大学生活の始まり
「約束は果たしたいと思っています」
「そ、そうですか!」
ジェネシスの新しい担当の方の顔が明るくなる。
「…あの、ここまで聞くのはあれなんですが、契約が終わったら移籍されるおつもりで?こちらとしては…」
「いえ、そのつもりは、今はありません。少し勉強をしたいと思いまして」
「…勉強、ですか」
「ええ、私は作詞の才能に劣ります。これは人生経験と知識が足りないからだと自覚しています」
「…なるほど」
「とりあえずは約束を果たします」
大学入学。
それまでに約束を果たすという目標でがんばって、見事にできた。
すがすがしい気分。
今日から私は新しい自分として頑張るのだ。
内気な美佳とも、アナーキーで暴君なSINOともお別れ。
今日からのわたしは…
「…うん、なになるのだろう」
大学生活、内気な美佳は、孤高の美佳になっていた。
要はぼっち。
サークルにも入らず、淡々と授業を受ける私。
ファッションがファッションだからか、話かけにくい気がする。
なにしろ高級ブランドで固めているのだ。
こうすると軽い男から声がかけられにくいと聞いたら、本当にそうでした。
軽い男というか、誰からも声かけられない。
良いことだ。
そんな日常のなか、帰り道
「や、やめて、ください」
「いいじゃん、環ちゃん」
「そうそう、みんな待ってるし」
無理矢理車に乗せようとする男たち。
嫌悪感。
私は下手すると輪姦されて廃人にされていたのだ。
哉がなにをもくろんでいたのかは知らない。
だが、たぶん脅して、言いなりになれていただろう。
あの嫌悪感のまま、ずんずん進むと
「やめなさい!」
環と呼ばれた女性の手をつかみ抱き寄せる。
「な!?」
「なんだおまえ!?」
これぐらいではひるまない。
なにしろこっちは、ガチの犯罪者集団とやり合ったのだ。
「通報されたいの?」
にらむ
「…やめようぜ、今日はな」
「ちっ」
男たちは引き下がる
そして
「あ、ありが、とう。ございます」
環と呼ばれた女性が頭をさげる。
「い、いや、でした。た、たすけて、くれて」
「気にしないで。」
「…、…」
ぎゅーっと抱きしめてくる。
……
「あの」
離れない。
互いに無口なのでずーーーっと続く。
「帰りたいんだけど」
…
「わ、わわ」
離れる
「じゃあね」
「は、はい。また、明日」
このあたりが「記念告白のくせに生意気だ」で描写された、SINOのぼさぼさへやー時代です。




