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迷子を送り届けるのに必要なものは…

テントに帰って来ると、まず足についた土やなんかを水で洗い流し、タオルでしっかりと拭いた。

そして、やっとこの時が来た!!お待ちかねのクッションダイブ!!!

オレは、一番にテントの中に敷いてあった、ムギさんから貰った大きなクッション目掛けて飛び込んだ!!あ~、さ〜いこ〜…。

思えば、オレは小さい頃からこのダイブが好きだった。もちろん、めぐと一緒に寝ていたベッドの上に…。めぐの家に来たばかりの頃、初めて羽毛布団にダイブしたとき、あまりのふわふわに身体が吸い込まれるように沈んで行く感覚…オレは感動を覚えた!!!それ以降、ふわふわが大好きになった!!

このクッションはちょうど、その時のふわふわの感覚に似ている。あぁ〜、懐かしさと安心感でさらにクッションに吸い込まれてしまう…。

「リオ、何してるんだ?入り口の真ん前で寝転んで。そんなところに居たら、みんながテントの中に入れないだろう?」

リク兄の言葉にふっと我に返った。

「ご、ごめんなさい…。」

「もう、まったくよ!この中で一番身体だけはデカイんだからね!!身体だけは。」

「まあまあ、そんなに責めたらリオくんがかわいそうですよ。なにしろ、今日はいろいろあった上に、昼間はあなたたちの分まで、ほとんど歩き通しでしたからねぇ。あなたたちの分まで!!」

コノハさんがオレを庇ってくれたら、チャム姉さんはバツが悪くなったのか黙り込んだ。

しばらくそっちのけにしてしまったが…、オレはコツメカワウソくんをそっとテントの中に招き入れた。

「ほら、君も入っておいでよ。そういえば、まだ名前を聞いてなかったね。」

「…ソウ…。」

「ソウくん、よろしく!」

この後、オレは簡単にみんなのことを教えてあげた。

最初は、何だか戸惑っているようにも見えたけど…、例のクッションに座らせた瞬間、ソウくんの顔がホワッとほころんだのをオレは見逃さなかった。さすが、うさぎ自らが自分達の抜け毛で作ったクッション!!!ありがとう、ムギさん。

とりあえず、すけは安心してくれたみたいで良かった。やっとみんながテントの中で落ち着いたので、ずっと気になっていたことをいろいろ聞いてみようと思う。

「ねぇ、あの…コツメカワウソってどんな動物?普段はどういう所で暮らしているの?オレ、全然知らなくて…。ごめんね。」

「ううん、大丈夫。ボクも自分たち以外の種族のことは全然わからない。」

さっきも思ったけど、このソウくんはまだ子供なのかもしれない。話し方もなんだか子供みたいだし、迷子っになって泣いていたし…。大人になれないまま、こっちの世界に来てしまったなんて…。本当に可哀想だ。やっぱり、この子を助けるって決めて良かった。

「それでは、迷子になった経緯などは、ご本人から聞くとして…。まずは、コツメカワウソという種族について、私から簡単に説明しますね。」

そして、コノハさんの講座が始まった。

「では、『コツメカワウソはどんな動物?』からですね。

まず、カワウソはイタチの仲間です。カワウソにも、いろいろな種類があるのですが、コツメカワウソはカワウソの中でも一番小さいのですよ。

そして、普段コツメカワウソが暮らしているのは、川などの水辺ですね。泳ぐのがとても上手な動物なんです。手にはちゃんと水かきも付いてますし、コツメカワウソと言うだけあって、爪は小さめです。

普段は、水の中で泳いでいることが多いですが、陸でも活動可能です。水陸両用タイプですね!

