人生最大の危機
翌日、学校の帰り。そのまま家に帰ろうとした帰路。突然だった。
「え?ええええ!!!!????」
突然車の中に引っ張られる。
いつから待ちかまえていたのか、まったく気づかなかった。
「こいつ?」
「間違いだったらまたやればいいだけだ」
「騒がせるな、弛緩剤を打て」
注射器をかざされる。
車の中には三人組の男。混乱の中、私の頭がフル回転。
「あなたたち!哉の依頼!?」
はったりだ。しかし
「なんだ。ばれてんじゃん」
「あいつ、なにやってんだよ」
「…気を取られるな。早く打て」
今回はおっさんとカゲさんの助けは見込めない。だったら自分だけだ。救えるのは
「買収されませんか!?」叫ぶ
「…買収?」
「私お金持ちです!」
「…まあ、そうかもな」
「6000万なら即決で出せますよ!お札ではなく、金塊ですが!」
「…本気で言っているのか…」
「家に今あります!私にとってはまた稼げばいいだけのお金。レイプされて、人生台無しにされるぐらいなら、そっちの方がいい!!!」
顔を見合わせる
「…信用できない」
「家まで案内します。一緒に部屋に来ればいい。騙したら襲ったらいいでしょう。私みたいなのでは抵抗できない」
「…いいだろう。案内しろ」
「おい、マジか!?」
「気に入った」
「…おまえがそういうなら」
「じゃあ、案内します」
金塊は冗談で買ったものだった。資産分散という名目で。まさかこんな時に役にたつとは。
「一人きてください。私の腕力では一度に運べません」
「いいだろう。カツ、行け」
「あ、ああ」
不審げな顔でついてくる。幸い両親はこの時間いない。
そして「これです。金塊を指さす」
「ま、まじかよ」
「もてるだけ。もってください。母が帰ってきたら、説明できません」
「わかった」
車に戻ると
「く、くくく、ハハハハハハ!!!」リーダーらしき人が笑う。
「マジか!本当に家に金塊があって、それを差し出すのか!!!気に入ったぞ嬢ちゃん!俺たちはおまえの味方だ!!!買収の件了解だ!後のことはまかせろ!」
そしてメモになにかを書く。
「困ったらここに連絡いれな」
「通報するとは思わないんですか?」
「俺はおまえが気に入った」
そういうと、そのまま去っていった。
すぐ電話。警察にではない。おっさんにだ。
「どうした?電話なんて珍しい…」
「襲われた」
「か、かなか!?」
「本人じゃない。哉が雇った連中」
「ど、どうなった、いまは!?その」
「買収した。私は無事」
「…買収?」
「金塊やるから買収されろ。と叫んだら応じてくれた。6000万円分やられたけどね」
「…ま、まじか…」
「哉を拘束して。あいつ、やられるよ」
「わかった」
「事務所に行く。もう家ですら安全じゃない」
「ああ」
入り口につくと
「SINO,よかった!!!!」
カゲさんが抱きしめてくる。
「カゲさん…」
「すまなかった。想像力が足らなかった。許してくれ。でも、よかった…」
「うん、カゲさんのおかげだよ」
カゲさんがあそこまで注意しなかったら、パニックでなにもいえなかった。感謝。
「…哉は繋がらん」
おっさんも来る。
「…あいつは殺されても仕方ない」カゲさん。
「…わたし、わたし…」
おっさんの顔を見て、安堵したのか。
急にこみ上げる嘔吐感
「お、おえぇぇ!!!!!!!」
あまりの出来事に、ようやく脳が動いた。
下手するとレイプされていた。
廃人にされていた。
ギリギリだった。
嘔吐。
胃の中の物全て吐き出すような、嘔吐
「SINO…」
「いたましい…」
吐いた私を、二人の大人はただ見守ってくれた。
「あ、あああああああ!!!!!!」
涙が止まらない。
私の中のなにかが一個壊れた。




