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長老さまと嫁入り。


静かに歩く伊豆の後ろをドキドキしながらついていく。


「そんなに緊張しなくていいからな?」と伊豆が振り返って声をかけてくれた。


声も上手く出せず、頷くことしかできなかった。



そして、私がまだ行ったこともない屋敷の奥の部屋の前まで行くと伊豆は


「長老さま?伊豆です。入っても?」


と声をかけ返事を待った。


「おお、伊豆か。待っておったぞ。さあ、入れ。」

と低い声が返ってきた。


伊豆はスッと襖を開け、ちらっと私の方を見て、ついてくるように目で合図した。


私は緊張しながらも、へりは踏まないように気を付け、伊豆を後を歩いた。


「ああ、伊豆。久しいな。そちらがお前の花嫁か?」

と長老さまが言った。


「はい、こちらが私の花嫁の美景です。」


いつもは私なんて言わないのに、と私は思い笑ってしまいそうになったが急いでこらえ

「はじめまして、美景です。」と挨拶をした。



「えらしい花嫁よの。」


「そうでしょう、私の一目惚れなんです。」


え、一目惚れ……?まぁ、嘘だよね?と思いながらも私は答えることができない。


「こんなにえらしい花嫁がいるのなら、お見合いなど必要ないの。お前もえらしい花嫁がおると早く言えばいいのに」



「申し訳ありません、報告が遅れてしまって。」


「まぁ、いい。こうしてお前の花嫁を見れたからな。結婚式には呼んどくれよ?はっはっはっ」

と長老さまは笑いながら言い、今日はこれで帰ると言い、帰っていった。


私は緊張から解放され、ふーっと息を吐くと、伊豆の方を見た。


伊豆はいつもの通りだ。さっき言っていた、一目惚れって言うのは本当なのかな?


聞いてみようか。



「ねえ、伊豆。さっき言って一目惚れって本当?」


「ん?ああ、本当じゃよ。いつ言おうか言おうか、迷っていたんじゃが今言おうかの。」


私は首を傾げた。


「なーに?」




「美景、お主さえ良かったら本当にこの老いぼれじじいの花嫁になってくれんか?一目惚れと言うのは本当じゃよ。」



「!?!?!?!?!?」



「まぁ、もっと言えば結婚してほしいってことじゃな。」とさらりと言う。



「私、好きって気持ちもまだよくわかんないんだよ?」


「それでもいい。少しずつ教えていく。」



「本当にそれでいいの?」


「ああ。もしそれで違うやつの魅力に気づいても、わしは離さんがな?」

と伊豆は少し怖いことを笑いながら言う。


「じゃあ……。よろしくお願いします。」


と私は言った。



変わることなどなにもないだろうけど、私は狐の耳が生えた神様の花嫁になった。



ああ、花ちゃんに報告しないとな。


「美景はこれからここに住むことになる。わしが離れたくないからな。」



こくんと頷きながら、隼人にも報告しないとなと思った。



雨の降る音がする。だけど、太陽の光も入ってきている



狐の嫁入りだ。






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