結婚します
ガチャ、
「あ、」
「おう。」
ウィルの部屋の前でうだうだしてたらまさかのご本人登場。
見事な赤毛にエメラルド色の瞳。昔は顔にそばかすがあったけど成長した今はほとんどなく真っ白な肌になっていた。
いきなりなもんでどんな反応していいのかわからず硬直状態。
「なんでお前がいんだよ。まぁいい入れ。」
若干不機嫌な様子だけど侵入成功。
…したのはいいか部屋はよくわからない魔法の本や資料、道具が散らばっていて足の踏み場がなかった。
「悪いな。ちょっと散らかってて、今椅子だすから。」
ちょっとどころじゃないね。片付けようよ…
積み上げられた本の山は私の身長を軽くこえていた。辺りを見回してみたけど安全そうな場所はなくどこも似たような感だと思ったら、一箇所だけ片付けられていた所があった。
そこには奇妙な機械が置いてあった。大きな柱時計に椅子が付いている。床には魔法陣が書かれている。察するに魔法道具だろう。そこだけ綺麗ということはこの道具の研究でもしているか?
「ねぇ、これ何?」
「時間巻き戻し機。椅子に座った人が戻りたい日に戻れる装置だ。人生やり直したい奴にうってつけだな。」
「ふーん」
興味ないふりしたけど、これを作ったウィルはやり直したい日があるってことだよね。
…それってやっぱり結婚を決められたあの日かな、最近これ作るためにこそこそし始めたなら辻褄が合う。
過去をやり直したいほど私との結婚嫌なのかよ。直接言えばいい話じゃん。
いや、もしかしたら喜んでる両親達や私を傷つけまいとこっそり過去を変えようしているのでは、親同士が勝手決めてしまったので拒むことも出来ずに曖昧な態度をとりながらこれを作っていた訳か…。
「なぁ、なんか用があったんじゃないのか?」
わぁ、なんかイライラしてる。帰れオーラが滲み出てる…そわそわしてるあたり誰か来るのかな?恋人とか…
過去を変えてなかったことにするなんて変な気遣いとか惨めな気持ちになるだけなんですけど…。
こんな機械使わないででも婚約は解消してやる‼︎
「あー、流石ウィルだね、昔から器用でなんでも自分で作ってたよね。やっぱ魔法族家系は違うわー。うん、」
私も結婚する気ないです的なことに言っとけば使うの思いとどまってくれるかな。
「……エミリエは魔法嫌いなのか。」
「嫌いじゃないけどさ、私とウィルって全然趣味思考が違うなーって思っただけ、こんな機械作って過去変えようなんて思わないもん。」
さらりと性格の不一致とウィルに対しての批判を交えたことを言ってやった。
「……っ、……」
そう言ったらウィルは絶望、落胆が混じったよくわからない表情を浮かべそれがだんだんと弱々しくなり涙を堪えていた。
正直、じゃあ俺もお前みたいな女ないわー婚約解消なって
そんな発言を見越したためだったので泣かれるのは非常困る。これではこっちが悪者みたいではないか。
「ちょ、泣かないでよ。私は穏便に婚約解消出来ればいいと思って言ったまでで…」
「誰が解消なんかするか!」
泣こうとするのをやめて怒りの顔をこちらに向けてきた。
えっ?したいんじゃないの?
