ヒロインは無双したい①
なぜあんなことをしてしまったのか。
後悔は、どんなに経験値やスキルを積んでも起こりうることだ。
叫ばれてとっさにあの場から去ってしまったが、やましいことがないのなら、逃げるべきではなかったのでは。
ロビーを走るレンカの頭を、同じ速度で迷いが駆け抜けた。
自分のゲームを出てからこっち、ろくな展開にならないような気がする。
乙女ゲームなら選択肢を誤ればバックログを巻きもどせばいいが、自分はもちろんプレイヤーではないし、そんな機能は現実にはない。
仮にできたとして、どの地点までもどればいいのかレンカはもはや見当もつかなかった。
とにかくどこかへ隠れなくては。
『関係者以外立ち入り禁止』のプレートが貼られたドアを開け、内側へそっと入り込む。
中は大小の荷物が積み上がった倉庫だった。
無人といっても、いつ誰が入って来るかわからないのでここも安全ではない。
そろそろと足を忍ばせ、壁伝いに進んで行く。
階段裏のスペースを見つけ、すわり込んだレンカは深く息をついた。
(これからどこへ行けばいいの?)
自分のゲームへ今帰れば、警備隊がおしかけ、みんなに迷惑がかかってしまうだろう。
途方に暮れてうつむくと、布の包みがふと目に入った。
そのまま持って来てしまったが、何か固い触感がする。
(なんだろう?)
きつく結ばれた布を開くと、それは手のひらのサイズほどもある二枚貝だった。
ずっしりとした重みがあり、口は閉じられている。
「??」
アイテムが唐突過ぎたため、しばし貝を手にしたまま固まった。
が、突然まばゆい光に襲われ、レンカは思わず目を閉じた。
「いたぞ、あの女だ!」
「武器を捨てろ!」
銃を向けられ、わけがわからず、思わず手を上げる。
その拍子にころころと貝が床を転がり、レンカを囲んだ警備隊たちがいっせいに後退った。
ひとりが恐る恐る長銃で貝をつつく。
「……危険物ではありません。ただの素材アイテムです」
「よし、捕らえろ!」
隊長の号令を合図に、レンカの手首に手錠がかけられた。
「えっ、わたし何も……!」
釈明するひまもなく無情に引きずられていく。
再び静かになった倉庫に、ひとりのスーツ姿の男が入って来た。
彼は貝をひろうと、険しい顔で手の中を見つめていた。




