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chinese citron  作者: たまご
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私には絶対に縁がないと思っていた、ひと夏の思い出。

まるで夏蜜柑のような…。








広瀬香奈、高校二年生。

恋愛経験ナシ。


明後日から始まる夏休みは家でこもりっきりになる予定だ。


みんなは彼氏とか、彼女とかと遊びに行くらしい。





俗にいうパッツンの髪型で窓から外を眺める。


みんなカップルで学校にやってくる…夏なんだからもう少し離れなさいよ…。




「香ー奈っ」


不意に後ろから抱きつかれた。

友人のちはるだ。


「夏休みなんか予定ある?」


「えっと…」


「ある訳無いじゃん、このパッツンが」


幼なじみの紗羅が香奈の席に接近しながら(ダジャレではない)言う。


「ムカ。

そりゃ彼氏とかいないから、デートの予定とかないけどさ。

でもそろそろ恋の予感!」


「妄想僻だな…フッ」


ちはるの幼なじみの志保が言った。





香奈はこの三人といつも一緒にいる。

そしてイビられる。



「もう!何でみんなして!

実はどこかの誰かから愛されてるかもじゃん。」


「あ〜、ないない。」


「香奈パッツンだし。

また変な髪型になったね(笑)」


「笑うな!

短くしてくださいって言ったらこうなったのー!」


「大学デビューが良いよ」





言いたい放題だ。

冗談で言われてるのは十分承知だ。

でも、ムカつく。




「うるさいうるさいうるさぁ〜い!」




そう叫んだときだった(そんなに大きな声でもないが)

三人が黙った。




不思議に思った香奈は顔を上げる。


目の前には一枚のプリントが差し出されていた。






「はい。」




クラス一、いや学年一、いやいや学校一かもしれない。

イケメンの種村大翔(たねむらひろと)だ。

バスケ部のエースで成績優秀。

同じクラスの美人、柊伊織(ひいらぎいおり)と噂がある。





正直恥ずかしかった。

学年の人気者にそんなところを見られるなんて…。


「…ありがとう」





大翔は微笑んで答えた。


「広瀬って面白いね。」





大翔が去ったあと、三人に囲まれた。


「種村君なんでこんなやつに…」


「プリント渡しに来ただけだって!」


「あれ、伊織さんと付き合ってんじゃないの?」





プリントを握りしめたまま彼を目で追った香奈には、その声は聞こえてなかった。


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