アクエリア都市へ その5
というわけでレベル上げだ。
俺は相当レベルが低い。なのでPOPしてきた敵の攻撃をひたすら避け続けて、隙を見てダメージを与えるという持久戦を取る羽目になる。
1回戦うだけでものすごく消耗するわけだが、その分見返りも大きい。レベル差が激しいのでもらえる経験値も多いのだ。
俺はヒトデ(アストライアの時とは色違い)の攻撃を紙一重で避け、顔と思われる部分を殴りつけた。ダメージは無いに等しいが、一瞬の隙と十分な間合いの二つを同時に作りだす。後はそこに剣で攻撃をたたきこみ、すぐに相手の間合いから離脱すればいい。俺はこれをすでに20回以上繰り返していた。
「俺のやっていることって、周りからは異常に見えるんだろうなあ」
ちゃんとパーティを組んでいるなら前線にタンクを立てて、武器や技術魔法でたたけばいいだけらしいからなあ。
遠くから接近してくる敵に補助装備からハンドガンを抜き、発砲。勢いづいている敵はいったん止まると、立て直すのは難しい。そのまま相手に肉薄し、すれ違いざまに片手剣でダメージを与える。
2体のヒトデのHP残量が1割の半分を切ったので、そのまま突撃剣で2体を吹き飛ばした。
「こんなものかな」
次の敵が出現する前で腰を降ろして休む。俺は決して大きなダメージを与えられるようなタイプのビルドにはなっていない。ソロプレイをすると相当疲労するのだ。
暇なので周りを見渡してみる、このフィールドにプレイヤーはそこそこいた。その中に俺と同じソロプレイをしている男がいる。
その男性は一つも武器を持っていなかった。
「あれ、まずくねえか?」
俺が体験してみて、拳や体術はあまり相手にダメージを与えられないと知っていた。それでも彼が武器を使わないで戦うのはなぜだろう。技術魔法? いや、それなら杖やローブなどを使うはずだ。
助けに行くべきか、とも思ったが彼なりの意味があるんだろう。
その男はヒトデの攻撃を荒い動作で避け続ける、見ているだけで危なっかしい。
そしてヒトデの攻撃が男をとらえた――と思った瞬間、男はヒトデの背後に回り込んでいた。そしてヒトデの腰と思われる部分に手をまわした。クラッチをかける。
「あれは……」
男は人手にクラッチをかけたまま後方に反り投げる。だが、地面に激突するのはヒトデの頭部だけだ。これはまさに……。
「『ジャーマンス―プレックス』!!……」
地面に激突するのとほぼ同時にヒトデのHPが吹き飛び、ポリゴンとなって四散した。
「ふぅ……」
男は体勢を直して、無いはずの汗をぬぐう。
俺は、無意識に手を叩いていた。
ゲームアシスト有りではあるが、鮮やかなジャーマンス―プレックスだった。
「ん、どうもどうも」
どうやら、拍手をしていたのは俺だけでは無かった。男は拍手に応じ、手を振っていた。
男は突然こちらを向き、俺に近づいてきた。
「俺の名前はユウキだ、よろしく。あんたの名前は?」
「俺はセイ。よろしく、と言いたいがなんで俺に話しかけてきたんだ?」
俺がそう言うと、ユウキは頭の後ろをかいて。
「たぶんセイはソロだろ? ……正直、超近距離型の俺としては近寄るためのサポートが欲しいんだ。だから一撃で勝つのは苦手でも連携ができそうな近距離型の人と、中か遠距離型のプレイヤーを探していたんだ」
俺がユウキのことを見ていたように、勇気も俺の戦闘を見ていたわけか。
「あー、俺一応近距離も中距離もできるんだが……」
「本当か!?」
そう言うとユウキはメニューを呼びだした。俺の目の前にもメニューが表示される。
『ユウキのパーティに参加しますか? はい/いいえ』
「俺とPTを組んでくれないか?」
ユウキの提案に、少し自分を振り返ってみる。最初、いきなりの敗北。今、敵を倒すのにどれだけの時間がかかっただろうか。俺はダメージを与えることには適していないが、ターゲットをこちらに向けたり、敵をけん制するのに向いている、……と思う。対してユウキは避けたり、敵をかく乱するのは苦手だが一撃非札の威力のある、ダメージディーラーに見えた。相性は決して悪くない。
俺ははいを押した。
「これからよろしくな、ユウキ」




