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仙人天  作者: 天内君保
第一章「第二波」
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障壁覚醒

次の朝。


朝食を済ませた後、白根は少し難しい顔をしてから、みんなが外へ出るように命令する。

外で何かをするのかと思いながら4人は外へ出ると、目に飛び込んできた光景は想像を越えるもので

雑草が生えていた広く何もなかった場所には武器のような物を持った兵士らしき男達が数人立っている。


「もしかして、騎士団…?」


その男達の近くには下半身は埋まってしまいそうな穴が4つ。

多少の不安を感じながら、一歩二歩と近づこうとしてもすぐにみんなの足は止まり

紫苑と仙は少し前屈みになりながら、その光景を早く理解しようとする。


「掘ったのか?」


「まさか、いきなり戦えとかじゃないよね……」


手に持っている物をよく見ると持つ所が長めで、遠目ではメイスに見えてしまうようなスコップだった。

その光景を少し離れた場所で見ていた白根は仙達に近づいて来る。


「奇士はあそこにいるよ、呼ぶか?」


「あ、見つけた」


奇士が目に入ると紫苑と仙は手を振ったり、上げたりすると。

奇士のほうも気づいたようで表情を緩ませると小走りで近づいて来る。


「来ましたか、皆さん」


猛とも仙の横に並ぶ形になって、奇士の言葉が気になっている様子。

奏は後ろ側にいて集まる形にはなれていないが、話が気になるような視線を送る。


「……今日はね、次の課題ということで騎士団の方々をお呼びしてこのような形にしました」


「あの穴は何かを埋めるのか?」


「落とし穴、ですか……?」


仙の隣で猛は考え事をするような仕草でそう聞くと、奇士は多少答えづらそうな雰囲気を醸し出してもう一度その場を振り返って。


「あ、埋めるというか 埋まっていただくといいますか……」


その言葉でようやく理解できたのか、皆は目を丸くして流石の奏も近づいてきて難しい顔をする。


「え、嘘でしょ? あの中に……私達がってことだよね」


「そうなります」


「勿体ぶってないで話したらどうじゃ奇士。 お前達にはな、あの穴に入り、下半身は動かず上半身のみの状態で、あの騎士団達の攻撃を防いでもらう」


白根の全く躊躇いの無い言葉は、皆の頭に正しい形では入らず、もう一度個人が頭の中で復唱するように数秒間があく。

そして、集まっていた騎士団はここで作業を終えたのか、仙達を見ると揃って頭を下げる。

この言葉の後では、躊躇してしまい軽く会釈をして。


「えぇ……」


「防ぐって、なんだ」


「盾は一応用意しておる」


「……でも凄く危ないことになるんじゃ。 私達、そんなに訓練も受けてないしさ、力の使い方もまだ……」


「それを今からやろうと言うのじゃ。力の使い方を知らぬのなら尚更、やってみなくては分からん」


奇士は白根の隣に並ぶ形になると、仙達へ正面を向いて真剣な眼差しになる。


「今回の課題はいよいよ僕達、ユーベルメンシュとしての力が試される場です。 勿論、明確な能力を持たないあなた達にとって、突然のこの場は酷な物に成り得ます」


真剣な奇士の言葉と視線に、皆は息を飲んで聞き入る。

奇士は丁寧に一人一人、言葉を伝えようと視線をそれぞれに合わせながら。


「ですから、無理強いはしません。初めてお会いした時にも言いましたが、覚悟が無いと難しい。それはこの現場を見れば分かるはずです」


奇士はそう告げると、皆の反応を待つように表情を確かめる。

口元を閉じる力を強めながら、反らすことのない姿は奇士も含めた全てが一致した様子で。


「覚悟はできてるよ」


「だけど、正直、出来るかどうかは分からない」


「何かの能力を目覚めさせる場、そういうことですか?」


紫苑の正直な言葉。

猛の言葉に大きく頷くと。


「察しがいいですね。ここでは、防御能力の覚醒。言い方を変えればバリア能力の覚醒を促そうとしています」


「障壁といったり、人によって言い方は様々ですが根本的なものに違いはありません。上手に扱えるようになれば、防御力の著しい向上が見込めます」


「……奇士の言葉に付け加えて言っておくと、バリアは扱えるのが大前提じゃ。これを扱えなくば話にはならんぞ」


バリア能力という聞き慣れない、もしくは初めて聞く者もいるであろう言葉に、皆の体には一層緊張感が押し寄せる。


「どんな時に扱う力なんだ?」


「時と場合に応じてではなく、常に張っているものですね。いつ何時、何が起こるか分かりませんから。……こう見えても軽くですが、張っていますよ」


「そ、そうだったのか……」


仙は驚いた様子で目を丸くすると、奇士の全身を改めて眺める。


「目ではっきりと確認出来るものではありませんからね」


その言葉を聞いた猛は、近より難い何か、異様な雰囲気はその能力の為だったのではないかと訪ねる。


「まず、一度お見せしましょうか。どういったものなのか」


奇士は騎士団の方を向いて右手を上げると大きな素振りで手招きをしたり、人差し指を一本伸ばして「一人でいい」と合図をする。

だが、騎士団側は誰を呼んでいるのか分からない様子で慌てながらも、割と大柄な騎士が一人出てくると

奇士はそちらへ近づいて仙達からよく見える角度で騎士と向かい合わせになる。


「思いきり、お願いします。たぶん思ってる以上に固いですから、体を痛めないようにしてくださいね」


奇士は向かい合わせになってる騎士にそう言うと。

少しだけ動きはゆっくりになり、躊躇いの感情が見え隠れするが長い槍のようなものを構えて

奇士の胴体を狙うように、少しだけ体勢を低くする。


「どこでもいいですよ」


奇士がそう言った直後、不意を突くように放たれた刃は奇士の体に触れるかに見えた。

仙達は騎士の意表を突いた動きにすら反応が難しく、驚いた者はここで声を出す。

分厚い金属の壁に衝突したような高い音をたて、奇士は立ったまま何の動きもしていない。

騎士が腕を伸ばして突き当てた槍、時間差で腕を落とし、膝を付けば腕を痛めたような仕草をする。


「大丈夫ですか?申し訳ありません……。少し力が入っていたようですね」


奇士は踞る騎士の肩に手を置き、思った以上に痛めた仕草をしている相手に心配の表情を向けながら何やら話をしながら立ち上がらせてやる。



「……………」


「何をしたの?刺さったように、見えた」

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