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第2部 神の喪失  作者: 小島もりたか
2章 遺物
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一話 目的(24)

*** ティーノ視点 ***


日中に嫌なことがあり過ぎた。


このむしゃくしゃした気持ちをハナに聞いてもらおうと、夜を待ち望んでいたのに、窓からやって来たのは一陣の風だった。


――ごめん、今日は行けそうにない。


風がハナの声で囁く。


「はぁ……」


大きな溜息が出た。


――なんでこんな日に限って……。


とぼとぼと窓際まで行き、窓を閉める。


ハナにご馳走しようと思って内緒で取っておいたクッキーを、独り寂しくボリボリと食べる。


「……」


薄暗い部屋が揺らめいて見えた。


なんとなく、嫌な予感がした――けど、具体的に何が起こるかは分からない。ただ、漠然とした不安だけが胸の中で広がっていく。


「――っ」


窓に駆け寄り、もう一度窓を開ける。


トパーズのパワーストーンを宝物箱から取り出し、外に向かって祈った。


――ニョルズ、どうか頼む。ハナを連れてきてほしい……どうしても、会いたいんだ……頼む……!


しかし、石はうんともすんとも言わない――何も起きない。


何度も何度も祈りを繰り返し、疲れて眠くなった頃に諦めた。


ベッドに身体を投げ出すようにして寝転び、そのまま眠りに落ちた――。



「――ハナ?」


翌朝、目が覚めると、テーブルに置いておいたトパーズが消えていた。

代わりに、ハナが身につけていた水晶の『マガタマ』のペンダントと、手紙が一通置いてあった。


不安で胸が真っ黒になる。


震える手でマガタマと手紙を手に取り、中身を確認する。


『親愛なるティーノ

ごめんね、私は先に逝きます』


見覚えのある――けど、どこか違和感のある筆跡で書かれた手紙に、頭が真っ白になっていく。


自分の身体が、指先から砂のように崩れていく感覚がした。


「――ハナ?」


ぽろりと、何かが頬を伝う。


ハナに何が起きたのか、理解したくなかった。


「何が――なんで?」


ハナは以前、確かに死にたいと言っていた。

けど、最近はそんな素振りはまったくなかったはずだ――なのに、なんで??


屋敷の者に虐められていた?

両親に圧をかけられていた?

ここでの生活が合っていなかった?


――分からない。分からないよ、ハナ……。


茫然自失のまま、使用人も呼ばず、着替えもせずにお父様の部屋へ向かう。


「着替えもせずにどうした?」


自室で優雅に紅茶を飲んでいたお父様が、不思議そうに首を傾げた。


「――以前、私を助けてくれたハナという使用人は、どうなりましたか?」

「ハナ? ――あぁ、最後に会ったのは二週間ほど前だな。ハナがどうした?」

「ハナに何か起きませんでしたか……?」


私の質問にお父様は訝しげな顔をしたが、使用人がすぐに耳打ちをする。

そしてお父様は額に手を当てた……。


「そうか……」

「どうしたのですか?!」

「昨晩、二階にある部屋から落ちて死んだらしい」

「――嘘ではないですか?!」

「……いや、恐らく本当だ」

「嘘だ! なんで窓から落ちるんだよ!」


「落ち着きなさい」


お父様は僕の両肩を抑える。


「コンス、その取り乱し方はダメだ」

「無理だよ! 僕の大事な友達だったのに……なんで!!」


涙が溢れて止まらない。


大切な人――ずっと一緒にいたいと思った人がいなくなったんだ。

取り乱さないわけがないじゃないか……!


お父様は、僕が両手で叩いても、それを無言で受け止めた。


「――はぁっ、はぁっ」

「コンス、私たちのように人の上に立つ人間は、一人の人間に執着してはいけない」


冷たく言い放たれた言葉に、僕はお父様を睨む。


「――殺したんですか?」


お母様からの縁談の話を拒否した当日だった。

タイミング的に、僕の大切な人が分かっていて、見せしめにやったとしか思えなかった。


「――私は何もしていない」

「それなら、お母様ですか?」

「私は知らない……」


重苦しく、お父様が首を振る。


――酷い……僕の大切な――大好きな人を、見せしめのために殺してしまうなんて……狂ってる!


「お父様もお母様も狂ってる……! こんな世界、なくなればいい……!」

「コンス……」


僕を抱きしめようとした父親の腕を振り払う。


世界は、僕の大切な人を拒絶した。

頑張って精一杯生きていたのに、拒絶した。


許せない……。


こんな世界はいらない。


壊してしまった方がいい。


――壊そう。彼女の使った力で……。

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