?」
「シンノスケが訓練に参加して、その間伍長だけが留守番というわけにもいかないだろう?合同訓練の見学や他国のパイロットとの交流なんてなかなかできることじゃない。貴重な体験ができるぞ」
「あっ、ありがとうございます!」
思わず直立して礼を述べるセイラにダグは笑顔で応える。
「ああ、シンノスケには感謝しなくていいが、色々と骨を折った私にはしっかりと感謝してくれよ」
「・・・・」
ダグの言葉にシンノスケは何も言わないが、仏頂面だ。
「訓練は再来週の火曜日から5日間のスケジュールだ。部隊の出発は再来週の月曜日、俺達とシンノスケは火曜日の早朝にアザリアに向かう。楽しみにしておいてくれよ」
セイラとレナにだけ手を振ってその場を去るダグと、肩を竦めて笑みを浮かべながらそれに続くアニス。
2人が居なくなるとセイラは改めてシンノスケを見た。
「中尉、本当にありがとうございます。私、凄く楽しみです」
笑顔で礼を言うセイラにシンノスケは少し照れくさそうに頷いた。




