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第1話 アルナクの門

東京。


高田馬場の、予備校生向けのワンルームが並ぶ一角の外れ。


羽柴海斗は、

狭い部屋に寝転がったまま、

ぼんやりと天井を見上げていた。


(コンビニでも行くか)


海斗は体を起こした。


一応、受験生ではあった。


けれど最近の彼は、

勉強よりも、

だらだら過ごすことのほうに

すっかり慣れてしまっていた。


コンビニで、

適当に食べ物と飲み物を買い、


海斗は近くの公園のベンチへ向かった。


ぼんやりとベンチに座り、

スマホを取り出す。


そして、何も考えないまま

動画を見始めた。


そのとき、

ひとつのライブ配信が目に入った。


新たな宇宙論の発表。


宇宙そのものも一緒に回っているから、

正しいのは地動説ではなく天動説だとか。


宇宙のエネルギーが、

ある一点に集まっているだとか。


海斗は無表情のまま、

その動画を眺めていた。


だが、次の一言で、

つい笑ってしまった。


『宇宙の中心は、この地球。

そして日本、東京。

中でも特に、高田馬場です』


(地球平面説と大差ないな)


そのとき、

動画の終盤でこんな言葉が流れた。


『本日こそが、

宇宙のエネルギーが集まる日なのです』


(何だよ、終末論の配信か?

最近は金を稼ぐのも大変なんだな)


『宇宙の中心で、

新たなビッグバンが起こります』


海斗は興味をなくし、

動画を閉じた。


「ふう。

そろそろ帰るか」


彼はベンチから立ち上がった。


――そのときだった。


(ん?

何だ?

急に夕立でも来るのか?)


空が、光った。


どんっ。


雷のように見えた。


だが、どこにも

雷が落ちた形跡はなかった。


その代わりに、

海斗の体が背後から引っ張られるように、

ふわりと宙へ浮き上がった。


「何だよ、ちょっと――!」


次の瞬間。


海斗は、足元が抜けたかのように

真下へ落ちた。


街が遠ざかっていく。


光も、音も、

まとめて引き裂かれていく。


そして彼は、

闇の中へと吸い込まれていった。


◆◆◆


「ぶはっ。

何だよ、これ。

水……?」


一寸先も見えない闇。


果てしなく広がる水面。


そして海斗の目の前で、

ゆっくりと立ち上がっていく

巨大な水柱。


――よく来た。

 宇宙の中心より来た訪問者よ。


(いったい何が起きてるんだ?)


――長く待っていた。


――お前たちの時間で言えば、

 およそ百三十八億年。


意味のわからないことを言う

何かがいた。


(誘拐?

幻覚?

それとも、悪質な宗教団体か?)


海斗はあたりを見回した。


(逃げないと。

でも、どこへ?)


――ここはアルナクの門。


――世界の種が作られる場所である。


その瞬間。


海斗の頭の中へ、

膨大な情報が流れ込んできた。


星の誕生。


時間の流れ。


エネルギーの法則。


生命と世界の構造。


常識が、

一瞬でひっくり返った。


(俺が種になって、

新しい世界を作る……?)


水柱が問いかける。


――お前は、どんな世界を望む。


海斗は、

すぐには答えられなかった。


どれほどの時間が流れただろう。


いや。


この場所には、

そもそも時間という概念すら

存在しないのかもしれない。


(俺が作る世界……)


自分が創造神となり、

世界を作る。


(……面白いじゃないか)


まともに生きてきたわけでもない。


大した人間になれる自信もなかった。


いつも誰かの作った基準に、

ただ振り回されるだけだった。


そんな自分の前に、

何でも描ける

真っ白な画用紙が差し出された。


海斗は、ゆっくりと笑った。


「いいだろう。

やってやる」


その瞬間。


海斗の意識は、

創造の次元へと移っていった。


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