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戦国爆乳秀吉〜主人公は秀吉を天下人に育てたい〜  作者: 星野林


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亜炭とウィスキー作り

 褐炭があったので、他にも燃える様な物が無いか信長様は部下を使って調べてみたところ、知多半島北部で炭と一緒に燃やすことで炭の節約になる土があると聞き出したらしく、信長様は飛び出して、その土を家臣と共に掘って、袋に詰めて俺の前に持ってきた。


「英聖、何かにこれは使えないか?」


「相変わらず行動力ありますね信長様……どうやら泥炭のようですね」


「泥炭……泥の土ってことか?」


「はい、乾燥させて箱型(ブロック状)にすることで炭の代わりに燃料として使うことができます」


「おお、城の燃料の節約になると?」


「そう便利な物だと良いんですけど、炭に比べると燃焼時間も火力も低いのが特徴でして」


 まず泥炭を乾燥させて燃料として使用できるようにしてもある程度の重さになる。


 産地で使うならまだしも那古野城にただ燃料として運ぶだけならコストがかさんでしまう。


 それに炭は燃焼後に灰になるのに対して、泥炭は不純物が多いため、残留物が多く、掃除の手間も増える。


 戦争で森林資源が枯渇し、どうしてもって場合でなければ泥炭を燃料として活用する必要は薄い。


 まぁ褐炭と違い、泥炭は蒸気機関を動かす燃料としてはギリギリ使えるので無駄ではないけど。


「ん? 褐炭は燃料でも使えないのか?」


「褐炭は火薬に使うように粉末にしていればある程度大丈夫ですけど、乾燥させてまとめて保管していると自然発火する危険性が強くて、これも輸送に向きません。運ぶとしても水の入れた樽に褐炭を詰め込んで常に湿らせておくとか、保存している時も気をつけないと発火するので、両方使いづらいんですよ」


「その言い分だと使いやすい燃える石があるように聞こえるが」


「はい、熊野神宮(三重県南部)がある周辺にはには自然発火しない炭のような黒い燃える石が何処かに眠っていると……それを石炭と言います」


「石の炭だから石炭か」


「はい、加工すれば炭よりも高温で燃焼することができるので、大量の鋼を生産するのに石炭は向きます。また日用的な燃料としても石炭は活用することができるのです」


「ふむふむ……尾張や近場には無いと?」


「尾張でも場所によれば亜炭と呼ばれる低品質の石炭は入手することは可能かと。ただその亜炭は火力が一定まで上がらずに鋼を量産するのには適してませんね。陶器の焼き物の燃料としてや普段使いの燃料としては使えますが」


「場所はわかるのか?」


「一応目星は……泰岳寺(愛知県春日井市にある寺)の周囲で採掘できる可能性が……丹羽殿の所領近くで褐炭が採掘できるってことは、亜炭も採れる可能性が高いので……」


「ふむふむ……なるほどな。泰岳寺は寺でも織田家に友好的な立場を示している。寺領でも燃える石が採れるとなれば利権に食いつくか?」


「とりあえず泰岳寺に使者を出してみて、燃える石を知らないか聞いてみるのはいかがでしょうか?」


「うむ、そうだな……いや、僕が行く。英聖、池田……は奇妙達の育児をしているから……原田や毛利、服部を連れて行こう!」


「今から行くんですか!」


「早いほうが良いだろ! いいから行くよ!」


 信長様は馬小屋の方に走っていき、俺は言われた人員を集めて、信長様を追いかけるのだった。







「なるほど……燃える石ですか……確かに壇家の者が採掘していると聞いた覚えがありますが」


 住職の初老の女性は信長様がそのことを聞いてみると、確かに壇家が採掘して燃料として使っていると教えてくれた。


 ここからは交渉である。


 泰岳寺周辺の土地は寺領と呼ばれて、一種の治外法権となっている。


 織田家に協力する代わりに一種の特権として認められているのである。


 炭よりは安いが信長様が量を買い取るって約束することで、寺側に利を与えつつ、俺たちも纏った量の亜炭が手に入る。


 値段交渉を含めて俺と住職が擦り合わせを行っていく。


「住職さん……ここは信長様の顔を立ててもらって……」


「うむ……」


「こうは言っては何ですが、受けていただけるのであれば、立派な山門を寄進させていただきますが……寺の格が上がり壇家も増えるのでは?」


「うむむ……いや、木下殿でしたっけ、交渉上手ですな。熱田商人に噂になるだけのことはある。そうですね、我々にとっては石ころも同然。それが金になるのであれば周囲の民も喜びましょう」