どうです?分かりましたか?リオくん。」

コノハさんは思いっ切りドヤ顔をしていたけど、正直最後は半分何を言ってるのかわからなかった…。でも、だいたいのことはわかったと思う。

「う〜んと、ソウくんたちは泳ぐのが上手で、本当は川とかに住んでるってこと?」

「そうです!その通りです。リオくんは優秀ですね!!教えがいがあります。話をちゃんとしっかり聞けるのも偉いです。」

「えへへ、ありがとう。」

コノハさんがあまりにもベタ褒めしてくるので、オレは少し照れてしまった。

「リックさんも大丈夫そうですが…。チャムチャムさん、あなたはどうですか?分かりましたか?」

「な、何よ!だいたいわかったわよ!!あれでしょ、えっと…そ、そう!リオと違って、水の中が得意ってことでしょ?」

何故か、すごく慌てふためいたチャム姉さん。ちょっとあやしい気もするけど…。

「…まあ、あなたはそれでいいと思います。」

コノハさんも、思うところがあったみたいだけど、呑み込んだようだった。

「では、本題に入りましょうか。ソウくん、あなたはどうしてあのような所に迷い込んでしまったのですか?」

「えっと、ボク…。最初はいつもみたいに、みんなと川で遊んでた。でも…、みんなに小さいってバカにされて…。みんな言うんだ…。『お前はみんなより小さいからきっと立派なオスにはなれない。』って…。

ボク、悔しくて…。だから、ボクだけの力で立派な巣を作って見せてやるって…。

それで、みんなが見つけられないような、特別な巣の材料を見つけようと思って探してたら、いつの間にか知らない所にいて…。頑張って帰ろうとしたけど、ダメで…。

そしたら、ここの穴を見つけたの。うちの巣と一緒で、川から入れる入口もあったから、なんか安心しちゃって…。でも、暗くなってきたら、寂しくて…怖くて…。」

ソウくんは、言い終える前にまた泣き出してしまった。

「そっか、独りで大変だったね。さみして、怖い気持ち…オレもよくわかるよ…。」

慰めるつもりで言ったけど、言葉にしているうちに、なんだかオレまで悲しくなってしまった。

「フムフム、そうだったのですねぇ。ん?ということは、この洞窟は川と繋がっているということですか?だから、奥に行けば行くほど水笠が増していたのですね。なるほど、なるほど。ん?となると…」

コノハさんは独り言なのか、オレたちに対して話しているのかわからないけど、けっこうな大きさの声と速さでずっとブツブツ言っていた…。

ソウくんが泣いているのは、目に入っていないようだった。なんていうか、もう自分の世界に入ってしまっているようだ。長老様からは『広い世界を見て来なさい』と言われたと言っていたはずなのに…。これでは、広い世界じゃなくて、小さい世界だと思う…。

「ほらほら、もう泣くんじゃない。もう独りじゃないから、寂しくなんかないだろう。僕たちがついてる。明日になったら、一緒に仲間を探しに行くんだろ?だから、もう今日は安心して眠りなさい。」

リク兄はソウくんの背中をポンポンして、寝かし付け始めた。それを見て、オレも一緒になって頭を撫でてあげた。そしたら、チャム姉さんも「仕方ないわねぇ。」とため息混じりに呟いて、ソウくんの肩をさすり出した。オレたち3匹がかりで寝かし付けられたソウくんは、最初は泣いていたこともあって少し興奮気味だったけど、次第に落ち着いていき、疲れもあいまってか早々に寝付いてくれた。そして、しばらく続けていると、ようやく気持ち良さそうな寝息も聞こえるようになった。

「よし、これで完璧に寝たな。じゃあ、今度はコノハさんに独りの世界から戻って来てもらおう。」

リク兄は小声で囁いて、ソウくんを起こさないように、そ〜っと歩いてコノハさんの方に近付いて行った。オレとチャム姉さんもそれに続いた。

コノハさんはまだ独りでブツブツしゃべっていた…。コノハさんって、優しくていいお兄さんみたいだと思っていたけど…。こうして見ると、ちょっと怖いなぁ…。

「ねぇ、あれどうすんのよ。きっと、ちょっとやそっとじゃ戻って来やしないわよ!」

「まあ、やるだけやってみる。」

意外と自信満々な様子のリク兄は、そっとテントの外に出て行った。リク兄が何をしようとしているのか、全くわからなかったけど、オレとチャム姉さんは黙って見守ることしか出来なかった。

