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AQUA・WORLD  作者: あすぎめむい
アクアリウム編
21/34

『人魚姫』の実力は?

 やっとエリのターンです。

「プギィイイイイイイ!」


 ヒッポスタンプが雄たけびを上げて突進する。


 盾役のいないこのPTでこの攻撃を真っ向から受けるのは愚策だ。


「みんな! ヒッポの真正面に立たないように避けろ!」


 とはいえこいつの標的を俺に向けなければ、真っ先に狙われるのは解呪士のエリか回復士のヒナだ。


 特にヒナは――少女をかばっている。限界までヒッポからは離れているが、いつ彼女たちに襲ってくるか分からない。


 俺はヒッポの攻撃を紙一重で避ける。正直、怖い。だけど攻撃を素早く当てるにはすれすれで避ける方が効率がいいのだ。


 通過するヒッポの横っ腹に剣を入れる。防御が高いのかそこまでダメージを与えることができない。


 だが、それで充分だ。ヒッポは俺の横を走りきると急ブレーキをかけて数メートル先で止まった。そしてこちらを振り向く。


「プギッッッ!!」


 ……ものすごく怒っていらっしゃる。


 ヒッポはもう一度こちらに突進してきた。


「セイ! 俺たちのことを忘れてんじゃねえぞ!」


 ユウキはそう叫ぶとヒッポの体に滑り込むと腹の部分を掴み、そのまま蹴りを入れるような速さで片足を腹に当て、慣性とてこの原理で後方に投げ飛ばした。


 ヒッポスタンプに巴投げを喰らわせたのである。


 そのまま弧を描いて、ヒッポスタンプは地面に背中から激突する。


「ふう……。俺も前衛だ、セイ一人だけに負担はかけさせない。他にも『人魚姫』だっているし、離れてはいるが回復職のヒナさんだっている。無理はするな」


「すまん……」


「今は謝っている暇はないだろ? まだヒッポは倒せていない、また来るぞ」


 ヒッポの攻撃はそれこそ突進しかないが、その分近づくと大ダメージを受けることもある。恐怖も相まってなかなかに倒すのが難しい。……魔法系なら遠距離でも戦うことができるが直進しかしないとはいえ、移動する敵を狙って打つのは少し技術がいる。


 つまり、レベルが高くなければ長期戦になってしまうのである。


 俺とユウキの連携でヒッポの体力は減っていくが、集中力が切れ始めヒッポの攻撃が掠り始める。


「でも……、今ヒナの力を借りるわけには……!」


「流石に……きつい……!」


 ヒッポの体力は残り3割なのだ。だけどこのままでは直撃を喰らって負けてしまう。


「みんな! 下がって!」


 そう叫んだのはエリだった。


「逃げるぞ! 巻き込まれる!」


 今度はユウキが叫び、俺たちは反射的にエリの方へ駆ける。無論、ヒッポは俺たちに向かって突っ込んできた。


 何とかエリの後ろまで退避。そういえば、この戦闘中エリは何をしていたのだろうか。


「いくよ! 『嵐よ、私に力を! 我が前に立ちふさがる万物を押し流せ!』メイルっ――シュトローム!」


 ヒッポがエリの杖より召喚された激流に飲み込まれる。さらにそれがトリガーとなったのか第2、第3の波がヒッポを襲い――3割も残っていたHPを消し飛ばした。


『嘘……だろ……?』


 俺たちはただ、呆然とするほかなかった。何この攻撃力と攻撃範囲、後衛であるはずの解呪士の一撃がレベルが低いとはいえ前衛である俺たちの与えたダメージの数倍ものダメージを与えているんだが。


「エリ……、今のなんだ?」


 俺の問いにエリはAP回復用のドリンクを飲みながら答える。


「私の『芸術魔法(アート)』の大技、『メイルシュトローム』。これだけだと私の攻撃力じゃヒッポが持っている水への耐性のせいで削りきれないから、セイとユウキがヒッポの注意をひきつけている間にさらに反応系の技を仕掛けていたってわけ」


 だから今の今まで戦闘中のエリの姿が見えなかったのか。それにしても……。


「『芸術魔法(アート)』強ぇ……」


 俺は小さくそう呟く。


「うん、『芸術魔法(アート)』は少しチートなところがあるよな……」


 ユウキは小さくため息をついた。


「でも、『芸術魔法(アート)』はAPを大量に消費するから、罠を全て仕掛けた後、ドリンクを飲みまくったわよ?」


 それでも小さなデメリットだと思うんだがな……。


「おねえちゃんすごーい」


 と遠くにいたヒナと少女が戻ってくる。


「とりあえずみなさん、前衛のお二人が消耗しているので回復して一旦休みませんか? ついでにお弁当にしましょう」


 ヒナはそう言ってしょっていたバッグからお弁当などをとりだしていく。


 だからといって、ここではいつモンスターに襲われるかも分からないので、俺たちは安全な場所を目指して歩き出すのだった。

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