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二十話 侵入と交錯

カミラの腹案を聞いたクロードとフェイは、カミラたちと別れた。


「クロード、カミラの話、どう思った?」

「作戦自体は博打の面がやや強いが悪くない、怒りと恨みで視野が狭まってはいなかったな。成功すればベンは分からないがパレスは引き出せるだろう」


「どうしてそう言えるの?」

「敵の性格と状況から考えればいい」


「パレスはおそらく自分の力に自信がありプライドが高い人間だ、俺たちはそんな奴の弟を殺し襲撃作戦を失敗させた。ここでフェイに問題だ」


クロードは人差し指を立てる。


「己の力に自信を持ち面子を気にする人間が自分の失敗をそのままにすると思うか?」

「しない、報復する。あっ、カミラの作戦はそういうこと」

「餌の意味が分かったか?」

「ん、罠を張る。クロードが納得した理由が分かった」

「それは良かった、戦いの前に疑問は解消しとくのが一番だ」


二人は離れたところからラポールの様子を伺う。


「入口に用心棒が一人か」

「クロード、私がやる、背中をお願い」

「分かった」


クロードは一歩離れて、フェイの後ろにつく。


フェイは用心棒に話しかける。


「ここがラポール?」

「そうだとしても女のお前には関係ねぇ、中で働くなら別だけどな」

「どういう意味?」


「それは…はぶ!?」


用心棒の男の顔面にフェイの拳がめり込み、男は一撃で昏倒するが倒れる前にその胸ぐらを掴んだ。


そしてそのまま娼館の中へ入る。


「お、おい!、、ぐはぁ!?」


フェイは気絶した男を投げつけ、現れた男を下敷きにする。


クロードはその間に閉店の看板を掛ける。


「フェイ、ここじゃ大剣は使えない、無手で大丈夫か?」

「大丈夫」

「分かった」


騒ぎを聞きつけて、数人の男が集まる。


「なんだてめぇらは!?」


「名乗る?」

「必要ない」

「ん、ただの冒険者」


「冒険者!?」


鋭く踏み込んだフェイの正拳突きが驚く男の鳩尾を直撃し、後ろにいた者たちを巻き込んで吹き飛ぶ。


さらに踏み込んだフェイは手甲で顔面をぶっ叩き、金的を食らわせ、最後に蹴りを入れ、ものの数秒で全員沈めた。


「あっちだ!」


反対側の通路から三人の男が現れ、クロードは素早く弓を構えて矢を放つ。


速射された三本の矢は綺麗に眉間を撃ち抜き、一瞬で三人をあの世へ送る。


「クロード」

「ああ」


クロードはフェイを追うが、曲がり角から人が出てきたので、迷わず脚を射抜く。


「あそこだ!」


フェイとクロードは揃って逃げ、それを何人もの男が追い、正面から武器を持った二人の男が迫る。


「死ね!」

「お断り」


突きを手甲で受け流し、懐に入りながら左拳を左脇腹にぶち込む。


内臓攻撃を受けた男は吐血しながら倒れ、もう一人はクロードの矢を首に受けて倒れる。


クロードは素早く矢を引き抜き、すぐにフェイと共に走る。


足音がドタドタと聞こえ、クロードたちは曲がり角を曲がると、さらに数人が走ってくる。


「クロード、後ろからも」

「そっちは頼む」

「分かった」


クロードとフェイは反対方向へ走り、一瞬で男たちを制圧する。


「な、何者だ、お前は…」

「冒険者だ、下っ端君」


鉄靴で蹴りつけ、気絶させながらトドメを刺し、矢を回収する。


瞬間、鋭く伸びてきた剣の突きを弓の柄で防ぐ。


「なっ!?」

「不意打ちならもっと上手くやれ」


剣を弾き、回収した矢を喉に進呈し息の根を止める。


「頑丈な弓」

「まぁな」


矢を回収したクロードは、周囲の気配を探る。


「一階にいる奴らは全員沈黙させた」

「目的は達成?」

「ああ、カミラたちに合流するか」

「ん」


クロードとフェイの二人は死んだか、再起不能なダメージを負った男たちを避けて、歩く。


「二十人くらいしかいない、数が全然足らない」

「あとは地下だろうな、問題は…「何だこりゃ!?」」


その地下への入口が分からないと言おうとする前に、廊下の先から誰かの声が聞こえてくる。


クロードはフェイに目配せを送り、角から通路を覗くと男がクロードたちが倒した男たちに驚いているのが見えた。


クロードには混乱する男がすぐに近くの部屋に声を掛けるのが見えた。


「フェイ、俺たちは運が良いみたいだ」

「どういうこと?」


クロードは無言で角の先を指さし、フェイと入れ違う。


「あの部屋が地下への入口?」

「おそらくな」


「クロード、さらに二人が部屋から出てきた」