「あれ、長老様!こんな所でどうしたのですか?」

テントの外から、リク兄の声が聞こえて来た。

「長老様」って何を言ってるんだろう?こんな所に居るわけないのに…。まあ、ソウくんを気遣ってか、小さめな声だしいいかぁ…。なんて思っていると、さっきまでずっとブツブツ何かを考えていたコノハさんが、ものすごい速さでテントの外に出て行った。かなりの速さで飛んでいたのに、全然音がしなくて…オレはオレは尚更恐怖を感じてしまった。

「師匠!師匠!!どこですか?師匠?」

テントの外で、コノハさんは長老様を探し始めたみたいだ。このままでは、ソウくんが起きてしまうかもしれない。

オレは慌ててテントの外に出た。すると、チャム姉さんがオレの後ろからものすごい速さで走り出てきたと思ったら…飛んだ?いや、正確にはすごい高さまで跳び上がり、コノハさんの後ろ頭にしがみついたのだ…。突然のことに驚いたコノハさんは、後ろにしがみついたチャム姉さんを振り落とそうと、バタバタと体を上下左右に振り倒していた。きっと、後ろにいるのがチャム姉さんだなんて、夢にも思っていないんだろうなぁ…。もう、なんていうか…チャム姉さんなんかロデオ状態だし…。

「これはもう、カオスだな…。」

気が付くと、オレの足下まで戻って来ていたリク兄が冷静に呟いていた…。

え〜〜、なんでそんなに冷静なの?これ…どうするの?

「もう!いい加減、気付きなさいよ!!!」

コノハさんの頭の後ろに必死にしがみつき 続けていたチャム姉さんは、とうとう我慢しきれず大声を上げた。すると、突然コノハさんの動きが一瞬だけ止まったかと思うと、次の瞬間には フラフラ とし始め、ついには飛んでいられなくなったのか 墜落した…。一体何が起きたのか全くわからなかったけど、なんだか 鈍い音を立てて地面に激突したのだけははっきりと見えた。とりあえず、コノハさんが心配だったので 急いで駆け寄ってみた。

「コノハさん!大丈夫?」

「…。」

何の返答もないので、うつ伏せに倒れていたコノハさんを仰向けにしてみたら…白目を向いていた…。

「ああ、これは目を回したのかもしれない。」

「え?リク兄、どういうこと?」

「ほら、コノハさんが言っていただろう?フクロウやミミズクは耳が良くて、顔全体で音を集めて聞くって…。それなのに、チャムチャムが頭の後ろであんなに大きな声で叫ぶから…。」

リク兄は心底気の毒 そうな顔で、横たわるコノハさんを見下ろしていた…。

なるほど、音を拾いすぎてキーンってなったってことか…。可哀想に…。ん?っていうか、チャム 姉さんは?どこに行った…?

オレは慌てて周囲を探した。

「もう…、急に何だったのよ…。」

突然、チャム姉さんの声が降ってきた。「え?どこから?」と思いながら、声のした方を見上げると…そこには テントがあった。なんと、チャム姉さんはテントの上にしがみついていた…。いつの間に…。

「え?チャム姉さん、大丈夫?いつの間にそんなところに?」

「あいつが急にフラフラしたから危ないと思って、頭をそのまま踏み台にして飛びのびたのよ!!」

「え、すごっ!!!」

「でしょ!あたしはとっても運動神経がいいんだから!!!ていうか、あんた!あたしのこと忘れてたでしょ!!」

「え、それは…ごめんなさい。」

「ふん、それにリック!あんたもよ!!心配くらいしなさいよ!!!」

「いや、その必要はないかなと…。チャムチャムは無敵だから。」

あんなにチャム姉さんがプンプンに怒っているのに、リク兄は何も気にした様子もなく、冷静に答えていた。もしかして…これ、いつものことなのか?


