表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

74/74

終章

綺麗に撃ち抜かれた頭から広がる血溜まり――その中に転がる茜たちを見て、私は小さく溜息を吐いた。一緒に血も溢れ出る。


「アイゼンベルク様!」


焦り切ったヨハンに、私は指先で四箇所を示す。

意を察した彼は、的確に指示した箱を銃で撃ち抜いた。それと同時に、不快感が終息する。


「陛下、今すぐ治療を――あれ?」

「車から新しいパワーストーンを持って来なさい。無効化されたんだ」

「! 今すぐに!!」


四捨五入で六十歳になる年齢とは思えないほど俊敏に、ヨハンは車に戻っていく。


「茜――」


エルザが顔を歪めながら、茜を抱き起こしていた。己の身体が血に汚れることなど無関心に、大切そうに抱き起こす。


「すまない」

「いえ、私達が負けただけです」

「君はどうする?」

「どうするも何も、私は元々アイゼンベルク様の所有物ではないですか?」


私の顔に一瞥もくれないまま、エルザは茜の頬を撫でる。


――そういえば、エルザも『彼女』を二度失ったのか。


「持ってまいりました。今、治療致します」


ヨハンが魔法で私からナイフを抜き、傷口を塞いでいく。


「本当に――本当にご無事でなによりです……」

「悟は惜しかったね」


悟が刺した包丁は、私の心臓のすぐ横まで達していた。僅差で私が生き延びたのだ。

私の言葉に、ヨハンが顔を顰める。


「そんな、他人事のような感想はあんまりです……! どんなに私の心臓に悪かったことか!」

「すまない、ヨハン」


私の反応にヨハンは憤慨しているようだったが、すぐに気持ちを切り替える――流石、私の筆頭執事だ。


「外にお子様が二人倒れていますが、どうしますか?」

「倒れている――?」


何故? と思った瞬間には、私の神である部分が答えを導き出している。


「そうか……茜たちに内緒で学校を休んだんだね……」


どこまでこの光景を見ていたのだろう?


――そうか、見る前か。


「どうしましょうか?」

「……ん? 死んでいる?」

「え……?」

「彼女達は、心臓麻痺で死んでいるようだ」

「……はい?」


ヨハンが慌てて外に駆けて行く――やはり、亡くなっていたようだ。


またしても、何故? と思った瞬間に答えがわかる。


――神の介入だと?


あまりのことに、思わず立ち上がってしまう。

嫌な予感に周囲を確認する――私の予感はほぼ的中する。何故なら、私は神なのだから。


「――ない」


私の狼狽した声に、やっとエルザが私を見た。

しかし、茜を抱くエルザの周囲には、あるべき物が存在しない。


「茜の魂がない……!」

「すでに冥界に向かったのでは?」

「冥界にいる程度なら、捕捉できる。冥界にすらいないんだ!」


私の様子にヨハンとエルザが顔を見合わせるが、私は空を睨んだ。


「では、どこに? 魂ですら、神である陛下からは逃げられないのでは……」


ヨハンの言葉に、眠っていた深い怒りが目を覚ます。


「――神だ」


私が吐き捨てるように言った言葉に、ヨハンは困惑する。


「私たちの、創造主の仕業だ……!」


頭が弾けたように、感情が爆発する。


「何故っ、何故、今更干渉する!! 私の邪魔をする!? 今まで誰にも手助けしてこなかった癖に!!」


エルザから茜の亡骸を奪い、抱き抱える。

魂のない器は、こんなにも重く、抱きにくい。


「――返せ! 私の彼女を!! 何故奪うのか!? 出てこい!! 返せ!!」


血で滑って、茜の肉体が滑り落ちていく。


どれだけ空を睨んでも、空から何者も降りては来ない。


「あああああああああああああああああああああああああああ!!」


彼女のいない世界に、何の意味があるのだろうか?


その絶望に、私は声を上げることしか出来なかった。

暗く、重い内容の第2部を最後までお読み頂きありがとうございます。

これにて第2部はお終いです。


完結編である第3部は、かなりテイストが変わる予定です。


引き続き第3部も守山家の観測を続けて頂ければ幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