「くそ、もう我慢できん。今すぐ過去を変えてやる。」
そう言ってウィルは機械の椅子に座って呪文を唱え始めた。
床の魔法陣が青白く輝き出し時計の針は目にも留まらぬ速さで動いている。
やばいウィルが過去に飛んでしまう。そう思ってウィルを椅子から引き離そうとした瞬間時計が爆発した。
破片が飛び散り周りは焦げ臭いにおいがする。幸い怪我はなかったが服は汚れてしまった。お気に入りのシャツが…。
「うぅ…」
ウィルは爆発の瞬間吹き飛ばされて本の山にぶつかり本に埋もれてしまっている。こっちからはお尻しか見えいなんとも情けない格好である。
「ウィル大丈夫?」
本をどかしていくと鼻から血を流して泣いていた。
「失敗だ。もう式までに時間がないのに。計画が台無しだ。」
解消はしたくないのに式はしたくない。穏便に済ませてやろうと努めてやったのに暴走しやがって、私は我慢できずきウィルのむなぐらを掴んでやった。
「いい加減にしろよ。ウィリアム。言いたいことがあるな口で言えよ。」
ガラの悪い口調だがこの際関係ない。周りに振り回されるのはもう沢山だ。
観念したのかウィルはぽつぽつ小声で話し始めた。
結論から言うと、
元々私にプロポーズしようと準備してきたがいきなり親同士が勝手に縁談をまとめてしまい勝手なことをするなと反論した。その結果おじ様と口論になり、おじ様に過ぎたことは仕方ないと言われてしまい。それなら魔法でなんとかならないかと試行錯誤していくうちに時間巻き戻し機を発明したらしいが、今回の件で壊れてしまった。
「魔法でも時を操るのは難しいだ。ましては過去を変えるのは簡単なことじゃない。それでも俺は親同士が決めたとかじゃなくて俺の意思でお前にプロポーズしたかったんだ。」
俯いたままだったけどウィルの真剣が感じられた。
「ウィル、そこまで私のことを考えてくれるのは嬉しいよ。でもこんな危険なことはやめて欲しい。もっと大きな事故だったらウィル死んでたかもしれないよ。」
「ごめん…」
袖で鼻を擦ろうとしたのでハンカチを貸してあげた。
「それにさ、もし成功して過去を変えてもプロポーズした時に私に断られてたらどうすんの?」
そのリスクは考えなかったのか?それもなかったことにするつもりだったのか。
「お前が断る訳ないだろ。」
なんとも俺様的発言がでた。その自信はどこら?
「いや私は別に行き遅れに対して焦ってなかったよ。」
焦っていたのは父である。私じゃない。
「違う違う」
ウィルはそう言って呪文を唱えて小さな箱を取り出した。なんだか見覚えのある箱だ。
「覚えるか?これ6歳くらいの時に二人で手紙交換しただろう。」
そう言えばそんなこともあった。6歳になりある程度文字も書けるようになり二人で手紙を書こうって話になったんたんだっけ。
「懐かしいだろ、全部ここにしまっといたんだ。」
私がもらったのは何処にしたっけ?多分家のどこかにあるはず。多分残ってるはず…
「で、俺、手紙にいつか僕のお嫁さんになって下さいって書いたんだよ。そうたらお前紙いっぱいに大きな字でいいよーって返事くれたじゃん。」
…全然記憶にないんだけど…てか、ウィルはそんな小さな時の約束を信じていた訳か。
「小さな時の約束を信じてたの?」
そう言ったら箱ら今度は違う紙を取り出した。手紙とは違う、契約書だ。
「その後本当に結婚してくれのか確信したさ、そしたらお前なんて言ったと思う?」
皆目見当もつきません。私はなんといっんでしょ。
「りんごの木を植えてくれたら結婚してあげるって言ったから、俺はそのまま親父の書斎にある契約書を盗んでお前に書かせたんだ。」
あのリンゴは私のために植えてくれたんだ。
契約書を見せてもらうと活版印刷機の文字で
『ここに署名した者達は如何なる約束事でも守らななくてはならない』
と書かれていて、一番下には私とウィルの直筆サインがあった。
軽く目眩を覚えると同時にその時の記憶が蘇った。
「あれただの魔法使いごっこだと思ってた。」
これこそ時間巻き戻し機を使うべき案件だ。
「魔法にごっこなんてないさ、ちなみにこのことも親父に話したらめちゃくちゃ怒られて紳士のすることじゃないって失神魔法喰らわされたよ。おかげで3日間動けずじまいでね。」
当たり前だ、魔法契約なんて普通の人間が破ることができないのにその上結婚という一生ついて回るものを約束させたのだから、失神だけでは軽いのでは?
「もっと早く話してよ。私何も知らなかったよ。ウィルに嫌われてるのかと思ってた。ウィルに彼女がいると思ってた。魔法なんかじゃなくて直接私に伝えてよ。まだウィルの口からは何も聞いてないよ。」
いきなり涙が出てきた。
ウィルはハンカチで私の涙を拭いてくれた。そして膝をついて私に
「エミリエ、君の気持ちを知らずに今まで隠しててごめん。結婚してください。君と一緒にいたい。たのむから結婚してください。お願いします。」
後半の必死に思わず笑ってしまう。
「喜んで」
ウィリアム:魔法道具を発明するのが得意。マキャベリズムな所がある。
おじ様:ウィルパパ。面白いことが好き。エミリエにパパと呼ばせたい。モデルは高田◯次
結婚するにも一苦労よでいただきありがとうございました。楽しんで頂けたでしょうか。初めての投稿で誤字脱字話がめちゃくちゃな所があると思います。