次の日の朝、オレは目覚めると真っ先にコノハさんの様子を確認した。というのも、 昨晩はあのままコノハさんをテントの中に引きずり込んで寝かしておいたからだ。

コノハさんはまだ眠っていた 。一瞬、不安になり一応くちばしの上に手をかざして、 呼吸も確認してみたけど…ちゃんと息をしていた。

「ふう、よかったぁ。」

「…何がよかったのですか?」

コノハさんの目が突然開いた。

「うわぁ、え? 起きてたの?っていうか、大丈夫?どこか痛いところとかない?」

「あなたが近づいてきた音で目が覚めました。…痛い といえば、なぜか顔と言うか…おでこがとても痛いです。それに…私はいつの間に眠っていたのでしょう。昨夜の記憶が少し…曖昧なようです。」

オレは返答に困ってしまった。昨日の夜のことは全て正直に伝えてもいいのだろうか…。結局、チャム姉さんの大声のせいで怪我までしちゃったってことだよね?さすがに、コノハさんも怒っちゃうんじゃ…。 「あ、おはよう!コノハ、あんた 昨日 地面に顔から落ちて、すごい音させてたけど大丈夫なの?」 

チャム姉さんは何も考えていないのか、すごく呑気に コノハさんに事実を伝えてしまった。

「え?そうだったのですね。それでおでこが痛いわけですね。起きたら いつの間にか寝ているし、おでこも痛いしで驚きました。」

「ああ、あんた地面に落ちた後、そのまま寝ちゃってたから、あたしたちみんなでここまで運んだのよ。」

「そうでしたか。それは、お手数をおかけしました。リオくんも、ありがとうございます。」

「う、うん…。」

うわ〜、すごい…。チャム姉さんたら、嘘は一つも言ってないのに、昨日のあの惨状をすごく平和的に話して終わらせちゃった…。チャム姉さんのことだから、何も考えずに単に聞かれたことにだけに答えただけで、何も隠そうとも思ってないし…、ましてや 自分が原因で怪我をさせたとも思ってなさそうだな。ただ、悪気は一切ないということだけはわかる。


オレたちが 朝ご飯の支度を終えた頃、リク兄とソウ くんが一緒に起きて来た。どうやらリク兄は、ソウくんのお腹の上で寝ていたらしい。「すごくふわふわだったけど、リオのお腹方が 肉付き具合がちょうど良くて柔らかい。」と聞いてもいないのに、とても失礼な 感想まで聞かされた。リク兄とチャムお姉さんは、毎晩のように オレのお腹の上で寝ている。

まあ、オレもほぼ毎日、めぐの膝の上 やお腹の上 、さらには腕枕をしてもらいながら寝ていたので、それに関しては何も言えない…。


オレたちは、みんなで朝食をとりながら、今後のことについて話すことにした。

ちなみに、コノハさんはオレたちと旅に出てからは、一緒に食事をとってくれるようになったのだ。

「じゃあ、この後はソウくんのお家探しだね!」

「そのことなんですが…。やみくもに探すよりも、ソウくんが通って来たであろう道を辿って行った方が、きっと確実です。

ですが、ここで問題が一つ…。昨夜、ソウくんの話を聞いていて思ったのですが…。ソウくん、あなたここまでは、泳いで来たのではないですか?」

「うん、だいたいそうかも。」

「やはり、そうですか…。」

「え?オ、オレ…泳げないよ?」

「はい、皆がそうです。私は飛べば済みますが…。それでも、時折どこかに止まって羽を休める所も必要です…。

そこで、提案なのですが…、小舟を作ってから、ソウくんのお家探しを始めたらどうでしょう?」

「こ、小舟?そんなの僕たちだけでは作れないんじゃ…。」

コノハさんのまさかの発言に、さすがのリク兄も不安そうな表情を隠せないでいた。

「はい。もちろん、私たちだけでは無理でしょう…。ですから、ソウくんのお家探しをする前に、『森の大工さん』の所に寄ってから行きましょう。」

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