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新_ショートストーリー集  作者: ノーリターン新
10/13

人間水族館

「ねえねえお母さん」

「あの人間の親子が今日も来てるよ?」


「あら本当」

「入館料は安いけど」

「きっと仕事がなくて暇なのね」


「お母さん、仕事って何?」


「エサを食べるために汗を流すことよ」

「カネ、て言うガラクタを貰うの」


「ふ~ん」


「ほらほら、あたし達を指さして何か言ってるわよ?」

「きっと、あたしたちのウロコに見とれてるのね」


「そ~かなあ、僕は、あいつウマそう!て言ってると思うよ?」


「ボク、そんなことよりも。おババ様が呼んでいたわよ」


「え、あの人まだ生きてるの?」


「何言ってるのこの子は」

「あの方は死ぬことはありません」

「苦しみ、血を流すことを喜んで受け入れる方ですから」


「はい」



・・・・・・・・・



「お久しぶりです、ババ様」


「おお、サンテ」

「あなたですか」


「僕をお呼びですか?」


「ええ、今がいい時期です」

「まだ若いあなたに、大切なことを教えねばなりません」


「はい」


「・・・・サンテは、この我ら魚を見せ物にする人間が」

「なぜ縛られた動物なのかを、知っていますか?」


「う~ん、僕は知りません」

「人間は縛れているんですか?」


「ええ、がんじがらめにされています」


「僕には見えません」


「ええ、だから彼らにも見えないのです」


「何でなの?」


「人間は太古の季節より」

「少しだけ他の動物よりも、脳が開放されていました」

「だから、道具というガラクタを使って」

「この、地上を支配したのです」

「すべての生き物を食います」


「はい、僕も知っています」

「人間は、生き物で快感を作るそうです」


「よく勉強していますね、サンテ」

「サンテは知っていますか?」

「人間は、敵意で同じ仲間を殺します」


「え、そ~なの?」

「みんなニコニコしてるよ?」


「ここに来る人間はそうですが」

「本当は・・・腹、と言う顔があるのです」


「お腹にも顔がついてるの?」


「それが人間が縛られている理由のひとつです」

「快感という欲望を覚えた人間は」

「気持ち良いのが辞められなくなり、罪を繰り返し」

「罪を重ねて、その重さに気がつくことも出来なくなりました」


「へえ、じゃあ僕たちは人間のために死ぬの?」


「サンテは見ぬくことが出来るのですね」

「私達生物は、人間のために。そして人間とともに死にます」

「その心は何だと想いますか」


「わかりません」


「愛、と言う本能です」


「アイ?」


「食って寝て犯す」

「本能はこの他に」

「愛する、と言う生きるよりも死ぬよりも大切なものがあります」


「へえ・・・よくわかりません」


「ええ、サンテは知らなくて当然です」

「人間だって知らないのが普通ですから」


「あ、でも人間が縛られてるのが何となく判ります」

「人間のいやらしい顔が僕の脳の中で見えます」


「・・・・すみません。サンテ」

「少し疲れました」


「はい、おやすみなさい。ババ様」




「あ、ボク。どうだった?おババ様のお話は」


「うん。人間でも知らないことを教えてくれたよ?」

「人間は縛られている、悲しい生き物だったんだね」


「・・・まあ、ボクも成長できたのね」

「じゃあ今日はお祝いに、貯めておいたミミズをあげますよ?」


「わ~い!」




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