ラビリンス・迷宮
カメレオンは周りのカラーに自分を侵食させる。
それとも周りを自分色に変えるのだろうか。
いや多分前者だろう。
このホメオパス・タウンにもようやく春が来た。
以前は、街頭で血液が足りないから献血を義務化しましょう。
とか。国家総動員法が出来てから。変な事ばかりが起きる。
血液が闇ルートで売買されてもいた。
血液が赤いなんて常識は、人間の欺瞞だ。
青い血液や緑色の血液だって別にいいじゃないか。
ぐんじょう色だって。
俺「!」
昨日から耳鳴りがする。金属音。原因が解らない。
幻覚が見える時もある。
決まって美女が俺を誘惑している幻想だ。
俺「くっ」
アスピリンがもう切れた。またアパートの一階にある合法薬局で買わないと。
モグリのコンビニエンスストアで昨日買った。
本物コーヒーが悪かったらしい。ワクワクしながら飲んだのだが。
合成化学コーヒーと全く味も香りも変わらない。
10分おきに耳鳴りと幻覚が俺を襲う。
耳鳴りも幻覚も本物缶コーヒーのせいだ。間違いない。
気のせいかもしれないが。美女がだんだん実体化しているようだ。
俺「この世に産まれるのか?」
バタンッ
?「ハチロウ君っ」「仕事が出来たよっ」
俺「サンバイマン教授。今日は俺仕事は出来ません」
「明日にしてください。美女が離してくれません」
このしわくちゃの白髪、白ひげだるまの老人は。
サンバイマン教授。何の教授なのか未だに知らない。
年齢も30歳だというのは、誰でも嘘だと思うだろう。
サンバイマン「何を言うんだね君?大変名誉ある仕事なんだよ」
「私があっせんする仕事は全部」
俺「嘘言わんでください教授。前の仕事は何だったか忘れたんですか?」
サンバイマン教授「なんだったかな」
俺「ドブネズミの実態調査ですよ、実態調査!」
「なんで今時ドブネズミなんか調査するんですかっ」
「体が臭くなって、飲み屋でイヤな顔されましたよ」
サンバイマン教授「心配はいらん!」
「今回は崇高な誇りある仕事だよ」
俺「嫌だ聞きたくない!」
サンバイマン「ジグモのサンプル採取だ」
俺「ほら見ろ」
「子供の昆虫採集じゃないかよ」
サンバイマン「ちゃんと給料が出るんだぞ?」
俺「それでも嫌です!」
「職業あっせん所に行きます。入口に立たないでください」
サンバイマン「ハチロウ君。君が見ている美女は・・・」
俺「な、なんで教授が知ってるんですか?」
サンバイマン「当たり前だ。私にも見えているからな」
美女「うふふふ?」
サンバイマン「ハチロウ君!この女を捕獲しろっ」
俺「え、え、?何?」
美女「ふっ」
俺「うわっ!何この女?」
幻影だった美女が実体化し、俺の腕を掴んで窓から飛び出した。
俺「ここ3階だぞ?」
シュンッ
俺「ワンダーウー〇ンかこの女は?」
窓の中から教授が虫取りのアミを持って悔しがっている。
女は信じられない速度で裏路地を駆け抜ける。俺を抱えて。
俺は意識を失っていく。
俺「あ、アスピリンを・・・」
美女「ハチロウ君?」
「ハチロウ君起きて」
俺「う、うん?何だここは?」
ここは実験室だ、配線や配管、空調パネルに排水ポンプ。
何故かは知らないが全部俺が設計図を暗記している事も思い出した。
俺「あーっ?おっもい出した!」
「お前、ナツコ16号じゃないかっ!」
ピッピッ・・ビィー・・
美女のおでこの眉間に俺の人差し指を押し付ける。
「指紋認証完了しました。ミッションの再点検を要請します」
俺「あれ?俺。なんであんな荒廃した世界に居たんだろう?」
ナツコ16号「えー?忘れたんですか。ハチロウ」
「世界が終わっちゃったから」
「新しい世界を創り直したんじゃないですか」
俺「あ、そうだっけ?」
ナツコ「その際に、侵入者に邪ウイルスを混入されたんですよお」
「だからハチロウがワクチンを作るんだって」
「イレギュラー世界に飛び込んじゃったのよお!」
俺「あれ?そうだったの?」
ナツコ16号「もう、ハチロウッたら。やくたたず!」
俺「ごめんなさい・・・しゅん」
ナツコ16号「あたしが造っときましたよ?」
「人類再生リセットボタン!」
俺「なんじゃそりゃあっ?」
ナツコ「これをポチッとプッシュすれば良いだけの事ですよっ?」
俺「ガーン!ナツコって。俺よりも頭が良い子ちゃんだったの?」
ナツコ16号「忘れたんですか?ハチロウ!」
「もう知らないっフンッだ!」
Push!
ピッピッ・・・バチバチバチッ・・ギューンッ
ナツコ16号「ほら大気が生まれた、海水に二酸化炭素」
「マグマが噴火して陸地が生まれた」
「植物が酸素を作り出した」
「海中に単細胞生物ももう誕生してるわ」
「あとは黙って見ているだけね」
俺「俺もう寝るから。3万年くらい寝かせて・・・」
ナツコ16号「はーい。了解しました。ご主人様♡」