「寄進は弾ませてもらいますぞ」


「よしなに……」


 交渉成立。


 信長様からは、


「ゲスな会話をしているな」


 って言われてしまったが、これくらいの交渉は安いものだろう。


 林殿が指示出して頑張っている陶磁器作りの弾みにもなるだろうし……。


「こちらは纏った量の亜炭が手に入る、あちらは銭が入る。両方得をしているので問題ないですよ」


「英聖は商人でも天下に名を轟かせただろうな」


「いやいや、今回の交渉も織田家の武力と財力あってのことですから……毛利や服部に原田殿は今回の様な交渉が今後増えていくから頑張って覚えましょう」


 原田殿は魔女の帽子を深く被り直して、


「いやはや、交渉事は大変だぜ」


 と呟いていた。


 そんな感じで纏った量の亜炭が手にはいることになり、織田家で使う炭の量を全体的に減らして節約になったと信長様は信秀様より褒められることになるのだった。


 信秀様だけでなく、信長様の叔母である織田信光殿から、


「もし信長ちゃんが今後当主になったら叔母さんが支えるからね」


 って約束もしてもらえたと。


 普通に大きな後ろ盾である。


 一方で平手の婆様からは勝手に城を飛び出したことを怒られる信長様だった。





「さてさて、泥炭も使い道がないわけではないのですよ」


「前に運搬に向かないし火力が出ないとかボロクソに言ってなかったっけ?」


 俺は那古野城の一角で、信長様、池田、森殿に秀吉ど萌衣姉さんの6人プラス何人かの小姓や侍女が集まって、俺の指示に合わせて装置を組み立てていた。


「実は泥炭を使うことで美味しい酒を作ることができるのですよ」


「ほう……酒ねぇ~」


 森殿が反応した。


 大人な彼女は結構お酒を飲むタイプ。


 美味しいお酒が飲めるなら是非とも作って欲しいって俺に言ってきた。


 ちなみに信長様は下戸。


 飲むと吐くし、気分が悪くなられるので、皆飲ませないようにしている。


 ただ酒が金になることはよくわかっていて、美味しい酒なら家臣に振る舞うにも、商人に売るにも両方良いなって信長様は考えたらしく、那古野城の一角に酒蔵を作ることを許してもらった。


 平手の婆さんは切れ散らかしていたけど……。


「英聖! あなたが突拍子の無いことをやってどうするの! 侍大将なんだから信長様を止める立場でしょ!」


 とのこと。


 いや、競売の商品作るんだから別にいいじゃん。


 一部怒っている人は居るけど、気にしないで酒造りを始める。


 今回作るのはウィスキー。


 メインは大麦を……穀物全般を使った蒸留酒である。


 製造に年単位の時間がかかるものの、成熟させれば極上の酒になるし、米を使わないので周りからの印象も良い。


 日ノ本は酒を作る時に米を使うという考えが強くて、米は兵糧や主食として沢山備蓄しておきたいって武士は思うので、米を使った酒作りは基本寺が行っているのである。


 信長様も米を使わないことで許可を出してくれた。


 使用するのは大麦で、まず大きな樽に大麦を入れて水に浸す。


 水は1日1回交換して、3日ほど寝かせる。


 すると発芽の準備が整うので、レンガで固められた床の発芽室に移動させる。


 そこでレイキ(落ち葉を集めたりするフォーク状の農具)を使って1日数回大麦を混ぜて発芽の際に出る熱を発散させる。


 そしたら発芽した大麦を炉の上に敷き詰めて蒸し焼きにしていく。


 蒸し焼きにする際に使うのが泥炭である。


 泥炭を使うことで味や香りが良くなり、上質なウィスキーへと変質していくのだ。


 それを燻製した大麦を今度は軽く潰して小さく砕き、大樽に水を加え煮込みながら撹拌する。


 煮込みの温度も最初は60度、次は70度、80度と調整しながら上げていき、煮込み終わったら一旦40度近くまで冷やし、そこに酵母を投入する。


 酵母は日ノ本で作れるのだと米麹くらいしか今はないのでこれを使用する。


 味は変わってしまうし、ウィスキー愛好家には怒られそうだが、戦国時代で作るとなるとこれが限界である。


 酵母を投入し、定期的に撹拌しながら3日寝かして、銅製の特製蒸留器で蒸留していく。


 何故銅製かと言うと、熱伝導率が良く、熱を均一に伝えることや、冷却する時にも熱を通しやすいので一気に冷やすことができる。


 元祖の蒸留器は陶器で作られているが、藤原兄弟を動員し、材料の銅もネット通販で用意し、大きめの蒸留器を作り出したのである。


 発酵した酒を熱し、水蒸気になったところを冷やすことで度数を高める蒸留を行うことができ、それを繰り返して70度近くまで上げた物を樽に入れれば完成である。


 勿論樽で熟成しなくても生ウィスキーとして飲むことができるし、俺が度数の高い酒を作りたかったのは、兵の消毒液として酒を活用したかったからである。


 信長様は理解を示してくれたが、戦国時代の常識として、傷口には尿で洗ったり、糞を塗りたくるとか逆に病気に成りに行ってるのを普通に行っているのである。


「強い酒は邪気を祓うから、傷口を酒で洗い、それを綺麗な布できつく縛る。そうすれば膿む確率を大きく減らすことができるから」


「兵の損耗を減らしつつ、酒故に金として売ることもできると……見事」


「ありがとうございます信長様」


 完成した生ウィスキーを飲んで、森殿からは、


「すっごい強い酒ね……クラクラするけど、癖のある香りと味で美味しいわ! これなら人気になるんじゃないの?」


「これを樽で寝かせると、更に味や風味が良くなるんですよ。とはいえ、商人達に試飲させてみて反応を伺った方が良いかもしれませんね」


「じゃぁ次の競売で振る舞ってみるか……英聖、他にも酒は造れるのかな?」


「はい、サツマイモやジャガイモからも酒を造ることができます」


「うん、じゃぁそれも造れるようにしようか」


「わかりました!」


 その後俺は那古野城近くに芋焼酎を造る酒蔵を建てたり、職人の育成に励んだりするのだった。

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