……このゲームいの本来の趣旨、忘れていないか?
AQUA・WORLDはそれぞれの街が海で隔てられている。流石、AQUA・WORLDというだけはある。だが、船を持たない俺たちはどうやって別の街へ行くのだろうか。
現在、街の外にある浜辺の方に来ているわけだが、エリはどうするつもりだろう。
目の前では、エリが準備運動をしている。ゲームなので準備運動を行う必要はないのだが、妹いわく、『しなければ気持ち悪くてやっていられない』のだそうだ。
「さて、ここから行くよ」
「なあ、エリ。ずっと聞きたかったんだが、アストライアにどうやっていくんだ?」
「……? 海を渡っていくに決まっているじゃない? 何か問題があるとでも言うの?」
「だからどうやって」
「……、このゲームは水の世界をイメージしたゲームだよ? プレイヤーは基本的に水中を移動できるんだけど……」
先ほどより一層あきれた表情でエリはため息をつく。周りを確認したが、ユウキもシズクも最初から知っていたという顔をしていた。……知らないのは俺だけだったのか。
「セイ、あなたこんなんで大丈夫なの? ちゃんと調べたほうがいいわよ?」
「ああ、終わったらちゃんと調べてくる」
本当に情報は大事だ、知らないだけでこんな扱いなのだから。
「さて、もう一人だけ紹介していないメンバーがいたから、今から紹介するわ」
エリはウィンドウを操作して笛を取り出すと、海に向かって思いっきり吹き鳴らした。
「ぴゅーい」
遠くから動物の鳴き声が聞こえてくる。やがて、やって来たのは一匹の青いイルカだった。
「紹介するね、この子はイルカのドロップ。私がアートをとる前から縁があってね、たまにこうやって一緒に旅をしたりすることもある」
そう言いながら魚を取り出すとドロップに与える。ドロップはそれを食べた後『ぴゅーい』と嬉しそうな鳴き声をあげた。
「かわいー」
少女がドロップに近づいていく。特にドロップは少女を警戒する様子はないようだ。すぐに一人と一匹が打ち解ける。
「なんで呼んだかというと……。ドロップこの子を運ぶんだけど、頼まれくれるかな?」
「ぴゅっ!」
ドロップは首を縦に振って肯定のしぐさをする。
「少女をドロップの背に乗せることで、はぐれるという可能性を消そうという訳だな?」
「そういうこと」
そう言って、エリは少女をドロップの背に乗せる。
「さあ、私たちも行くよ」
エリは誰よりも先に水の中に入って行った。




