あの場所へ
~シケリと別れた直後~
扉の先は地下室へと続く階段になっていた。
その階段を下りた先の小さな地下室の中心には、質素なドアが一つだけ置かれていた。
「…これだけ?」
そうユハが声を漏らすのも無理もなかった。
なぜなら先ほどまでの汚部屋と打って変わり、ここにはドアのみが置かれていたからだ。
「ええ、このドアだけ。でもただのドアじゃないわよ」
そう言ってイズは扉の真ん中に手を当てる。
「これは魔導具。簡単に言ってしまうと魔法が使える道具の事よ。」
「このドアが…?」
「そう、こんな何の変哲もない木製のドアが魔法を使えるの。ただ、厳密に言えば魔導具はこの地下室全体よ」
「…この場所自体が魔法を使える…ってこと?」
「正解。このドアは魔法を行使する際の起爆剤よ」
イズはそう言いながらドアから手を放し、次に指でドアを中心にして床に何かを描き始めた。
「何をして…」
そのユハの言葉は目の前の光景によって遮られた。
なぜなら、イズの指が通った所に淡く赤い線がぼんやりと浮かんでいたからだ。
「これ?これは今魔法陣を描いているの。この魔導具は魔術の側面も持ってるから」
「いや、そっちじゃなくて…なんか赤い…何かが…」
「…あっこっち?魔力の方?」
「魔力…?」
「魔力は全ての生物が持つ『意思』のエネルギーよ」
「『意思』のエネルギー…」
「そう、例えば魔力に『ここに絵を描きたい』という意思を送るとその通りに指先で色んなとこに絵が描けるようになるの」
「なるほど…とても便利だな」
そのユハの呟きにイズは眉をひそめた。
「そう…とても便利よ。悪いことに使われなければ…今、上で起こっていることのようなね…」
「…それは、つまり魔力は他人への攻撃にも使えると…?」
「そうよ。というかこの世界のにおいてはその使われ方しかされていないわ。昔も今も…」
「…ごめん。軽率だった」
「いいのよ。というかやっと敬語やめてくれたのね」
そう言いながら魔法陣を描き終わったイズが立ち上がる。
「その…シケリさんから敬語をやめてほしい、とお願いされて…まだ慣れないけど…」
そう言うユハを見てイズは微笑む。
「いや…とても嬉しいわ。今まで敬語以外で話されたことないから…ありがと」
「…どういたしまして」
ユハは照れくさそうに微笑んだ。
「…じゃあ、行きましょうか」
そう言いながらイズはドアの前に立つ。
「そういえば、この部屋はどんな魔法を使うんだ?」
そうユハが質問したと同時に描かれた魔法陣が甲高い音と共に激しく光り出した。
「この魔導具の効果は『転送』!ドアを開けた瞬間、部屋のもの全てをここから森のどこかに転送するの!それで今回は場所を指定してる!さあユハ!刀は持った?」
「まさか、その場所って…!」
「この結界の『核』よ!その刀で結界をブチ壊して逃げるわよ!」
「シケリさんはそのことを知ってるのか!?」
「いや、知らないわ!でも大丈夫よ!」
「なんで!?」
「そういう存在だからよ!」
「説明になってないって!」
その言葉の後にドアがひとりでに開き、それと同時に部屋が赤い光で満たされた。
◇ ◇ ◇
「ぅゔ…」
右の胸が痛い。
痛すぎて上手く呼吸が出来ない。
…離れたとこで剣戟の音がする。
リジャロとリージンさんが戦ってるんだ。
早く参加しないと…
「ふーッ」
落ち着け、落ち着け私。
肺は傷ついてないハズ…多分。
魔力を…全身の魔力を回復に回せ…!
乱さないように…落ち着いて。
「うぁッ…ぁ」
来た…回復痛。
まあこんな傷だったらこれぐらいの痛さだよな…にしたって痛すぎ。
なんだよアイツ。
強すぎでしょ…私だって一応王国騎士だぞ?
しかも強さ的には私、真ん中より上のハズなのに。
あんなのがこの樹海に何年も棲んでいたのか…いやそんなこと誰が予想できるんだよ。
今回の任務は『黒髪の男の捕縛』と『武器の破壊』だって聞いたのに、蓋を開けてみれば謎のメイド。
しかも、複数人でいるときた。
…人生で一番意味わかんない任務だな、今回…
読んでくださりありがとうございます。第6話です。滑り込みで何とか2月中に投稿出来ました。…え?何してたかって?タコピーとか読んでました…




