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獣の境界線

 ガチャ


 自分は有明に腕を掴まれながら、一星や水上達の部屋の鍵が開く音を聞いていた。扉が開き、出てきたのは、鼻の下を伸ばし、不敵な笑みを浮かべるむさくるしい男の顔だった。赤神は女子の部屋に鍵がかかっていることが分かると、簡単に諦めることをしなかった。なんと、ベランダを区切る高い壁をよじ登り、隣の部屋に移動した。そして、どうやら窓の鍵はかかっていなかったようで、今、扉が開いてしまったということだ。


「やべえぞ。やべえ、発地。俺に鼻と目があって、良かった。」

 赤神は、口から出たよだれを手でふき取り、息を荒くして言った。分かる、この部屋と廊下の境界線が人か獣化を分けている。今、この廊下では、理性が保たれているが、部屋に入ってしまった瞬間に、目の前にいる獣になる。理性が欲に食われた獣に。


「有明さん、君もこうなりたいのかい?」

 自分は目の前の獣を指さして、そう言った。すると、有明は赤神に聞こえないように、耳打ちをしてきた。


「びびってんの。」

 有明、お前そんな奴だったんか。


「びびるかよ。女子の部屋でも、牢屋でも入ってやるさ。」

 自分は人の境界線に大きく一歩踏み出した。自分の右足は女子の部屋の中に入っていた。なんだか、境界線内に入った右足だけぞわぞわしてくる。ゆっくりと部屋の中へ体を移動していくと、右足から始まったぞわぞわは、全身に伝播していった。背徳感からくる体の興奮に、体温が上がっていくことを感じた。


「部屋に入った程度で、頬を赤くしているようじゃこの先大変だぞ。」

 赤神はそう言うと、自分の手を引っ張って、部屋の中へと連れだした。


 玄関を抜けると、そこは花園だった。


 微かに香るいい香り、わずか三時間ほどの滞在で、これだけの香りをマーキングできるものなのか。自分は鼻呼吸を深くした。嗅覚の次に働いたのは、視覚だった。


 部屋の中には、綺麗に畳まれた服が入っている旅行カバンと服が投げ入れられたかのように、詰め込まれた旅行カバンなどが置かれている。カバンから読み取れる対照的な性格が……


 いいねえ!


 布団の方に目を向けると、三つ布団が敷かれており、一つは綺麗なままで、一つは少し、布団がしわになっている。そして、最後の一つは布団が大きくめくれ、布団が重なり、山になっている。この布団の湾曲から女性の滑らかな体が想像できる。


 いいねえ!!


 スゥー


 いいねえ!!!


「同士よ。直接的ではない、間接的な女子の良さが分かったか。」

「再確認した。」

 赤神はうんうんとうなづきながら、肩を叩いた。


「捕まるときは一緒だ、発地。」

「おう!」

 自分は赤神と握手した。そうしていると、玄関の方から有明が入ってきた。


「おーい、女子帰ってきたぞ。」

 それを聞いた赤神は、目にもとまらぬ速さで、ベランダに飛び出し、壁をよじ登った。自分もそれに続こうと、ベランダに飛び出すが、赤神が壁の上でつっかえていて、上ることができなかった。自分は赤神の足を押す。


「早くいけ、捕まっちまうだろ。」

「俺だけは助けてくれ、発地。俺はまだ前科を付けたくない~。もう少し、善良な市民でいさせてくれ~。」

「捕まるときは一緒だって言っただろうが。」

「そんな訳ねえだろ!」

 赤神は足をばたつかせ、自分の押し上げる手を攻撃してきた。


「お前らが捕まっている隙に、逃げるから、自首してこい、発地。」


 クズ豚が。


「諦めて、ここに隠れよう。」

 有明は押し入れの中を指さしていた。自分は赤神の後に続くよりも、押し入れでやり過ごす方が良いと即座に考えた。女子達が寝た時に、こっそりと抜け出せばいい。まさか、ずっと起きて居たりはしないだろう。

 自分はベランダから出て、窓を閉めて、押し入れの中に飛び込んだ。その後、有明が入り、中から押し入れを閉めた。ちょうど押し入れを閉め終わった瞬間、部屋の扉が開く音がした。


「ふうー、いい湯だったねえ、輝璃。」

「そうだったね。沙羅ちゃん。」

 玄関の扉が閉まる音が聞こえた後、部屋に何人かが入って来る足音がした。


「よし、今夜は寝かさないよ~。やっぱり、修学旅行の夜は朝までオールだよね!カフェインきめて、目を覚まそう!」



 \(^o^)/オワタ

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