住処の話
月約1万円の8畳1Kで生きている。
言うまでもなく職場が貸し出している寮だ。
若人に昨今不人気のユニットバスだし、風呂場のシャワーヘッドは水が詰まってあっちこっちへいく爆発頭だし、なんだったらキッチンの水場には化石のように固まった水垢がついていてもう取れない。
ちなみに入居時は洗濯機の蛇口がひしゃげていて、業者から「これじゃ取り付けができません」と言われた寮である。そんな、とても愛嬌のある寮だ。
もっと褒めてやると、壁が薄いので斜め上の住人の歌声が人生を彩る素敵BGMになる利点がある。この前は某ミセスのライラックを歌っていた。BGMが選べないのはナンセンスだが、歌っている住人のセンスが良いのであまり気にはならない。隣に住んでいればそれはまた別の話になるだろうが。
さて、こんな住処ではあるが二口コンロを置けることができるのは数少ない美点と言っていい。いや、美点他にもたくさんあるけども。駐輪場に蛾の卵が結構付いてるので最近幼虫がめちゃくちゃ生まれて儚い命を見せてくれて人生を考えさせてくれるとか、そのおかげでいない場所を陣取って駐輪場の場所取り合戦を日に日に住人同士が繰り広げているとかそういう心温まる交流が生まれているという良さげな話はあるのだがいかんせん人を選ぶ。
この寮の数少ない美点は、そう二口コンロが置けるところである。
別に二口コンロを置けと決まっているわけではない。現に一時住居として貸し出している仮住まい用の部屋に置かれているのは備品の一口コンロだし、知り合いも料理は最低限で構わない人は一口コンロだった。だが二口コンロの利点は一口コンロにはないものである。……掃除が楽?
うるさいなそんなの料理好きにとって欠点になるわけないだろこちとら料理できないほうがストレスが溜まるってもんなのよ(怒涛の早口)
二口コンロがあるということはコンロが二口使えるという話に留まらない。コンロが二口使えるし、魚焼きグリルが使えるのだ。魚焼きグリルが使えるとはどういうことか。チルドのピザが焼ける。しかもチーズ増しにして焼くことができる。好きな具材を載せて焼く事だってでき……入らない? 半分ずつ焼いてチンしてカルツォーネにして食べるのが今時の流行りってもんなのよ。しかもパンだって焼ける。朝からサクカリのトーストを食べる事だってできる。目を離すとすぐに焦げちゃうけど。弁当の作り置きのおかずをを作る際に魚焼きグリルだけでおかずを作ることだってできちゃうのだ!…………あ、あれ?
ちなみに私の今日の夕飯はカレーに使う野菜の味噌汁と、鮪の切り落としの漬け丼である。
二口コンロの利点、全く使えてないやんけ。
そんな8畳1Kで月1万円の寮に私は住んでいる。こう見えても、雨風を凌ぐくらいの役に立てるとても良い奴なのよ。
突貫30分工事の代物です。あらはそっとしておいてください。




