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それぞれの休日

 セイラの訓練も、シンノスケの外人部隊としての任務も毎日休まずにあるわけではなく、当然のことだが休日もある。

 というわけでシンノスケとセイラは1日の休日を取ることにした。


 シンノスケに休みを言い渡されたセイラだが、休みで自由にしてもいいと言われても、何をすればいいのか分からない。

 当然、飛行学校の時にも休みはあったのだが、日々の厳しい訓練の疲れを少しでも癒すために寮で寝てばかり。

 たまに外出許可を得て同期と外出しても、学校周辺には栄えた街はなく、せいぜい喫茶店や、ひなびた商店街で買い物をする程度だった。


 俗世に疎いセイラは、急に休みだと言われても、何をしたらいいのか分からない。

 教本を読んで自主学習でもしようかと思ったのだが、シンノスケから


「自主学習もいいが、そういったことから離れて休むことも重要だぞ。何もすることがないなら、何もしない、というのも結構良いもんだ」


とアドバイスをされたので、今日1日は頭を訓練から切り離してみることにする。


 シンノスケは朝からふらっと何処かに行ってしまった。

 1人残されたセイラだが、メイファから基地のカフェテラスはモーニングもお勧めだ、と聞いていたので、シンノスケの自転車を借りて行ってみることにする。

 平日の基地の午前中ということもあり、カフェテラス店内の客の入りはまばらで、休みであろう職員がちらほらといる程度。


 席に着いて、メニューを確認してみれば、なるほど、モーニングメニューが豊富で、どれも美味しそうだ。

 メニューの写真を見てあれこれ悩んだセイラは無難なところでミックスサンドとミックスジュースのセットを頼んでみる。

 メニューの写真と説明書きを読めば、卵ペーストとベーコン、レタスとトマトが挟んであり、値段も手頃でとても美味しそうだ。


 しかし、いざ目の前にミックスサンドが運ばれてきたところでセイラは目を疑った。

 見本の写真と現物があまりにも違いすぎるのだ。

 具材も少なく、小さい、のではない。

 その逆で、挟んでいるパンも分厚く、大きければ、中の具材も溢れんばかりの量だ。

 普通のサンドイッチと同じように食べれば、一口で具材の多くがこぼれ落ちることが容易に想像できる。

 

 注文を間違えたのかと思って店員に聞いてみたが、これが標準のミックスサンドなのだそうだ。


「こんなに、どうしよう・・・」


 セイラ1人では絶対に食べきれない量なのだが、食べきれなかった分は持ち帰り用に包んでくれるらしい。

 それならば、と安心して巨大なサンドイッチを四苦八苦しながら食べ始める。


 本来の予定では朝食を食べながら両親への手紙を書くつもりだったが、それどころではない。

 とりあえず、苦労?しながらサンドイッチを一切れ食べ終えた(それでも全体の三分の一程度)ところで、両親への手紙をしたためた。


【拝啓、ご両親様。

 いきなりですが、お腹がいっぱいです。

 基地の中にあるカフェテラスのサンドイッチは逆広告詐欺です。

 って、なんのことなのか分かりませんよね。


 今日は訓練がお休みなので、少しのんびりしています。


 訓練の方は厳しいですが、まあ順調だと思います。

 飛行学校の訓練も厳しいと思っていたけど、あれは基本中の基本で、まだまだ甘かったのだと実感しています。

 

 それでも中尉から褒めてもらえることも多いんですよ(中尉の教育方針は褒めて伸ばすタイプかも)。 

 でも、決して奢ることなく、謙虚な気持ちを忘れずに訓練に当たります。

 そして、研修が終了するまでには1回でもいいので中尉から勝利判定を奪い取ってみたいと思います。


 今日のところはこの辺で。


 お父さんとお母さんの愛娘セイラより。


 追伸、今回同封する写真は防空隊のメイファ大尉と一緒に大尉の愛機の前で撮影したものです。

 カシムラ中尉も一緒に、って誘ったのだけど「俺は写真に写るのが嫌いだ」と言って逃げてしまいました。

 因みに、中尉の趣味は写真撮影だそうです・・・】


 セイラは3日に1度は両親宛に手紙を書いている。

 書くことがなくても、中身の無い文章でも、何かしらを書く。

 基地内には電話もあり、家に電話することも自由だし、近況報告ならそっちのが手っ取り早いのだが、セイラは電話よりも手紙を書き続けている。

 今日も、来週も、数ヶ月後も、両親に手紙を書くつもりだ。



 一方、シンノスケは基地内の医務室を訪れていた。

 定期検査のためだ。


「はい、オッケーです。大丈夫、視力に変化はありませんよ」


 検査を終えたシンノスケは検査用の眼鏡を外して看護師のレナに渡す。


「大丈夫、変化なしって言われても、視力は悪いままだけどね。困ったもんだよ」


 自虐的に笑うシンノスケにレナも肩を竦めて笑う。


「それは仕方ないですよ。でも、視力が低くて眼鏡を掛けていても中尉は凄腕のパイロットじゃないですか」

「凄腕なもんか。ブルーム大尉だの、メイファ大尉なんかに比べると自分が嫌になるよ」

「また、そんなことばかり言うんですから」


 検査は終わったのだが、他に医務室を利用する者もいないので、レナにお茶をご馳走になるシンノスケ。


「そういえば、あの娘、セイラとの生活は慣れました?」


 レナが聞いてくる。


「慣れるもんか。毎日気疲れする。女性用宿舎に引っ越してくれないかな、と思うよ」

「それは可哀想ですよ。知ってます?この基地の下士官以下の女性用宿舎って古くてボロいんですよ。ボロいもんだから半分以上が空き部屋で、部屋が埋まらないもんだから新しく宿舎を建てる計画もない。悪循環です。中尉のハンガーの部屋の方が余程いいですよ」


 かくいうレナ自身は基地の外に部屋を借りているそうだ。

 当直の際には病棟の当直室に泊まるが、普段は基地の外から通っている。

 

「まあ、その気疲れも伍長の研修期間中だけの辛抱だけどね」

「鈍い中尉でも若い子と一緒の生活は大変そうですね」

「鈍いって、そんなことはないだろう」


 シンノスケは肩を竦める。


「パイロットとしては違うでしょうけど、女心に対しては筋金入りの鈍さですよ」 

「そんなもんかな?」

「そうですよ(人の気も知らないで・・・)」


 レナは悪戯っぽく笑った。

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