一方その頃
「はあ……、私、ここで何やってるんだろうなぁ……、しおりの居ないここの部活なんて興味ないのに」
第五中学の卓球部で私はため息をつきながら卓球台の準備をしていた。
私は北園中学から県を跨いでここ、第五中学校の部活に顔を出している。
理由は一つだけ、東京に旅行にいってるしおりに頼まれたからだ。理由なんてそれだけで十分すぎる。
「葵ちゃん、毎週お手伝いありがとう!すっごい助かってるよっ!」
私のボヤきを聞いていたのか、あかねちゃんがすっと台の準備を手伝おうとしながら、話しかけてきてくれる。
気心のしれた友人が、ここ第五中学校ではあかねさんしか居ないから、私はそれが嬉しかった。
「しおりの頼みだからねっ!部長とマネージャーの兼務は大変だろうし、……青木姉妹が手伝いに来ているみたいだし」
青木姉妹の話をするだけで、声のトーンが意識せずとも下がってしまう。私は彼女たちが許せていないのだ。
姉の青木桜はまだいい、彼女は高校二年生になってもまだ、自分の練習もあるだろうに、ゆかりがあまり無いここの卓球部の指導をしてくれている。
実力は全国レベル、人柄も悪くない。
だが、問題は妹のれいかの方だ。
彼女がしおりを傷付けて、意識不明の重体に追い込んだ。折角これから失った時間を取り戻せると思った矢先に、しおりはアイツのせいで入院生活を余儀なくされた。
アイツのせいで、アイツが……!
「葵ちゃん、顔が怖いよ、……気持ちはわかるけど、しおりちゃんに頼まれてるんでしょ?練習、見てあげて」
黒い感情に囚われていた私を、あかねちゃんが優しく頭を撫でてくれた。
……落ち着こう、私が頼まれたのはしおりがいない間、ここ第五中学でしおりに憧れて入学してきた一年達の、練習だ。
「葵先輩!一本、練習お願いします!」
噂をすれば影ってやつかな?考えていたら一年生から練習のお願いが来た。
確か名前は……、近藤なんとかくんだったかな、しおりに憧れてアンチラバーを試したけど、扱いの難しさに挫折して両面ディグニス80――しおりと同じ裏ソフトを選んだ子だ。
「いいよー?この葵先輩が練習に付き合ってあげる!オールコートでひたすらやろう!」
しおりへのリスペクトのある子は、嫌いじゃない、だから毎回私はサービスしてしまう。
「……!ありがとうございます!よろしくお願いします!」
そうして今日もしおりが不在の中、私は第五中学で練習に付き合うのだった。




