彼と彼女のあいだ。
「股がかゆい」
そういうと予想どおり彼がぎょっとしたのでとても愉快だ。
「ほら、ここ」
ただれかけた指の間を見せると彼が眉をひそめ、びっくりするほどの素早さで薬を取ってきた。
彼は心配性で、上品で、とてもやさしい。
彼は私の気持ちを知っていて、私も彼の気持ちを知っている。だけど私の気持ちのほうがうんと大きい気がして、ある日ぽろりと彼にそういってしまった。
『僕があなたをどんなに好きか知らないから、あなたはそんなことがいえるんだ』
そういった彼の目はいつもと少し違っていて、私はその目をずっと眺めていたかった。けれど、ゆっくりと彼の顔が近づいてきたので、そっと目をつむった。そうしたほうが欲しいものが得られると思ったから。
私の勘は正しくて、その時私たちははじめてキスをした。
それでも、私はやっぱりその考えを変えられないでいる。
私のなかはあなたでいっぱい。あなたのことがもっと知りたい。
暴きたい、暴かれたい。不埒で野蛮なことをあなたとしたい。
「冬は乾燥するからね」
生真面目な声。彼の温度でぬるんだ薬。肌に触れる指先のやさしさ。
彼によって整えられていくからだ。
湿っていく私のそこを彼はまだ知らない。
2018/12/29投稿