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覗きの末路

「あれ、こんなにカーテン開けてたっけ。」

「……覚えてないなあ。」

「気のせいか。」

 多分、気のせいではないと思いますよ。押し入れの中で、息を殺しながら、女子達の話を聞いていた。この部屋は、水上と一星ともう一人、陽キャっぽい女子の三人だったはずだ。


「まあ、やっぱり、修学旅行の夜と言えば、コ・イ・バ・ナだよね!」

「そうなの?」

「そうに決まってんじゃん。まあ、沙羅ののろけ話は聞きたくないから、輝璃から聞いちゃおっかなあ。ずばり、好きな人誰ですか?」

「……。」

「陽菜、輝璃が困っているじゃない。こういうのはねえ、言い出しっぺが先陣を切るものなのよ。」

「……。」

「何?黙りこくっちゃって。喋れなくなっちゃった。ほらほらほら。」

 そう聞こえると、床を叩いて、笑い転げる声が聞こえた。


「ちょ……w、やめ…www、てええ、言うから、言うからやめて。沙羅~。


 皆見君、皆見君。」

「えー、つまんない。皆見なんてベタ過ぎない。もうちょっと面白い人好きになりなさいよ。杉山とか、山瀬とかさあ。そしたらあなたの好きな恋バナってやつも盛り上がるのに。」

「だから、あんまり言いたくなかったの。


 そんなことより、輝璃よ、輝璃。きっと輝璃は面白い人を好きになっているんじゃない。体育祭の件もあるし、もしかして……。」

「……。」

「何その無言?もしかして、あの人のこと好きなの。」


 あれー、それって誰だろうなあー。


 もしかして、体育祭で二人三脚を一緒にやった人じゃないでしょうね。一か月以上、肌を寄せ合い、心を通わせて、息を上がるくらい運動した相手がいたなあ。確かに、あれだけ、一緒にいて、好きにならない方がおかしいよなあ。


「実は、この修学旅行中に、思い切って告白しちゃおうかなと思っているの。」


 面白いことになってまいりました~~。


 この押し入れ開けて~。その中に、君の意中の人いるよ~。むしろ、こっちから開けるか。


「えっ、輝璃の好きな人って、やっぱり、発地なの?」


 キイチャッター---。


 どうしようか。モノマネ番組のご本人登場みたいに、堂々と出ちゃうか。そうしよう。自分は暗い押し入れの中で、身だしなみを整えた。


「いや、私が好きな人は、発地君じゃなくて……有明君。」


 えっ、


「あっ、そっちね。そっちの方がいいわ。ましまし。」


 えっ、


「でも、有明は難しいんじゃない。」


 えっ、自分でない。


 自分は、暗闇の中で微かに見える人影を見て、拳を握った。自分はその握った拳をその人影に振り抜いた。


「痛っ。」

「えっ、なんか押し入れの方から声しなかった?」

「確かにしたかも。」

「あれじゃないかな。あのー、この旅館は壁が薄いし、隣の部屋の声が聞こえたんじゃないかな。」

「そうかなあ……。」

「じゃあ、うるさいし、ベランダから隣に注意する?」

 そう聞こえ、しばらくすると、ベランダの方から窓が開く音が聞こえた。その後、甲高い女性の叫び声が響き渡った。


「どうした……。」

 また一つ、叫び声が聞こえた。


「人が……干されてる?」

「先生を呼んできて!輝璃。」

「ちょっと待って、先生は呼ばないでくださいイイ。」

「……もしかして、その声は赤神?」

 まだ、引っ掛かっていたのか。


 しばらくすると、玄関の扉が開く音が聞こえた。自分は少し、押し入れの扉を開ける。部屋の中には誰もおらず、ベランダの方に尻もちをついた水上ともう一人の女子の手が見えた。


 自分は意を決して、押し入れを飛び出した。


「大丈夫か!」

「えっ、発地?」

「隣の部屋から叫び声が聞こえたから、何事かと思って、急いで駆け付けたんだ。」

「それが、赤神が干されてて……。」

 自分は腰の抜けた二人を通り越して、ベランダに出た。そして、壁から出た太い足を思いっきり引っ張った。引っ張ると、赤神の胴体が出てきた。赤神はベランダの床に叩きつけられた。自分は赤神の胸ぐらを掴んだ。


「赤神、何してる?」

「えっ……」

「お前、女子の部屋覗こうとしていたのか?」

「えっ……」

「最低だな、そんなに壁まで登って、女子の部屋に入ろうとするなんて、キモいぞ。」

「えっ……」

「女子の部屋に入って、何が楽しいんだよ。見てみろ。二人とも震えているじゃないか。お前が傷つけたんだよ。」

「えっ……」

「分かってんのか。一人でそんなことしやがって。ふざけるな!」

「えっ……」

「もういい。先生の所に一緒に行こう。自分にも責任があると思っている。一緒に自首しよう。」

「えっ……」

「行くぞ。」

 

 自分は呆然とする赤神を立たせて、ベランダから部屋の中に入った。


「おっ、有明も来たのか。赤神がやらかしたみたいなんだ。自分が先生の下へ連れて行くから、部屋に戻っておいてくれ。」

 自分は有明に鍵を渡した。自分は赤神を連れて、部屋を出た。すると、一星が先生を連れてきていた。


「この馬鹿野郎が女子の部屋を覗こうとしていました。叱ってやってください。」

 自分は先生に赤神を引き渡した。先生は明日話を聞くかもしれないと言って、赤神をどこかに連れて行った。



 よし、寝るか。

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