事前告白
自分と有明は、三人分の布団を敷き、寝る準備をした。自分たちは電気を消して、寝床に着いた。
「なあ、赤神帰って来るかなあ。」
「さっき、先生の部屋の近くを確認しに行ったら、とんでもない怒号が響き渡ってたよ。」
赤神よ、卑怯とは言うまいな。
自分はそんなことよりも押し入れで盗み聞いた話が気になっていた。
「なあ、自分が一星に好かれなかった原因って何だと思う?」
「……。」
自分は有明に一星の気持ちについて、どう思っているかを暗に聞いてみた。有明はその自分の思惑に気づいたのか、その質問に答えることはなかった。しばらく、部屋の中は静かになった。その静かさの中、玄関の扉が開く音がした。
「……酷い、酷い。俺だけ怒られるなんて……。」
部屋の電気が点いて、照らされたのは、やつれた赤神の顔だった。
「自業自得って言葉知っているか?」
「いざとなれば、二人を突き出して逃げようとしたのに、そんなことってあるかよ。」
自分もあの時の行動はクズと思ったが、赤神はそれ以上のクズだった。
「まあ、ゆっくり休めよ。修学旅行はまだ明日もあるんだから。」
「俺には、明日がねえよ!生きていける明日がねえよ!」
「……。」
「また、学校休もうかな……。」
「自分はお前の友達でいるよ。きちんと悪いことには、罪を償わせる友達にな。」
「俺もそれになっていいか?」
「証拠がない。」
赤神は悔しい顔をして、勢いよく、寝床に入った。自分はもう一度、電気を消して、布団の中に入った。
自分は目を閉じて、眠気を待った。
明日、どうなるだろう?
赤神はおしまいなことは目に見えているが、大事なことは、一星と有明のことだ。一星が有明に告白したところで、きっと有明が断ることになるだろう。
だが、きっと一星もそれを覚悟して、告白するはずだ。自分がどうするわけでもない。それに、自分が有明に何かを言ったところで、有明の気持ちを変えることはできないだろう。
そうやって、人の恋路を勝手に想像し、余計な心配をしながら、ゆっくりと眠りに落ちていった。