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夜間出撃

「・・・この場合、敵機が単独なら反転して反撃します。複数の場合は撃墜される可能性の方が高いので、敵機から逃げながら援護が来るのを待つか、それが無理なら空域から離脱します。具体的には、十分に高度があるので、高度5千まで降下しながらC2のポイントに退避します」


 今日はシンノスケが要撃待機のため図上訓練を行っている2人。

 机の上に置かれた地図を指示しがらセイラが答えた。


「その判断も悪くないが、C2周辺は地形の起伏が少ない平野部だし、味方の基地から遠い。複数の敵機に狙われたら長くは保たない。加えて、付近には人の住む街が点在している。万が一にも街中にでも墜落したら大惨事だ」

「あっ、そうか・・・そうですね」


 シンノスケはセイラが選択した箇所とは別のポイントを指示する。


「多少の危険を伴うが、急速に反転して敵機とすれ違い、超低空でB5ポイントに逃げ込んだ方がいい。ここは険しい山間部だから、山あいを縫うように逃げ回ると敵機からも狙い辛いから時間稼ぎにもなる」

「でも、険しい山あいを低空で逃げ回る方が難しいです・・・」

「そこは自分の技量を磨くしかないな」

「はい、頑張ります・・・」


 そんなことを話していると、いつの間にか日が暮れた。

 2人揃って時間の経過を忘れていたようだ。


 今日はここまでにしておこうかと思った矢先、遠方で警報音が鳴り始め、続いてエンジン音が聞こえてきた。

 スクランブル待機の格納庫の方だ。


「スクランブルか・・・」


 シンノスケは卓上に置かれた受信機を確認する。

 黄色のランプが点灯しており、第1スクランブルが発令されたことを示していた。


 スクランブル待機の第1編隊が出撃したようだ。

 この時点では要撃待機のパ イロットはまだ行動に入らない。

 第1編隊では対処が出来ず、増援で上がった第2編隊でも足りない時に要撃待機の機に緊急出撃が下命されるのだ。


 スクランブル機が出撃して20分程。

 再び警報音とエンジン音が聞こえてきた。

 卓上の受信機は赤色のランプに切り替わっている。

 スクランブルの第2編隊が出撃したようだ。


 シンノスケは整備班に連絡して出撃の準備を依頼すると、自らも装具を着用し始めた。


「中尉・・・」


 そんなシンノスケを不安そうに見上げるセイラ。

 エアベース23に着任してまだ日が浅いが、その間の経験から自分が居るのが最前線の基地であることを実感しているのだ。


「こういうことは珍しいことじゃあない・・・」


 シンノスケがセイラに説明しようとしたその時、基地内の内線電話が鳴った。

 直ぐに受話器を取るシンノスケ。


「はい、カシムラです。・・・はい・・・了解しました。今回のコールサインはアロー04ですね。了解、直ちに出撃します!」


 直後、連絡を受けた整備班の兵士達がシンノスケの格納庫に駆けつけ、フル装備で駐機しているZF-A1の離陸準備に入った。


 準備を終えたシンノスケもコックピットへのラダーを駆け上がる。


「中尉っ!気をつけてくださいっ!」


 セイラの声に手を挙げて答えたシンノスケはエンジンを始動させると、手順に従って離陸準備を済ませ、機体を滑走路に向けて走らせた。


「エアベース23管制塔。アロー04離陸準備完了。滑走路への進入と離陸許可を求める」

『管制塔了解。先行してカレード大尉のアロー01から03が離陸します。01滑走路脇で待機願います』


 既に滑走路に進入していた第1戦闘攻撃中隊のアッシュ・カレード大尉の編隊が離陸滑走を開始している。

 今回シンノスケはアッシュの指揮する編隊に加わることになるので、先に離陸したアッシュ達を追ってシンノスケも離陸した。


「アロー01、こちらジョーカー、アロー04。これより貴機の指揮下に入ります」

『アロー01了解。アロー04は編隊の後尾に着け

「アロー04了解」

『・・・チッ、今回はお前と一緒かよ。気に入らないな!』


 無線越しに悪態をつくアッシュ。

 アッシュは非常に優秀なパイロットで、エアベース23のみならず、カイル空軍きってのエースパイロットだが、その一方でシンノスケ達外人部隊を毛嫌いしていることで有名だ。

 ただ、嫌っていて、それを態度に表していても、自らの感情と任務にはしっかりと一線を引いており、支障をきたすことはなく、それを理解しているシンノスケもアッシュの言動にいちいち反応することはない。


 シンノスケが編隊に入ると、編隊長であるアッシュが状況説明を始めた。


『アロー編隊各機に状況を説明する。現在、ルドマン空軍機2機が西の大森林地帯の国際空域を越えて我が国の領空に侵入している。既に上がっているスクランブル機がターゲットを追っているが、捉えることができていない。特に損害は発生していないが・・・。ターゲットの意図が分からないが、スクランブルの追撃を躱しながら領空の内側ギリギリを飛び回っている。・・・これは完全に遊ばれているな』


 呆れたように話すアッシュ。

 確かに敵機の意図は分からないが、攻撃を仕掛けてきていないところを見ると、アッシュの言うこともあながち間違えてはいなそうだ。


 それでも何が起こるか分からないので、一刻も早く目的の空域に向かわなければならない。


 シンノスケ達はダイアモンド編隊を組むと西に向かって飛んだ。

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