「任せろ」


通路へ飛び出したクロードは三人を視界に捉え、素早く三連射し、仕留める。


フェイはクロードを追い抜いて、走り、クロードもすぐその背を追う。


部屋へ入ると地下への階段が見え、ちょうど階段を登ってきた男と目が合う。


「えひゃ?」


フェイは咄嗟に傍に落ちていた剣を投擲し、倒す。


死体を退けて階段を降りると、一本道の地下通路が目に入ると、矢が飛んでくる。


普通なら驚くところだが、普段からクロードの弓の腕前を見てる身からすると、遅すぎる。


フェイはほんの少し身をかがめて、走る。


頭上を矢が通過し、驚く男たちの顔面を掴んで地面に押し付け、床の染みに変える。


振り向くといつの間にかクロードが後ろに立っていた。


「気を付けろ、敵は待ち構えてるはずだ」

「ん」


二人で一本道を進むと、左右に道が別れており、フェイが一歩前に出ると、右の方からなにか飛んできた。


すぐに反応したフェイはバク転で、一本道に戻り、すぐに轟音が聞こえてくる。


「何かすごいのが飛んできた」

「弓矢じゃない、おそらくバリスタだな」


クロードは話しながら矢筒から矢を抜き、弓に番える。


「危ない」

「いや、フェイ、大剣を投げてくれないか?」

「大剣を?、どこに?」

「そこの壁」

「分かった」

「耳を塞げ」


フェイは頼まれた通り大剣を目の前の壁へ向かって、投げて、耳を塞ぐ。


大剣が壁に突き刺さるとバリスタの大矢が命中し、とんでもない轟音を立てる。


矢を番えた弓を持ったまま両耳を塞いだクロードは、すぐに通路に出る。


バリスタを構える人間を視界に捉えると、即座に射抜く。


さらにその近くにいた数人の男たちが矢を撃ってくるが、クロードは自分に当たりそうな矢だけ、弓で器用に弾く。


「はぇ!?」


驚く男たちの隙を突き、全員の脳天を射抜く。


「クロード、待って」

「どうした?、っ!」


一息ついたクロードの前を出て警告してくるフェイに、疑問を投げるがすぐに警戒する。


通路の奥は大部屋になっており、そこから誰か出てきた。


唾の広いくたびれた大きな帽子を被り、古めかしいローブに身を包み、右手には長い杖を持った女が現れた。


「ん?、クロードじゃないか、何故このような場所に?」

「それはこっちの台詞だ、アレシア」


「クロードが犯罪組織とつるんでるとは…いや、それは無いか」


クロードにアレシアと呼ばれた魔女はクロードの矢が刺さる男たちの死体を見て、自説をすぐに捨てる。


「それじゃあクロードと獣人ちゃんの目的は私と一緒かな」


「クロード、知り合い?」

「一応。前に話したろ、リベルタにいるシルバーの冒険者の一人、《七色カラフル》アレシア・セブンロードだ」

シルバーの冒険者」


フェイは目の前の魔女をじっくりと観察する。


見た目から戦士というのはまずありえない、その手に持つ杖はどうにも武器には見えない。


「へぇ、君のような獣人は初めて見たよ、真っ白い毛並みに青い瞳、もしかして王獣の血筋だったりするのかな?」


どうやらこちらも同じように観察されたようだ。


「アレシア、まず聞くが()じゃないよな?」

「まさか、ここに来たのはある麻薬の流通を止めてくれという依頼を受けたからだよ。そういう君たちは?」


「俺たちはある依頼を受けてここの麻薬製造所を潰しに来たんだ」

「それなら運がいい、もう壊したよ」


アレシアが振り向くと、大部屋の中が見えた。


部屋の中では大勢の人間が倒れており、まるで嵐が吹き荒れたようにものが散乱し、麻薬の原材料と思われるものは燃やされ、麻薬を精製する道具は木っ端微塵に破壊されている。


「そうか、手間が省けた」

「礼には及ばないよ、それじゃあね」


アレシアが軽く杖を振るうと、彼女は忽然と姿を消した。


フェイは驚きで目を丸くする。


「え?、消えた?、どういうこと?」

「相変わらずふざけてやがるな、魔術師って生き物は」

「魔術師?」

「アレシアは魔術っていう不可思議な術を使う奴だ、突然炎を立ち登らせたり、風を呼んだり、雷を落としたり、しまいには今みたいに忽然と消える、常識外の奴だ」

「人間?」

「信じ難いことにな」


化け物にしか見えないアレシアだが、彼女は歴とした人間だ。


「まぁ、あいつの事は置いておこう。上に戻ってカミラたちと合流しよう」

「ん」


なかなか衝撃的だったアレシアとの出会いはフェイは一旦忘れることにした。


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