第百十話 想い(エピローグ)
祈りと願いを編んだ世界。
形を結んだ想いはやがてほどけ、風に舞い、世界を巡っていく。
誰かが笑い合った日々。
誰かが交わした約束。
言葉にならなかった願いでさえも。
そのすべては、目には見えない彩となり、静かに世界へ溶けていく。
花の香り。
夜の静けさ。
雪の冷たさ。
日々の温もりさえも。
名もなき欠片は、誰にも気づかれないまま、静かに降り積もる。
季節が巡るたび、風はその欠片をそっと運んでいく。
彩られた想い。
最初の空白は、心の色に染まり、やがて光となって消えていく。
消えたように見える光の粒は、暗闇の中でほのかに灯り続けている。
眠れる時のなかで、光はやがてほどけ、人知れず世界をふたたび巡っていく。
止まらない風。
巡る季節。
移ろう景色。
零れ落ちた涙さえも。
想いは形を変えながら、静かに明日の世界へ溶けていく。
そしてまた、小さな色が芽吹いていく。
遠い昔に紡がれた願い。
今この瞬間に生まれた小さな祈り。
その想いは隔てた時を越え、姿を変えながら、静かに息づいている。
祈りと願いが溶けた世界。
切なく儚い想い。
ひとしずくの淡い光が優しく灯った未来。
もしも、この声が届くのなら――。
私は――。
闇に舞う、この白い温もりが好き。
第三部 リエージュ編 完結です。
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