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弟子が出来ました

「お姉さま、あの病気持ちの汚物追い出したほうがいいですわ」


「全身から隠しきれない加齢臭まき散らしてるババアに言われたくありません。そもそも病気なんてないし」


この二人の仲は最悪だ。ここまであわないのもすごいと思う。


なので、会わせないようにしているのだが


「とりあえず黙って。今日は二人ともいない方がいいんだけど」

「…なんでですか?」

「お姉さま、あの女は…」

「才能があればなんでもいいのよ」


今日は弟子候補と会う。おっさん曰く

「弟子を育ててほしいんだ。一人ですべてを担うのは無理だ。飽きられてしまうからね。少しセーブしたほうがいい」

だそうな。

で、その弟子とやらが


「すーぱー性格悪い問題児ですよ。高屋敷って」

……

「性格最悪なあなたが基準だからむしろいい人なのでは?」

「…黙れ。そしていなくなれ」

実際評判は悪い。でも彼女の歌詞は本物だ。

弟子などおごがましい。

だが作曲センスはない。そのあたりだろう


とりあえず二人を追い出して待っていると

「こんにちわ」

「ええ、こんにちわ。高屋敷さん」

にこにこ笑いながら。

しかし待たせておいて堂々としているあたり、芸能界の人だな感。


「先に本題からお聞きしたいのですが」

「どうぞ」

「私、男の人が好きなんです」

「そう」

「がっかりしないんですか」

「知りもしない女の身体目当てで弟子をとろとか、なかなか想像力が豊かね。作詞者向きだわ」


「ほかに理由がわからなくてですね」

「おっさん…社長が目をつけたのよ。あの人の目は間違いないわ。私もあの人に拾われたし」

「ほほう、身体を売る先は社長でしたか」

「あなた、自分の作詞の才能に自信がないの?」

ここまで代償にこだわる理由はたぶん自信だ。


「…そうは言いませんが、弟子とかいうのは色々気になりますし」

「使えるものは黙って使いなさい。それと、自分の才能に自信を持ちなさい。原石ですらない。陽に当てれば勝手に輝くわ」

「…本気にしていいんですか」

「ええ」

「そんな才能があるなら、弟子とかではなく…」

「陽にあたろうともしないどころか、自分から埃かぶって隅っこで寝てるやつ、引っ張り出してなんとかするしかないでしょ」

「うまい言い回しですね」


「作詞家が本業なんだから言葉遊びは常に考えて」

「…本業?」

「作曲もやりなさい」

「…まじですか?」

「できるわ。そもそも作詞だけなら、あなたの言うように弟子とかやりすぎなの。あなたは作曲の弟子。ついでに作詞も口出すけど」


「…そうですか。いろんな疑問点が解決しました。師匠、よろしくお願いいたします」

「ええ。よろしくね」

「…本当に、身体は…」

こだわるなぁ。しかし、さらっと流したけど、私が女好きというのはもう常識なのか。


「…鈴とかだから、好みは」

「…ああ、確かに方向性は違いますね」

安心したようだ。しかしそれで納得するのか。まあ、やりづらいよりよっぽどいい。

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